4・お茶会と台風と
とりあえず、お兄様ズの名前。
一部考えた!
長男 パトラス・オーリンズ(宰相)
次男 クレオス・オーリンズ(騎士)
よろしくお願いします。
「これは陛下、いかがなさいましたか?」
教本通りの家臣の礼をとり、一番上のお兄様ーパトラス兄様ーが口を開きます。
「オーリンズ公爵家の方々が母上のお茶会にいらっしゃってると聞いてね、久しぶりに再従兄弟たちに挨拶をと思ってね」
とても柔らかな口調。
陛下、と言っていたから国王陛下その人なのでしょう。
頭を下げていますし、なによりお兄様方が邪魔でお姿は見えませんが。
「勿体無いお言葉です」
二番目のお兄様ークレオス兄様ーが丁寧に言います。
「今日から末のお嬢様が母上の侍女となる、と聞いていますが…そこに?」
わ、私の事ですね!
お話に上がっているとは…
「ご挨拶させていただいても?」
へ、陛下にそんなん言われて「NO」と言える人間がこの国にいるはずがないのですが…。
ーーーチッ
舌打ちの音とともにお兄様方が左右に避けます。
って…舌打ち?
とりあえず聞こえなかったことにしてご挨拶です。
「初めてお目にかかります、オーリンズ公爵家キャロルと申します。本日より皇太后陛下のおそばにお仕えさせていただきます」
「顔をあげてくださいキャロル嬢」
優しく甘い声です。
ドキドキしてしまいます。
言われるまま顔を上げれば、そこには眉目秀麗、金髪のサラサラストレートヘアを一つに結んだ、真紅の瞳の男性が。
「初めまして、ではないのですよ。キャロル嬢」陛下はさりげなく私の手をとります。「12年ぶりにお会いしますね。幼い時のあなたもとても可愛らしかったですが、今は可愛いというより美しくなられましたね」
「は、はぁ…」
にっこりと笑う陛下。
なんか、うん、違和感が…なんだろう。
「あ、私はクライス・S・ロザリアです。再従姉妹ですし、クライス、とお呼びくださいね。私もキャロとお呼びしても?」
ちゅ
と柔らかなものが私の手の甲にふれる。
それが陛下の唇であることに気がつくのに時間はかからない。
手にちゅーされたーーー!!
と瞬間的に頬に熱が集まるのと、ぐいっとクレオス兄様に体を引かれたのはほぼ同時。
「陛下、いくら再従姉妹といえど、立場はお考えください」
私がクレオス兄様の陰に隠れたのを見て、パトラス兄様が口を出す。
「おや、ダメだったかな?」
「ダメすぎます」
「それは残念だ」
陛下はちらっと私に目を向ける。
って色っぽい流し目を15歳の小娘にしてどーする!!
「これから長い付き合いになりそうだから、仲良く…「オーリンズ家としてお気持ちだけありがたく頂戴いたします」」
陛下の言葉にパトラス兄様が完全にかぶせる。
「親戚関係にあるとはいえ、オーリンズ家は臣下です。親戚関係にあればこそ、他者の見本になるべく立場をわきまえお仕えさせていただきます」
「オーリンズ宰相は相変わらず厳しいね」
ハッキリキッパリ言い切ったパトラスお兄様の言葉に陛下が肩をすくめる。
「臣下ですから。キャロもいいね、私たちは臣下なんだよ、臣下。わかるね」
臣下という言葉を強調してくるお兄様。笑顔なんですが、怖いです。
その怖さに負け、私は無言でコクコクうなずきます。
経験的に知っています。
こーゆーときのお兄様には逆らってはいけません。
「そういうことですので、陛下は執務へお戻りください。さあさあさあ」
有無を言わさぬ笑顔でパトラスお兄様は陛下をもおいたてます。
「キャロル嬢、またね」
「またはありません」
「つれないな〜」
「とっとと戻ってください」
「わかったよ〜」
…台風が去っていく…。
わかったこと。
国王陛下は美人さんで優しい。
けど、あれ、近づいちゃダメなヤツですよねーーー!!!
キャロルと陛下の出会い編。
陛下がただのチャラい人になってしまった。立派な鬼畜になれるのかな。