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第百十四話 なんのための顔面偏差値だ

 鮫島も完全復帰したある日。

 時刻は交代の時間で次は演劇の場だった。


「ほい、んじゃ宅配よろしく!」


 カフェ班からそこそこの出来栄えのパンケーキを持たされ体育館へ。


「よし、今日もあるぞ」


 背景班と演者班に分けていく。

 もちろん嘉川達には長谷川のパンケーキを。


「やっべ、飲み物ねぇや。買ってくる!」「あ、オレもねぇや」


 伊波が大声で言えば、リア充のほとんどがついていった。

 残されたのはキング、嘉川幸樹。


「なあ、一つ聞いていいか?」


 せっかくだ。嘉川幸樹が一人になる機会なんてないし長谷川未来のことをどう思っているのか聞いておこう。


「なんだよ。改まって」

「長谷川のことどう思ってんだ」


 俺が単刀直入に聞くと明らかに嫌そうな顔をした。

 嫌いなのだろうか、ただ相手がすり寄ってくるから仕方なくという関係だったのだろか。


「正直可愛いと思うよ。というより可愛くしてくれてる」

「言っておくと聞いてこいと言われたわけじゃない。ただの興味。こうして毎日のように料理の練習して、せっかくの夏休みを合宿のマネージャーやって潰したってことは相当アピールはあるだろ」

「あるよ。陸上馬鹿のオレでも分かるくらいに」

「ということは?」

「けど、イジメをするような彼女は遠慮したいかな」


 そう言って嘉川は控えめに笑った。


 やっぱりというか、知っていたか。

 そりゃそうか。毎日のように藤堂に飲み物買わせて自分が買ったかのように装って渡すんだ。

 そして嘉川がまともに動けなかった理由も想像がつく。


「オレは人付き合いが上手いとは思ってないから未来を止められる自信がなかったんだ」

「むしろ暴走させたかもな」

「だから動けなかったんだ。上履きが無くなった時あったろ? その時にはもう知ってた」

「ならなんで俺に相談をしなかった」

「イジメを監督する立場でもないクラスメイトに相談できるかよ」


 確かに、イジメを対処するのは教師の仕事であり余程の人望と実績がない限り同級生のクラスメイトに相談はしないだろう。


「なら雨宮先生に言わなかったのは」

「……知らなかったとはいえ片棒を担いだようなもんだったから」


 インターハイ出場取り消しを恐れたってな具合か。

 当然と言えば当然だが、不快感があるのは確かだ。


「長谷川を止めるか先生に言えば藤堂はあんな辛い思いをしなくて済んだかもな」

 

 もしあの場に近藤が居なかったら文化祭の場に藤堂はいなかっただろう。

 下手すれば……やめよう。


「言い訳も立たないな」

「はぁ……カッコいい顔面が泣いてるぜ。なんのための顔面偏差値だ」


 使わないなら寄越せ。

 俺なら存分に使えるぞ。

 嘉川ほどの顔面偏差値があれば無理くり関係性を繋がずともその場に入っていける。

 その効率と便利さは段違いだ。


「文化祭の雰囲気に乗じて告白されたらどうするつもりだ」

「勿論断る」

「了承する可能性は」

「未来が自分のしたことに気が付いて藤堂に自主的に謝ったらかな」

「一生気が付かないぞあいつ」


 本田と藤山は謝罪をしたが長谷川未来だけは藤堂への謝罪はない。

 仮に長谷川が謝るとしたらそれは誰かに謝るように言われたからだ。自分から行くなら最初からやらないと思うしな。


「なら一生断り続ける。今回大事にならなかったのは鷹山がいたからだしな。いなかったらこの演劇はなかったと思うし」

「ま、そうかもな。その辺のやりとりはご自由にだが、こっちに飛び火したらボコボコにするからな。下手すれば来年のインターハイは危ういぞ」


 それどころか、長谷川の暴走具合によっては学生人生自体が危うくなる。

 今年度のインターハイ優勝を果たした嘉川からすれば痛手も痛手。恨んでも恨みきれないだろう。


「藤堂には本当に申し訳なく思ってる。あの時助けたばかりに」

「その後見て見ぬふりをしてたわけだからな。最低男と罵られる覚悟はした方がいいぞ」


 藤堂は優しいから絶対そんなこと言わないだろうけど。


「ははっ。そうだな。覚悟しとく。でも、オレが未来を恋人にすることは今年度はすくなくともないんじゃないかな」

「そうか。藤堂にいい土産が出来そうだ」


 藤堂だけ辛い思いをして、辛い思いをさせた側が幸せになるなんて現実がよくあることだが、それをよくあることとして見過ごすかは別問題。

 俺は絶対に見過ごさない。

 今回だって、もし知らないのであればバラしてやろうと思ったからだ。

 因果応報、いつかその身に返ってくると教えてやりたかった。


「逆に、そっちの恋は応援してるぞ」

「なんの話だ」

「とぼけんなよ。鮫島のためにこうして問題に取り掛かったりヘイト分散してるわけだろ?」

「そうだと言ったら?」

「応援する。頑張れ」


 なんだこのイケメン。

 近くにいる女だからと悪を許したりせず反省させる、自分のことはしっかり出来て他人の恋を応援出来る。

 その上イケメンで性格もヨシ。

 天は二物を与えずという言葉はどこに? 鮫島然り嘉川然り、三物四物与えすぎじゃないですかね。

 俺にももう一つなにか欲しい。出来れば人付き合いが良好になるような。

 初詣の時にはそうやってお願いしよう。


少しだけお知らせ。

次回作が決まりぼちぼち書いてはいるんですが、「なにが面白いのか分からない」という典型的なスランプで十話ほどで手が止まっております。

今まで度々こういうことはありましたがそれでも書き続けていればいつの間にか解消していました。

ですが、今回は出だしから壁にぶち当たっているので今作が完結してすぐには新作は始められないかなと思います。


まだ十話で二万字も書いてないくらいなので、書き直しがいくらでも聞くんですよね。

今は異世界ものを書いていますが、「ダメだこりゃ」となったら現代でちょっと不思議なラブコメをしようかなと考えています。

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