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第十六話 上履き消失事件

次の日、学校に行くと上履きが消失していた。

 持ち帰った記憶はなし、下駄箱を間違えたのかとも思ったが一段上は鮫島、一段下は土屋の名前が。間違えではなさそう。


「職員室行くかぁ」


 靴下のまま硬い廊下を歩き、職員室まで来た。


「失礼します。一年一組の鷹山来夢です。上履きが消えたのでスリッパを借りに来ました」


 職員室に入って用件を言うと、誰もいない椅子が引かれた。


「鷹山くんもですかぁ?」


 と思ったら机の陰から雨宮先生が出てきた。


「も?」

「鮫島さんもさっきスリッパを借りに来たんですよ。持って帰ってないとも言ってましたね」

「そうですか……」


 なぜ俺と鮫島の上履きだけ無くなったのか、思い当たる節はある。

 だが証拠がないし雨宮先生には後々動いてもらおう。


 教室に行くと、張り付いた空気が支配していた。


「やっと来た! あの喧嘩止めて」


 教室に入るなり近藤が俺の元へと走って来た。

 指さす先には鮫島と長谷川の姿が。

 二人の間には火花が散っており一触即発の状態であった。


「二人とも落ち着いて」


 嘉川がいるおかげか、長谷川は睨みだけだが、もしいなかったら殴り合いにまで発展しそうだった。

 クラスのキングも、絶対零度の孤高の女王を止めるには至らなかったようだ。


「嘉川。なにがあった」


 一番冷静で状況を把握している嘉川に尋ねると睨み合っていた鮫島が説明してくれた。


「私の上履きが消えていたんです。なのでなにか知りませんかと尋ねただけです」

「はぁああ!? あんた最初っからウチを疑ってきたじゃん!」


 吠えるように鮫島を威嚇する長谷川だが当の鮫島は気にした様子もなく真顔。

 長谷川からすれば、それが余計に気に食わないのだろう。


「鮫島。長谷川がやったっていう証拠はあるのか?」

「物的証拠はありません。しかし、香水の件を注意した次の日に私の上履きがなくなりました。無関係とするのは納得がいきません」


 言い分は分かる。俺も長谷川グループの仕業だと思ってはいるが、物的証拠がなければ追い詰めることは出来ない。


「長谷川」


 鮫島に向けた敵意そのまま俺の方を向く長谷川。

 怖い。


「疑いを晴らすためにも探すのを手伝ってくれないか?」

「は? 絶対に嫌だ」

「理由を聞いても?」

「こんな奴の手伝いなんてしたくない」

「でもそれじゃあ疑いは晴れないぞ?」

「はっ。疑われたままでいいし。やってないんだから」


 それに関してかなり同意出来る。

 やっていないのなら堂々としていればいいのだ。

 鮫島と別れて俺が学んだことだ。


「そうか。本田と藤山はどうだ。学校内にあるだろうから人手が欲しい」

「ごめん。バイトの面接」

「弟迎えにいかなきゃだからごめん」


 二人とも無理と。

 ま、想定内。


「無理言って悪い」


 長谷川を嘉川に任せて俺は無理やり鮫島を近藤と土屋のところに連れ帰った。


「お疲れ」

「あの喧嘩を収集させるなんて流石クラス委員ですね」

「その分疲労はえげつないけどな」


 クラスの頂点に立つ者同士の喧嘩である。

 他生徒はおろか、騒音スピーカーの伊波ですら黙って見ていることしか出来ない勢い。

 それを仲裁するのは普通に疲れる。


「相変わらず意地っ張りだよな」

「心外です。自分を信じているだけです」

「それを意地っ張りって言うんだよ」

「私には私のやり方があります。口出しは無用です」


 ため息ついでに長谷川をチラ見すれば不機嫌そうに爪をいじいじ。

 その爪には見事なまでにデコレーションされていた。

 このクラスメイトで三年間。先が思いやられすぎて既にボロボロなんですが。


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