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第三十四話 打算的な悪魔

堅結びからやっとのことで開放された。


「悪い、やっとほどけた」

「その分お話で来たのでいいですよ……印象変わってしまいました?」

「打算的な悪魔って感じ」


 自分が助かるためならどんな手段も使ってみせる打算性と悪魔性を兼ね備えた美人、イケメンでなければ許されないキャラ。

 だが俺はそれが普通だと思う。

 鮫島も同じような部類だが、自分にとって利益になる人と共に行動して不利益な人は切り捨てる。

 傍から見える薄情とも見えるこの行為。コミュニティなるものを形成するなら確実にやることだし誰一人として非難することは出来ないもの。


「幻滅しました?」


 よって土屋のこの質問にはキッパリと答えられる。


「いいや? むしろ現実的でいいと思う」


 どこぞのヒーローのように困っている人は全て助けるという偽善者レッテル確定よりは断然、親近感が湧く。


「ポジティブですね。中学では結構嫌がられたんですよ? 重いって」


 確かに重い。友達にする内容ではない。


「ただそれは真っ向からぶつかり保護者という権利者とやり合うからだ」

「他に方法があると?」

「まあ、土屋夏帆本人の協力は必要だけどな。よは動き方次第なんだよ。相手が人間ならやりようはいくらでもある」


 感情に訴えたり、一芝居打ったりとかな。

 一番まずいのは、土屋夏帆と連携が取れず孤立無援で戦う場合だ。

 そうなったら潔く「娘さんを僕にください」と言うしかない。


「頼んだ私が聞くのも変ですが、どうしてそこまで?」

「アピールだ。俺も有能なんだぞっていう」

「誰に対するアピールですか?」

「土屋しかいないだろ。鮫島と近藤には話してないんだから」

「……本当に私ですか?」


 そういう土屋の顔は訳知り顔。

 鮫島が話した? いやそれなら真っ先に近藤がアクションを起こすはず。

 よって鮫島からの情報はなし、ただのブラフ。


「ああ。そうだが?」

「そうですか。不束者ですが、末永くよろしくお願いします」


 柔らかく笑いながら言う土屋がだが場所とタイミングが死ぬほど悪い。

 追求せずに退いてくれたのはとても嬉しいんだけどね?


「二人とも結婚するの!? え!? なんで!?」


 一番恋愛にうるさいモンスターに聞かれてしまったからだ。


「違う。落ち着いて聞け」

「結婚は女性は十六、男性は十八にならないと出来ませんがそれでもしますか?」

「話を発展させなくていいから。これから友達としてよろしくって意味だよ」

「……そうは聞こえませんでしたが?」

「なにをどういう意味で発言しようと自由だろ。土屋もなんか言ってくれ」

「……」


 土屋? なんで照れてんの? そういう演技しなくていいから。今は特に!

 興味津々で熱が入っていく近藤と、どんどんと熱が冷めていく鮫島彩音。

 この二人を足しても対消滅しないのが面倒なところ。

 これなら数学の方が百億倍マシだ。


「結婚はしませんが少し相談を」

「どんな?」

「子供が出来たらどんな名前にすると」

「マジでやめて」


 そんな恍惚とした表情を浮かべながらお腹を撫でない。


「一発殴らせてください」

「なぜ!?」

「攻撃的衝動に目覚めました」

「あーさっき言ってたやつ」


 俺のいない所で勝手に俺にムカついて俺を殴らないで。

 そんな抵抗虚しく頬に一発ビンタを食らった。

 痛い。


「それで? 本当はどんな相談を?」

「今は言えません。解決したら報告します」

「鷹山だけずるいー。教えろー」

「無理だって。本人から言うなって言われてんだから」


 それに簡単に教えていい内容でもない。

 下手すれば土屋夏帆の将来に関わってくることだし。


「ま、つちやんがそういうならいいや。いつでも頼って!」

「無理は禁物ですよ」


 素晴らしきかな友情は。

 そんな友情からはぐれた俺は痛む頬を押さえながら結んでいた紐を返しに向かった。


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