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王都、あれこれ2

ー冒険者ギルドA級会議ー


冒険者ギルドの会議室。王都の冒険者ギルドは5階建ての大きな建物ではあるが、大人数が入って会議をするような部屋はない。一番広い部屋は地下のトレーニングルームだ。


なのでA級パーティーのリーダーだけが呼ばれていた。正方形のテーブルの上座に座るのは冒険者ギルドのギルドマスター、元『勇者』アベル・オゥトーノ。


アベルの正面に座る銀髪で純白のローブを纏った貴公子のようなイケメン、A級パーティー『銀の蝎』のリーダー、A級冒険者『銀氷の魔術師』ロメロ・パトリオット。


アベルの右手に腕を組んで座る真っ青な髪に猫耳の鋭い目付き、ビキニアーマーを着た女性、A級パーティー『風の牙』リーダー、A級冒険者『疾風』リタ・エストラーダ。彼女は猫人族の上位種と言われている山猫族だ。ちなみにマルテは普通の猫人族である。


そして、アベルの左手の席は空いていた。全員が腕を組み、待ち人が来るのを待っていた。


「ギルマス!10億の依頼だって?」


会議室の扉が派手に開かれ、赤毛の青年が飛び込んできた。彼がA級パーティー『燃え盛る炎』リーダー、A級冒険者『鉄壁』ルーカス・ベルモンテである。


パーティーの等級と個人の等級の違い…パーティーの等級は功績を積み上げれば勝手に上がっていく。しかし、個人の等級はそうではない。B級以上に上がるには、幾多の試験が必要になる。貴族の相手をすることも多くなるためだ。


ちなみに『光の翼』はA級パーティーであるが、全員B級である。A級に上がるには王都の冒険者ギルドにて試験を受ける必要があるからだ。メンバー全員がそれを望まなかった。


「遅いぞ、ルーカス。」


「すんません、護衛対象のアレックス王子がなかなか解放してくれなかったもんで。」


アベルのお叱りの言葉にルーカスは頭を掻きながら言い訳を述べ空いている席に腰を下ろす。


「ふん、大変だな、負け確の王子の護衛は。」


ロメロが挑発するように鼻を鳴らしながら言う。


「まあな。でもお前がよく呼ばれるオーロラ王女もヤバいじゃないか?ティエラ様がリチャード王子に付いたんだぞ?」


「ふん、王女は大丈夫だ。問題ない。」


ルーカスの物言いに目を瞑りながら答えるロメロに全員の視線が集まる。


「ロメロが王女の寝室に呼ばれたというのは本当か?」


「な、そんな、そんなことはっ。誰がそんな噂をっ。」


リタの不意の問いにあたふたと焦り出すロメロ。その姿を見て全員が噂は本当だと確信した。


オーロラ王女は21歳にしてすでに2人の子供がいる。しかし、誰の子供かは公表されていない。公表しないことで全員に王配となり得る可能性を残すことがオーロラ陣営の狙いなのだ。


男好きのオーロラ王女はそのことを利用し、次から次へとお気に入りを自分のベッドに連れ込んでいるのだ。男も女もだ。


「そういうことなら、今回の依頼はロメロは無理か…」


「依頼ってティエラ様の護衛だよね?」


アベルの言葉にルーカスが聞く。ここにいる全員がティエラと面識があった。


それは約1年前、はぐれドラゴンが王都に飛来したときだ。アベルを含めたここにいる4人もドラゴンと戦った。しかし、ドラゴンのあまりの強さに被害を出さずに遠巻きに戦うしか方法はなかった。


アベルは『勇者』時代、ドラゴンを倒したことがあった。なので『勇者』と呼ばれるようになったのだ。しかし、王都に飛来したドラゴンはそのドラゴンより明らかに強かった。しかも、当時の頼れるパーティーメンバーはいなかった。


そんなところに颯爽と現れたのがティエラだ。ティエラはひとりの執事を連れて現れた。そして執事に避難誘導を頼むと、一方的にエストックでドラゴンを切り刻み始めたのだ。ひとりでだ。アベルのときは5人のパーティーだった。しかもひとりは死に、二人はかなりの重症を負った。その光景はアベルには有り得ないものであった。


数分切り刻まれぐったりしたドラゴンにティエラは近付き何事か話し掛けていた。その後、ドラゴンは傷付いた体を引き摺るように王都から飛び立って行ったのであった。


その光景を見たアベルはティエラとの間に覆せない何かがあると思ったもんだ。


「いや、厳密に言うと、ビビアナのところの娼婦の護衛だな。ベルジィまで行ってもらう。」


「うほっ、娼婦たちの。しかし、ベルジィまでとなるとうちも無理かなぁ。またアレックス王子からの依頼も来るだろうし…」


健全な男であるルーカスにとって娼婦の護衛というのはいろいろ楽しみではあったが、王子からの依頼を断るわけにはいかなかった。


「ていうか、リチャード王子からの護衛依頼は来ないんだな。リタのところにも来てないんだろ?」


「あそこは暗殺ギルドが全面的に護衛しているからな。」


「ああ、なるほど。」


ルーカスの問いに代わりにアベルが答えた。全員が納得したようだ。王宮に入れる冒険者はA級以上と決まっている。しかし、暗殺ギルドはメイドや執事などに変装して入り込むことが可能なのだ。


「では、ティエラ様からの依頼は『風の牙』で意義はないな。」


アベルはそう言いながら全員を見渡す。全員意義はないようだ。


「いいなぁ、リタ。ベルジィ周辺はダンジョンが多いんだろ?」


「ああ、我々も護衛依頼ばかりに飽々していたところだ。初級ダンジョンばかりではあるが、良い暇潰しにはなるだろう。」


「おいおい、ちゃんと帰ってきてくれよ。」


リタの言葉にアベルは焦る。王都デントロの周辺は魔物が狩り尽くされほとんどお目にかかることは出来ない。その代わり貴族からの護衛依頼があとを立たないのだ。


「ベルジィには確か『帰らずダンジョン』があるのではなかったか?」


「ほほう、ロメロ、詳しく。」


ロメロからの情報に戦闘狂のリタの目がキラキラと輝く。『帰らずダンジョン』…文字通り、入った者は出てこない、S級指定のダンジョンだ。


「あそこは立ち入り禁止だぞ。幸いにもダンジョンから魔物が溢れ出てくることがないのでずっと放置されている。」


「ほうほう。もっと詳しく。」


脅そうと思って言ったアベルの言葉であったが、リタには逆効果だったようだ。アベルはため息を吐き出した。


「そういや、ギルマスの現役時代のパーティーメンバーにビビアナ様がいたって本当か?」


ルーカスが急に話題を変えた。しかし、全員興味のあることだったので、全員の視線がアベルに集まる。


「いや、ビビアナじゃなくて娘な。」


「「は!?」」


アベルの言葉に全員が驚く。だってビビアナの見た目は20代前半なのだ。


「娘?え?ビビアナ様の娘さんがギルマスと同じパーティーって…年齢は?」


「まあ、同じパーティーなんだから俺と同じ40前後だわな。」


「「は!?」」


「じゃあ、いったいその親であるビビアナ様は何歳なんだ?」


ルーカスの正直な気持ちだ。ロメロとリタもうんうんと頷いている。


「お前ら、それ以上は深淵だぞ?それを覗く覚悟がお前らにはあるのか?」


普段へらへらしているアベルが殺気も放たんとするような真剣な眼差しで言うもんだから、3人はごくりと唾を飲み込み首を左右に振ったのであった。


「うむ。お前らもちょっとは賢くなったな。では、依頼は『風の牙』に頼む。」


「分かった。」


「くれぐれも『帰らずダンジョン』には入らず真っ直ぐ帰ってくるように。」


「それは約束致しかねる。」


リタの言葉にアベルは再びため息を吐き出した。どうせ言っても聞きはしない。こうして、ベルジィ行きはリタ率いる『風の牙』に決まったのであった。



ー暗殺ギルドの新メンバーー


「カミロ、いますか?」


ティエラが王都を立つ2日前、彼女はメイド服に身を包んだ二人の女性を連れて暗殺ギルド本部を訪れた。


「これはこれは。ティエラ様。ようこそお越しくださいました。」


そんなティエラをギルドマスターであるカミロ本人が出迎える。今日のカミロは忍装束ではなく執事服だ。珍しく出した顔はなかなかのイケメンだ。これも変装なのだが。


「この二人をリチャードの護衛に加えて頂けません?名前はアダとニンファですわ。」


「それは構いませんが…」


カミロはアダとニンファと呼ばれた二人を観察する。金色の瞳とは珍しいがそれ以外は普通の女性に見える。


先日、元スラム街にて新人メンバーが力不足を露呈し、ティエラから直々にお叱りを受けたばかりだ。リチャード王子に何かあったら大事だ。大丈夫なのだろうか?


「実力はわたくしが保証しますわ。少しお試し致しますか?」 


「ええ、出来れば。」


カミロの言葉にティエラはうんと頷く。


「アダ、ニンファ。殺気を解放してくださいまし。」


「「はい。」」


二人が殺気を解放した瞬間、カミロはその場に腰を落した。手が小刻みに震えているのが分かった。周りを見渡せば、その部屋にいたメンバー全員が座り込んで震えていた。


その光景は初めてティエラの殺気に当てられたときを思い出した。あのときまでは自分が誰よりも強いと思い込んでいた。しかし、ティエラを前にすると、自分はただ座って震えることしか出来ない存在だと思い知らされた。


「どうかしら?なかなかのものでしょう?」


座り込むカミロにティエラは右手を差し出した。カミロがその手を握るとティエラはカミロを強引に立たせた。


「もういいですわ。」


「「はい。」」


ティエラがそう言うとアダとニンファの殺気が収まった。なかなかなんてもんじゃない。あの殺気の中で微笑んでいられるティエラがおかしい。


「なかなかなんてものではありません。私たちに制御できますでしょうか?」


「大丈夫ですわ。きちんと言い聞かせてありますから。」


「そうですか…分かりました。それで賃金の方は?」


「お金はいらないそうですわ。その代わり大量のお肉が良いと。」


「肉…ですか?」


「ええ、お肉ですわ。」


カミロがアダとニンファを見ると物凄い笑顔を作っていた。どうやらお肉が好きらしい。正体は聞かない方が身のためだ。


「では、お金は例の口座に。」


「はい、承知しました。」


「では、よしなに。」


ティエラは二人を置いて、暗殺ギルドを後にしたのであった。


その後、カミロはアダとニンファを高級ステーキ店に連れていった。二人は10人前をペロリと平らげたのであった。

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