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第二十話 使えない情報

「あ、じゃあさ。心理ゲームして奥底の恋愛観を引き出そうよ」


 この恋愛脳女子。急になに言いやがる。


「模試が近いので私はパスで」

「俺も」

「は? 許すわけないじゃん。直感で答えられるものにするから」


 恋愛が関わると人が変わるな、近藤は。


「そこまでムキにならなくても良くないですか?」

「鮫ちゃんもつちやんも美人でおっぱい大きくておっぱい大きいんだからさ! 少しくらい勉強させてよ!」


 今情報が重複していたのは気のせいか。

 気のせいじゃないとしたら触れるわけにはいかない。胸のサイズなんて。


「……片手間になりますよ」


 それは絶対に無理だと思う。


「じゃあまず一問目! えーっと……」


 近藤がスマホでポチポチしている間に俺も模試対策の準備にとりかかった。

 

 準備が出来たと同時に、近藤が顔をあげた。


「はい。『白い花と赤い花で合計一〇〇本の花束を作ってください。赤と白、どっちが多いですか?」

「白の方が多い」

「私も白でしょうか」


 俺と土屋は即答。

 鮫島はというと。


「白は潔白や純情を意味することが多い。赤は逆に妖艶といった淫らな印象を与える。しかし、二つを同数いれた方が見栄えはいい……」

「鮫ちゃんこれ誰かが遊びで考えた奴だから、そんなマジにならなくていいから」

「なら赤の方が多いで」

「わたしは勿論! 赤! なんなら赤花だけでいいと思う」


 俺と土屋は白、鮫島と近藤は赤という結果に。


「白が多い人は、『尽くす傾向にある』って。あーぽい」

「そうでしょうか」

「うん。朝起きたら朝食作ってくれそう。鷹山はなんだかんだいいながら隣にいてくれそう」

「好印象のようでなにより」


 実際めっちゃ恥ずかしいけど。


「赤が多い人は『尽くされたい傾向にある』って。うん。わたし合ってる。尽くされたい、甘やかされたい、膝枕されながらよしよしされたい」

「願望が駄々漏れ」


 ただ男的に憧れる光景ではある。

 彼女や年上お姉さんに膝枕されながらよしよしされたいというのは理解できる。

 口に出すと絶対零度の視線が致死量注がれるから口には出さないけど。


「鮫島さんも同じ願望が?」

「一緒にしないでください。色合いを想像した時の直感なので深い意味はありません」


 こんなクールビューティーな鮫島彩音でも心の奥底ではよしよしされながら、ばぶばぶしたいって思っているのか。

 ギャップ萌えがすぎる。


「それじゃあ次! 砂漠って聞いて思い浮かぶものは? 次の中から選んでね」


 オアシス、ラクダ、月、ストールなどの衣服


「ラクダ」


 俺は即答。

 その間にも、参考書の内容をノートに写していく。


「私は月でしょうか」

「私もですね」

「月? 砂漠に? イメージ全然ない」


 俺も近藤と同じ意見。

 ただ考えてみれば確かに月は綺麗だろう。


「砂漠は排気ガスなどがない地域ですから、夜の星々は綺麗なんですよ?」

「少なくとも日本の一番星が綺麗に見れる場所よりは綺麗でしょう」

「へー行ってみたい! ロマンチック~」

「ただし気温はマイナスに行くところがほとんどだけどな」

「やっぱ無理! えー砂漠と言えばストールでしょ。可愛くない?」

「ファッションは専門外なので」

「私もですね」

「俺も」

「頭でっかち共が」


 近藤がスマホを操作して答えを表示したようで、それぞれの特徴を言ってくれた。


「まずラクダって答えた鷹山! 恋愛において労力を厭わないって」

「まずなにに対してのテストだよ」

「好きな人への対応ってある」

「確かに、貴方はそのきらいがありますよね」

「先ほどの質問といい、本当に尽くすタイプなんですね。そういう男性は素敵だと思います」

「どうも」


 どんなに素敵な男性でも疑いを拭いきれなかったら最低になり下がるんだよ。土屋。


「次に月を選んだ二人、恋愛において奥手でぷ、ぷらとにっく? な関係を求めるって」

「まあ、そんなものじゃないでしょうか」

「そうですね。いきなりというのもちょっとという感じですね」


 プラトニックの意味が分かっている二人は頷き、意味が分かっていない近藤は頭にはてなが浮かんでいる。


「プラトニックってなに」

「清廉潔白だ。つまり、肉体関係を持たないってこと」

「初心~」


 意味が分かった途端煽るやん?

 プラトニック・ラブなんてもはや死語になりつつある現代でこの二人は希少だぞ?

 美少女の頂点に立つような容姿の二人が健全な恋愛を望んでいるなんて。


「そういう近藤はどうなんだよ」


 顔を見ずに促せば鼻高々な声が聞こえてきた。


「恋愛を真剣に考えてるって! いやーやっぱ分かっちゃうんだなー!」


 うるせぇ。


「えー恋愛を真剣に考え、恋愛を「自分自身を高めるもの」と捉える、同程度のものを相手にも求める。だそうです」

「相手にもですか……玲奈ほどの恋愛観を持っている人がいるとは思えませんが」


 それに関しては俺もまったくの同意。

 同性にしろ異性にしろ、俺達三人は既に違うわけだし。


「婚活で残り物にならないようにな」

「おうおう! どういうことだぁ! おめぇさんよ!」


 顔に煽りが出ないように顔を上げなかったのに。

 なだれ込まれた俺の肩には控えめながら柔らかい感触が。


「恋愛を真面目に考えない奴は馬鹿だ。馬鹿ばっかだぁー!」

「そういうとこだぞ」


 恋愛を真面目に考えている奴の方が今時珍しいというのに。

 ま、それだけ一つに熱中できるんだから俺はいいと思う。


「鮫島? 勉強はいいのか?」

「はい? あ、はい。やりますとも」


 超シングルタスク人間が、心理テストとかいう初体験かつ興味深いことをしながら勉強なんて出来るわけがない。

 俺は妹がいるから度々出されたりするから耐性はあるし、大抵の答え予測は出来る。

 なにより俺は鮫島と真逆のマルチタスクだし。

 やるとかいいながら、土屋が持つスマホにお熱のよう。


 こんな超シングルタスクで勉強か息抜きかのどちらかしか出来ない人に俺は一度たりとも勝ててないという事実。


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