7・黒い笑顔にご用心
回想シーンもラストです
いきなり陛下付きの侍女とかって…、
「意味がわからないのですが?」
「明日からあなたは私付きの侍女という事です。不満はないのでしょう?」
「いやいや、それは奥様をお迎えするのに、という事に対してで…」
「私はその事に対して聞いたわけではありませんが」
な、なんって理不尽なっっ!
「でもキャロちゃんがいなくなるのは私もいやよ」
普段こういった場面ではにこにこ見ているだけの皇太后様から思わぬ援護射撃です。
グッジョブ皇太后様!
陛下申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「母上のは申し訳ないのですが、ずっと仕えてきてくれたサリュト男爵夫人が腰痛を患ってしまいまして。ちょうど良いので職を辞したいと言ってきたのです」
「まあ、大丈夫なんですの?」
「えぇ。腰自体はしばらく休めば良いようです」
皇太后様の問いに陛下は微笑む。
この美男美女親子は何回見ても眼福でござんす。
「ただ、彼女も男爵を亡くしてから二十年、ほぼ住込みで私の侍女をしてくれていましたからね。今後は孫達とのんびりしたいらしいです」
「孫よね、そうよね、一緒に遊びたいわよね」
孫という単語に必要以上に食いつく皇太后様。
そういえばさっきも「早く孫を〜」とか言ってましたね。
をや、一瞬陛下のお顔に黒い笑みが見えた気がするのですが、気のせいでしょうか。
「私の侍女となればある程度の身分があり、かつ信用できる人でないといけないわけで」
そりゃそうでしょうとも。
腐っても国王陛下です(失礼)。
「しかも、男爵夫人がすでに休みに入っているので可及的速やかに人員補充する必要があるのです」
陛下はにっこり笑って私を見ます。
先程の黒さは感じません。感じませんが、ヤな予感しかしません。
「そこでキャロルです。身分はもちろん、これ以上信頼のできる人もいないでしょう」
すと、陛下は私の手を握ります。
スキンシップが多いってゆーの!
なんとか握られた手を引こうと頑張りますが、意外と力強くて逃げれない。
「だからキャロル。私の侍女になって下さいね、お願いします」
ちゅとナチュラルに握った手に唇を寄せた陛下の笑顔はやっぱり真っ黒だった〜!(号泣)