5・台風一過、されど荒れ模様
兄妹のお名前続き!
長女 カルファ・サンデルマン(公爵夫人
三男 サリュト・オーリンズ(医者
次女 エレノア・エスメルト(神官長夫人
四男 ルシェル・オーリンズ(学者
今回も四男出番なし。いつか必ず…。
「まったく油断もスキもない…」
そう言いながら三番目のお兄様ーサリュト兄様がどこからか取り出したアルコール綿で私の手の甲をゴシゴシ拭きます。
お医者様の七つ道具でもあるのでしょうか。
「流石にびっくりする手の早さね〜」
一番上お姉様ーカルファ姉様ーが苦笑いします。
「陛下は今奥様何人でしたっけ?4人?」
「5人よー」
二番目のお姉様ーエレノア姉様ーの問いに皇太后様が笑う。
「でもみんな側女だから、妃はいないの。妃がいたら私も楽になるんだけど…」
にっこりと笑って私を見ます。
しかし奥さん5人かー。
すごいなぁ。
この国は王室のみ一夫多妻である。
王室的には子供を作る事が最優先事項らしい。
因みに陛下にはまだ子供はいないらしい。
すと一番上のお兄様ーパトラス兄様ーが私の前にやってくる。
私の視界は兄様の背中になり、皇太后様のお姿が見えなくなる。
「陛下にお子様がお生まれになれば我々も安心なのですが」
宰相のもっともな意見に皇太后様はコロコロと笑いながら「ホントにね〜」と笑っている。
「キャロ、陛下には必要以上に近づいてはダメだよ」
手を拭き続けているサリュト兄様が小さい声で言います。
どうでもいいけど、拭きすぎて手が赤くなっています。
「キャロの場合、陛下とすれ違うだけで子供ができかねない」
「そんなことはないと…「でも危ないからダメ」」
すれ違うだけで子供ができるわけじゃないことぐらい、お医者様をしているサリュト兄様なら当然ご存知のはずなのに、目が怖い程真剣です。
「とにかく、陛下は特に要注意。他の男にも近づかないこと、近づかれないこと、いいね」
「はーい」
陛下は見目麗しいけど危ない匂いがするので、兄様の意見に異を唱えるでもなく頷きました。
…
……
………が。
陛下はしょっちゅう『ご機嫌伺い』と称して皇太后様の元にやってきます。
やってきては側にいる私に一絡みしていきます。
皇太后様ま他の侍女さんたちも「仲良しね〜」と生暖かく見守ってくれます。
くれますが!
頼んでないから!