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第百一話 白紙に戻す

民泊から帰ってから、俺達四人はめっきり会わなくなった。

 というのも、別に喧嘩したとか、あの後気まずくなってとかではない。

 最終日にみっちり近藤に根掘り葉掘り聞かれたいしな。


 全部話した。鮫島の目線が痛いとか知ったことではない。

 あれだけ情報出して白を切るのは無理があると判断してのこと。


 会わなくなったのは八月下旬に模試が控えているためである。

 土屋には念押しをしたし今度は邪魔が入らない真剣勝負の場。


「今度は邪魔なしだな」

「そうですね」


 既に集中モードなのか鮫島の口数は少ない。

 八月の最初は遊んだものの帰って来てからは十分に集中出来た。

 負ける気はサラサラない。


「受験生は用紙を裏返して試験を初めてください」


 そのアナウンスで俺と鮫島の戦いが始まった。




「んで、模試終わって来たわけだ」


 模試が終わってすぐ、近藤から「たすけて」という見覚えのある文。

 呼び出されたのは土屋邸。

 鮫島は自己採点がしたいと先に帰ってしまった。


「夏休みの課題、最後までやらずに放置したのはどこの誰だ」

「わたしだ!」

「俺帰るわ」

「自己採点してていいから付き合って!」

「それが終わったらお菓子食べましょうね」


 土屋は近藤に甘すぎる。

 俺は模試の自己採点、近藤と土屋は近藤の課題をしばらく片付けていた。


「トイレ」


 唸っていた近藤が立ち上がり部屋から出て行った。

 残されたのは俺と土屋。


「……あの事、本当だったんですね」

「ああ」

「私が最初に睨んだ通りじゃないですか」

「初対面に近い人間に「私は浮気した過去があります」って言うとかドン引きだろ」


 イケメンであっても汚名は免れない。


「幻滅した?」

「そうですね」


 当然の反応。

 だが返事のテンションからして楽しそう。


「私はとても幻滅しました。一度は好きになった人がまさか友人と昔に恋人同士で有責でその上、未練たらたらとかカッコ悪いです。あーあ、幻滅してしまいました」


 芝居がかった言葉。

 どんなに嘘を見抜くのが下手でも分かってしまうだろう。


「恋人候補の件ですけど、白紙にさせてください」

「結構傷つく。でも……ありがとう」

「……はい」


 こういう時に相手がなにを言いたいのか分かってしまうのは考え物だ。

 俺が後々困らないように繋がりを一度切った土屋。

 友達の距離が分からないと最初言っていたのに、いつの間にか距離の取り方が上手くなっていた。


「後悔した?」

「いえ、後悔はしていませんよ? 鷹山さんを好きになったのも、恋人候補を取り消したことも」

「そうか」

「ハイエナになろうかなと思いまして」

「ハイエナ」

「はい。恋愛に置いてハイエナというのはとても嫌われます。ですが、それも立派な作戦、ひいては生き方だと思っています。鮫島さんに振られたときはご一報を。癒して差し上げますよ」

「二度と人間には戻れなさそうだな」


 本物のハイエナに襲われた時のようにな。

 土屋の不気味な笑みにおびえていると廊下からドタドタと騒がしい足音が。


「恋愛の波動が!」

「さ、近藤さん? 続きをしますよ? 残りのページ全て終わるまでお菓子は抜きです」

「あ、あれ? つちやん。怒ってる?」

「いいえ? 怒ってませんよ?」

「鷹山ぁ。つちやんの笑顔めっちゃ怖い」


 俺に聞くな答えたくない。

 ま、野暮な言葉だったとは思う。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 土屋の恋人候補は白紙ですか……残念です。 私の鮫島への印象は最底どころかマイナスです。投稿数百話を超えてますが、鮫島はひたすらに鷹山を罵倒して、好意の一欠片すら抱けませんでした。鮫島…
2021/12/07 06:36 茄子味噌おやき
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