表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/135

第三十三話 少なからず心を許している ※彩音視点

「鮫ちゃん? どうしたの?」

「いえ。彼が変なことをしないか監視しているだけです」


 私の目線の先には足に紐を結ぶ彼と夏帆の姿がある。

 さっきから少し歩いて結んでを繰り返して全然練習になっていない。


「平気でしょ。鷹山だし」

「彼だからです」

「中学でなにかあったん?」


 玲奈の言葉に私は鷹山来夢の過去を振り返った。

 直近で思い浮かぶのは地元のスーパーで女性と腕を組みながら歩いていたあの光景。

 仲がよさそうで、私とは一度も手を繋いでくれなかったのにあの人とは腕まで組んで歩いていた。


 しかし、それ以外にはこれといって問題行動は思い浮かばない。


「そういうわけじゃ……ないですけど」

「……嫉妬?」

「は?」


 玲奈の意味不明な言葉に思わず素の反応をしてしまった。


「だ、だって! そういう目してるもん! とられたって顔してるもん!」


 素で睨んだ玲奈が負けじと言い返してきた。


「そんなんじゃありません。彼だって男なわけでどさくさに紛れて、ということも有り得なくはありません」

「どんだけ信用ないのさ。信用してない割にはさ、傍にいることを許してるよね」

「どういう意味ですか?」


 私は別に彼に傍にいるようにお願いしたわけでも許可を出したわけでもない。

 すべて彼、鷹山来夢の意志故の行動だ。


「んーっとね。嘉川が急に一緒に帰ろうとか一緒に勉強しよーとか言って来たらどう?」

「警察を呼びます」

「でしょ? でもそれは鷹山は既にやってるんだよ」


 言われてみれば、彼とは一緒に帰りもしたり勉強もしたりした。

 私服だって鮫島高校内じゃ彼以外の男子生徒には見せていない。


「鮫ちゃんは少なからず、鷹山に心を許しているんだよ。恋愛マスターが言うんだから間違いない」


 実績ないマスターほど、胡散臭いものはないというのに。

 確かに心を許してしまっている節はある。

 玲奈にそう言われ、私の中でモヤッとした霧のようなものがかかった。


「苦しい?」

「違和感。不快感。攻撃的衝動に目覚めそうです」

「こっわ! 殴るなら鷹山にしてね?」


 あとで彼を殴ろう。そうしよう。


「でも鮫ちゃんにもそういう恋愛脳があってよかったぁ」

「暑いです。くっつかないでください」


 横からなだれ込むようにくっついてくる玲奈を剥がして聞いた。


「恋愛脳なんてありません。それで痛い目に遭いましたし、ただ周りの人間と合理的に効率的に付き合っているだけです」

「わたしと友達でいるのも?」

「それはまた違いますよ。友人と敵の違いです」

「鷹山が不憫に思えてきたよ」


それくらいの事を彼は過去に犯してしまったのだ。


「玲奈こそ、彼をどう思っているんですか? 玲奈の方こそ嫉妬ではないんですか?」

「わたし? うーん。悪くないと思うけどなんだろ、好きになってはいけないタイプだと思う。あとむっつり」

「好きになってはいけないタイプ? それは危険ということですか?」

「DVとかそういうことじゃないんだけど……言葉に出来ないけどわたしの恋愛センサーが危険信号をずっと出してるってことは確か」


 結局感覚論。


「でも浮気とかしなさそう」

「どうでしょう。ああいう真面目そうな人が案外隠してたりするんですよ。むっつりですし」

「むっつりだもんなー。でもまあ、優しすぎるから浮気に見えることはあるかも」

「浮気に見えるならそれはもう浮気では?」

「わたしそこのボーダー結構緩いかもしれない」


 だとしたら私はキツイのだろうか。

 けど浮気に見える行為というのは十分浮気に該当するわけでその行為が見受けられた瞬間に悪になる。

 が、他の可能性がまったくないわけではない。


「あ、こっち向いた」


 玲奈が手を振る向こう。彼と夏帆がこちら向いていた。

 夏帆は手を振るが彼は結んだ紐を未だにいじっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ