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第3話 ホットチョコレートミルク②

 少女を連れて一階のリビングに下りたころ、ちょうど母からのメッセージが届いていた。


『ゆーくんと美容院に行ってくるねっ♪

 パパはお仕事だって(*^^*)

 お昼ご飯はテキトーに食べといてっ!』


 カスタマイズしたキーボードを引き出し、『了解』と一言打ち込む。

 ふと思い立って『もし買い物に行くならアーモンドミルクも買ってほしいな』とお願いした。

 するとすぐに母から、かわいい女の子が手でOKを示しているスタンプが送られてきた。

 本当なら自分で買い物に行った方がいいのだろうが、外出は正直苦手なのだ。申し訳ないと思いつつ、大抵こうして母に頼んでいる。

 溌剌とした母と、それによく付き合っている弟の詩築(しづき)に、たまにしか家に帰ってこない父。私の出不精は誰に似たのだろうか……。


「なにしてるの?」

「うわぁっ」


 唐突に話しかけられて、間抜けな悲鳴をあげてしまった。


「ボクをわざわざ連れてきてほっとくなんてひどいと思うな」


 少女が眉根を寄せて、端正な顔を私に近づける。


「ごめんごめん」

「さっきも触ってたけどさ、これってなに?」


 画面を覗き込もうとしてくるが咄嗟に隠す。個人情報だしミセラレナイヨ。


「魔王城にはないんですね。これはスマホといって、通話やメッセージで連絡取り合える機能とかゲームとかが搭載されたとっても便利な機械です」

「へぇ〜」


 少女らスマホをじろじろと眺め回す。まだよくわかってなさそうだ。


「……気になってたんですけど、やっぱりあなたの住んでる所は魔王城なんですか?」

「もちろんだよ、信じてないみたいだけどボクは魔王だからね」

「ですよねー。じゃあ、魔法とか使えたり?」

「使えるよ! 例えば、そのすまほとやらがなくても、脳と脳を通じて遠く離れてても会話できたりするんだ」


 テレパシーといったところだろうか。なら、この少女がテレポートする技術もありそうだ。


「まあまあ、ボクのことはいいから。なんでキミはここに連れてきたの?」


 おっと、随分目的から脱線していた。


「そうでしたね。では、見ててください──」



 チンッ、と小気味良い音がした。

 冷たい牛乳を、文明の利器電子レンジに入れて温めること約三十秒。私は、陶器のコップをレンジの中から取り出して、少女に触らせる。


「……なに? んー……あったかい!」

「あっという間にホットミルクの完成です」


 魔法のごとくして完成したホットミルクに驚く少女。

 それから私は、用意していたチョコレートをマジシャンのように見せる。ホットミルクに砕いたチョコレートを投入!


「これはなにを……?」

「冷めないうちに混ぜてください」


 少女にスプーンを渡すと、訝しげにミルクをかき混ぜ始める。


「色が変わった! すごいよ、こんなの初めて見たよ!」

「とりあえず、飲んでみてください」

「えぇ……うーん、わかった」


 少女がおずおずとコップに口をつける。


「わっ、あまい! 美味しい!」


 ぱあっと花が開くように笑う。気に入られたようでよかった。


「すごいすごい……キミ、魔法使えたんだ」

「これは魔法じゃないですよ。電子レンジで温めた牛乳に、チョコレートを溶かしただけです」

「でんしれんじ、ちょこれーと……なるほどね?」

「わかってなさそうですね」


 正直私も仕組みまで説明できる自信はないので、すかさずウィキプディアで調べる。


「発せられた電波が食品に含まれる分子を振動させ摩擦熱を生じさせる。その熱が全体に広がって食品全体があたたまる……だそうです」


 とりあえず読み上げてみたが、少女ははてなマークを飛ばしている。


「ええと、要するに温めた牛乳にチョコレートっていう甘いものを溶かしたら牛乳が甘くなったってことで、魔法ではないです」

「ふーん」


 興味なさそうだ。ちゃっかりホットチョコは完飲されている。


「魔法がないなんて不便そうだけど、すごいものもあるんだね」

「ニンゲン舐めたら痛い目見ますからね?」

「ふ、ふんっ、脅すならもっと上手くやるんだな」


 言いつつ、自称魔王様はぶるぶる震えている。


「魔王さんって、やっぱロリですね」

「なっ!?!?

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