表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/135

第百十八話 仕事≒文化祭デート

「私、そろそろ演劇の準備をしなきゃなので失礼します」

「おう。実行委員の仕事があるから見に行けなくてごめんな」

「私と仕事、どっちが大事なんですか?」

「やらなきゃいけない仕事。やらなくてもいいならお前」

「ずるいです」


 俺からすれば急にそういうこと言う方がずるいと思うけどな。

 体育館前で土屋と別れた。


「仕事サボってデートとは、結構な御身分ですね」


 振り返れば腕を組み眉間にしわを寄せる鮫島が立っていた。


「お疲れ。見回りの仕事はちゃんとやってました」

「……」

「ん? どうかしたか?」


 俺の顔をじっと見て口を小さくぱくぱく。

 なにか言いたいのだろうか。

 いや、鮫島彩音なら言いたい事があるならオブラート投げ捨ててぶつけてくる。


「いえ。貴方が仕事しているのかチェックします。貴方がサボれば私の評価にまで関わります」

「信用ないなぁ」

「行きますよ」


 土屋と別れた直後に違う女子と一緒に文化祭回るとか本当に浮気男になった気分。

 隣に美少女がいるなんてそりゃ浮気もしますわ。


「仕事って言っても大抵は誰かが先に居たりとかで出番がないんだよ」


 実行委員は各学年の代表と生徒会メンバー。

 総勢で十人以上いて、常に五人は警備に回っている状態。

 校舎と体育館、広い校庭をカバーするには少ないかもしれないが、全員の手が塞がるほど治安も悪くない。先生方だっているわけだし。


「貴方が『夏帆と』どこを回ったかは知りませんが、浮ついた気持ちで回ったところで問題など見つけられないでしょう」

「なんだろう。棘がぶっ刺さってる気がする」


 チクチク言葉なんて生易しいもんじゃない。

 槍だ。槍で思いっきり突かれている。痛い。


「なら俺的には鮫島と回ってると考えるとテンション上がりっぱなしなんだけど」

「私は貴方の監視者です。楽しく文化祭を回る仲でもましてや恋人でもありません」

「顔赤い」

「は? 今日は暑いだけですが? それに人混みもありますし」


 今日は寒いと思うが。

 それでお湯の供給が間に合わなかったわけだし。


「仕事もいいけど、息抜きしないとぶっ倒れるぞ。特に一つの問題が大きい文化祭では」

「とか言って、貴方がサボりたいだけですよね?」

「一回目の文化祭くらい楽しみたいだろ。校庭行こうぜ!」


 靴を履き替えて校庭へ。

 砂地の校庭では模擬店が円状に並びまるで夏祭りのような賑わいを見せている。

 各運動場では試合形式で戦ったり、打ち方や構え方などを教えたりする。

 これも強豪校である鮫島高校ならではの出し物だろう。


「外の見回りはした?」

「いえ、私はずっと中にいました」

「なら丁度いいか」


 といっても目に見えて問題が起こっているようには見えない。


「やあ。実行委員二人でデートかい?」

「セクハラで訴えますよ」


 神崎先輩の軽いジョークにマジ殴りで返す鮫島さん流石。訴えられると俺と一緒のところを見られたくないみたいだからやめて欲しい。そんなやましい関係でもないだろうに。


「でも意外だね。二人で回るなんて。効率を考えるなら別々で回った方がいいのにね」

「彼はさっき女子生徒と回っていたんですよ。仕事していたと思います?」

「いや、きっと鼻の下伸ばして人気のないところに連れ込もうとしていたに違いないよ。鮫島も注意しないと連れ込まれるかもよ? 特に、一回の西階段辺りは倉庫で人気がないから注意だ」

「ありがとうございます」

「二人して言いたい放題だな」

「違うんですか?」「違ったかい?」

「大外れだ馬鹿野郎共」


 どこの誰が冤罪晴れそうなギリギリで犯罪をやるってんだよ。

 解決がもうすぐなら誰だって大人しくするだろうよ。


「ま、楽しめてるなら流石だね。一年生は忙しいだろう?」

「そうですかね。そこまで問題という問題も今のところないですし、体育祭の方が大変でしたね」

「体育祭はサボれませんでしたもんね」

「その通り」

「このまま平和に終わればいいと僕も思うよ。ほら、先輩からの贈り物だよ」


 そういって六個入りのたこ焼きを差し出した。


「お代は結構だよ。頑張ってる後輩へのプレゼントだからね」

「ありがとうございます」

「あの、竹串が一本しかないんですが」

「ああ! すまない。今切らしていてね~その一本が最後なんだ。今他の人が取りに行ってるがいつ戻ってくるか分からないんだ」


 神崎先輩……図ったな。

 ぴらぴらと竹串が入っていたであろう袋を見せつけてくる辺り悪質だ。

 嘘はなく、真実で全て構成された罠なんて動きづらいことこの上ない。


「冷めないうちに食べてくれ」


 にっこにこな神崎先輩。


「鮫島。怒るのは分かるけど抑えて」


 実行委員同士が問題を起こすとか本末転倒すぎるから。

 怒り心頭な鮫島を前に「関節キスだね」なんて言う気になれず、純粋な悪意を前に俺達はたこ焼きを食べた。


連続進捗報告也。


現在初日連続投稿分の四話まで書き上げ完了。一人目のヒロインが出てきたところですね。

前前前回? くらいに言ったように少し不思議なラブコメなので初めてなんですが手が自然と動きますね。

楽しいですが、あまりダラダラと長く書かないように一ヒロインあたり五万字くらいで抑えられたらなと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ