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第十一話 女子会 ※彩音視点

「悪い。お手洗い借りてもいいか?」

「階段降りて右手側の扉ね。分かんなかったら店にいけばあるよー」

「ありがとう」


 彼が出て行って夏帆と玲奈の視線が一斉にこちらへ向いた。


「んでさ、本題に入ろうか」


 玲奈が咳払いをして目を細めた。


「本題とは」

「それはね。ずばり、鷹山来夢との関係についてさ」


 やはりというか、玲奈が持ってくる話題全て恋愛絡みのこと。

 けれどこれは正直読めていた。


「なんにもありません。ただ中学が同じで模試で上位というだけです」

「上位と言いますが、一位と二位ですよ? むしろ関わりがないという方がおかしくないですか?」


 確かに夏帆のいう通り、関わりがなければおかしい。

 今この場で過去、鷹山来夢と数か月ながら恋人関係だったこと、そしてそれは彼の浮気で終わりを迎えたこと。全て話せば二人は追及してこないと思う。

 だけれどあれは私と彼の問題であって言いふらしていい内容ではない。


「本当にただ友人です。それ以上はありません」

「なーんだ。超ハイスペックカップルの誕生はまだ先かぁ」

「この先、未来永劫、私と彼が結ばれることなんてありません。絶対に」

「分かんないよー?」


 身を乗り出しどや顔で玲奈は言った。


「一番身近な人の魅力に気が付いてキュンキュン来ちゃうかもよ? それに恋愛に絶対はないからね!」

「雨の日に不良が捨て猫拾ってるのを見て好きになるあの現象ですよね」

「捨て猫不良現象とでも名づけよう」

「そういうの、なんていうか知ってますか? バーナム効果っていうんですよ?」


 私の言葉に首を傾げる二人。


「簡単に言えば、私だけの話ではないということです。彼だって男なんですから、より魅力的な方にいくと思います。明るさで言えば、玲奈の方が私より上ですし、体つきなら夏帆が三人の中では一番上です」


 彼は私以上になにを考えているのか分からない男。

 ポーカーフェイスに異常なまでに長け、初対面の相手でもある程度なら会話を続けられる。


「彼の性癖などは一切本当に知りませんが、私が彼を好きになることはありません」


 思い出すと腹が立ってきた。

 話題を変えようと私は夏帆に聞いた。


「夏帆はどうなんですか? 今まで告白された数では一番ではないですか?」

「ええ、軽く十人は超えると思います」

「おーやっぱしその豊満バディで悩殺されちゃうの?」

「どうなんでしょう。本心を聞いたことはないので分かりかねます」

「ということは誰とも付き合ったことはないと?」

「はい。未だ生娘です」


 夏帆はそう言って顔を赤らめた。

 確かに大声で言えることではない。

 そして玲奈は意味が分からないのか照れている夏帆に怪訝な目線を送っている。


「なぜ付き合わなかったんですか? 十人いて全員ダメというのは厳しすぎな気もしますが」

「鮫島さんも最初に言ったじゃないですか。「好意なき人からの可愛いという言葉は不快」だと」


 確かに言った。

 それなら理解も共感も出来る。


「えー勿体ない。付き合ってみれば案外気が合うかもしれないのに」

「近藤さんは声かけてきた人全員と付き合うと?」

「うん。まずはお試しって感じで」

「危ない人だったらどうするんですか」

「それも勉強ってことで」

「深くは考えてないんですね」


 玲奈が肩をビクつかせたのとほぼ同時。

 廊下からガンッとなにかが落ちるような音と、彼の悲痛なうめき声が聞こえてきた。


「どったの」

「脛打った……」


 彼が戻って来たことで夏帆と玲奈による尋問は終わった。


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