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第百二十六話 仲直りは出来た。なら第二段階だ。

「お兄。気持ち悪いよ」

「一年かかった誤解が解けたんだ。にやけもするだろ」

「ふーん。じゃ、彩姉とまた恋人同士なの?」

「いや……」


 正直な所、そんな空気ではなかった。

 鮫島は自分のことを責めていたしあのあと近藤玲奈という邪魔が入ったしで話が中断されたってのもある。


「え、してないの? 家に連れ込んで二人キリだったのに? え? チンコついてんの? そんなヘタレが兄とか天上の青空から地上を仰ぎ見る皇女の身としては絶縁していんですけど」

「そこ一括りなんだ。俺は桃に絶縁されてもいいぞ。夏休み冬休みの宿題とかテスト前の勉強見てやらないから」

「皇女の名において命ずる! これからも我の教鞭を取ることを許可する」

「……」

「みすてないでぇ!」


 プライドのない皇女様だこと。

 だが桃のいうことも一理ある。俺と鮫島は元恋人同士で誤解があったから別れたわけだ。

 ならば、誤解が解けた後再びくっついてもおかしくはない。


 がしかし、お互いにそう思っているかは謎である。

 俺は勿論出来ることなら恋人同士に戻りたい。

 いい加減「貴方」とか「彼」と呼ばれるのはやめにしたいしな。


 仲直りは出来た。なら第二段階だ。

 マイナスからプラスマイナスゼロになっただけ。いわばスタートライン。

 そこに立つまでに一年……恋人に戻るまでに何年かかるのだろうか。




「おはようございます」


 次の日、鮫島はいつも通りの鉄面皮で挨拶をしてきた。

 十月十七日の模試まで時間がないためか単語帳を持って電車に乗っていた。


「おはよう」


 流石に電車内で復縁の話題を出すわけにもいかず黙って揺られることにした。

 左手でつり革に掴まり右手にはスマホで英単語復習。

 前から体重が加わり俺の重心は後ろに傾いた。


「すいません。後ろから押されました」

「おう」


 俺のバックを挟んで鮫島と急接近。

 鮫島は気にした様子もなく単語帳に視線を落とした。

 電車に乗っていれば珍しくもないことで俺も特に気にしていなかった。


「……なに?」

「なんですか?」

「顔凝視してただろ」

「は? してませんが? 仲直りしたからって自意識過剰なんじゃないですか?」

「……そうかよ」


 お互いに手元に視線を移すがやはり視線は感じる。

 視線を固定して見えるギリギリに鮫島の顔がある。

 俺が視線を動かせばなにごとも無かったかのように鮫島は単語帳を捲っている。

 本当に自意識過剰になっていただけなのかとスマホに視線を落とした。


 朝の通学、通勤ラッシュの時間帯。

 学校までの駅で扉が開けば当然人が入ってくる。


「ち、近っ!」

「前からこんなだろ」

「そ、そういう問題じゃ」

「暴れるなよ」


 本当に密着レベルだがまたしてもバック。

 どれだけ俺と鮫島の密着を妨害すれば気が済むんだ。


「すいません。足元が悪くて自立出来てなくて」

「どおりで近いわけだ」


 体重を俺に預けているため俺と鮫島の距離は超近い。

 お互いに顔を合わせれば鮫島の綺麗な顔が真ん前に。

 少し前に出れば鼻同士がくっつく距離だ。


「……」

「なんで顔赤いんだよ。止めてくれ」

「こ、これだけ近ければ仕方ないと思います」


 今までもこういったことはあったが相変わらずの鉄面皮で俺だけがドキドキしている状況だったのに。

 今じゃ鮫島も挙動不審。ま、それは昨日から挙動不審ではあったけど。


「二日前まで文化祭だったけど勉強は順調ですか?」

「ああ、余裕だ。といっても本当になにかしてたわけじゃないけど」

「それはあれですか? 「俺勉強してないけど高得点」みたいな」

「文化祭準備期間でサボってるといっても模試勉強してたわけじゃないから。なにも出来ないだろ」


 挙動不審さを誤魔化すように鮫島は模試の話を振ってきた。


「前は俺と鮫島は同着だったわけだ。今回は勝つぞ」

「私だって前は心かき乱されただけなので」


 前の模試は八月の終盤。

 その頃に鮫島の心をかき乱すなにかがあったのだろう。

 俺にはマッタクワカラナイ。


「負けませんよ」

「俺だって」


あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


いやー毎日投稿してると「よいお年を」と言った次の日にもう「あけまして」ですからね。

感慨もないもないですよ。


宣言通り、今年もバリバリ執筆していきますので、応援のほどよろしくお願いします

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