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鬼畜陛下の愛され侍女  作者: 瑜月
7/25

6・平和が去っていく足音

回想シーンもあとちょっと!

なんだかんだで侍女として2年ほど経ったある日。

私のそれでも平和な日々はいとも簡単にぶち壊された。


その日も陛下はご機嫌伺いとして皇太后様の元にやっていらっしゃいました。


「やぁキャロル嬢、今日も可愛いね」

私を見るなりそりゃもう素敵な笑顔で歩み寄って来ます。

「昨日ぶりですね、陛下もお元気そうでなによりです」

私も笑顔で言って数歩後ろへ下がりますが、あっさり捕まります。


あ、ヤバい


「昨日ぶりですがあなたにお会いしたかったですよ」

私の髪を一房掴むと、ちゅと唇を寄せます。


ぞわわわわ


一気に鳥肌が立ちます。

悪寒です。

気持ち悪いです。


陛下は美人で優しくて賢くて非の打ち所がないと巷では大人気なんですが、私は苦手です。


最初に会ったあのお茶会の時から、陛下から漂う空気が怖いのです。

肉食獣が笑顔振りまいてくる感じ。

油断したら捕まりそう。


それを他の侍女さんに言ったら「ありえないよ」とか「食べられちゃえ」とか言われました。

イマイチ伝わりません。


「陛下、あまりキャロちゃんを困らせないで下さいね」

やんわりと皇太后様が助け船を出してくれます。

「そうですね、こんな事で嫌われても不本意ですからね」


陛下はパッと私の髪から手を離すと、その手を私の腰にまわしエスコートします。

「さ、キャロルも座って。お茶にしよう」

「そうね。お茶にしましょう」

「はぁ」


陛下は長ソファに座ると私の腕を引き、隣ぴったりに座らせる。

本来侍女が主人(しかも王族)とお茶をするなどありえないのだけど、さすがにこの2年間で慣れた。

これが標準になった。

私以外の侍女さんがこうなることはない。

侍女さんたちは妬むでもなく、むしろ笑顔で私のお茶も用意してくれる。


…慣れはしたが胃が痛い

兄様たちに陛下に近付くな言われたけど、翌日から無理だったよ。

つい遠い目をしてしまうのは許してください。


「ああそうだ。今日は母上に報告があったのです」


やわやわと私の手を握りながら陛下が口を開く。


手を離せ手を!


と心の中で叫ぶ。


以前、実際に叫んでみたのだが「では手以外のところを」といってずっとお尻をさすられてのだ。皇太后様から見えないように。

それ以来、手で済めば良しということにしている。


「あら、なぁに?」

「隣国の公女を側に置くことになりました」


ぶっ、とお茶を飲んでいたら吹き出していただろう。

なんつー事をサラッと言うんだ、この人は。


「六人目ね」

「そうなりますね」

「どなたか妃に迎えないの?」

「えぇ。ある程度考えてはいますが、まだ機は熟さずですね」

「早く孫を抱きたいのだけど」

「側室とは子供作る気は無いですから、もうしばらくお待ち下さい、としか言いようがないですね」

「なるべく早くしてね」


…親子の午後のお茶の話題として相応しいのかどうなのか、もはや私にはわかりませぬ。


おそらく難しい顔をしていたであろう私に陛下が顔を向けます。


「キャロル、不満ですか?」

「いえとんでもない。おめでとうございます」

「そうですか。それは良かった」


陛下はにっこり笑います。


「では、あなたも明日から私付きの侍女という事でよろしくお願いしますね」

「はぁ?」


ナニ言ってんだコイツ。

畏れ多くも国王陛下だが、心の中でコイツ呼ばわりするのくらい許してください。

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