23・あぁ、幸せの鐘がなる…かしら。
「私のお嫁さんになってね、キャロル」
満面の笑みで陛下は言った。
その後の兄様ズの怒りと皇太后様の喜び具合と、ジャミール筆頭書記官のめんどくさそうな顔とジゼルさんの無表情はもはやカオスであった。
私の頭の中ももちろんカオスである。
その後噂を聞きつけたお母様やお姉様ズ、三、四番目の兄様ズが例にもれずセキュリティーと不敬罪を完全無視して乱入してきて、さらに収拾がつかなくなった事は言うまでもない。
普段、事なかれ主義的な陛下であるが、その後の動きは早かった。
王命の名のもと、オーリンズ公爵家をほぼ無視し陛下と私の婚約が発表された。
最も反対をしていたのは兄様達男性陣でお母様を筆頭とする女性陣は賛成だった(私を除く)。数で有利な男性陣ではあるが、女性陣にはいろんな意味で勝てなかったらしい。
私は侍女を解雇され、部屋は今まで主のいなかった正妃の部屋に強制的に引越しさせられた。
本来陛下の部屋とは寝室で1つなぎになっているが、まだ婚約しただけなので寝室は使っていない。正妃の部屋に簡易ベッドを置き、陛下との寝室へのドアを塞いでいる。
これは陛下に無断で兄様たちがとっとと作業をしていった。正式に結婚するまでは干渉禁止と言うことだ。
そして政治的理由から維持していた後宮はあっという間に解体された。いつの間にやら陛下の地番はゆっくりと固められていたらしい。
もちろん多少の反発はあったが、オーリンズ公爵家の娘が正妃になると決まってしまえば、どんな貴族たちも正面切って喧嘩売る事はできなくなってしまう。
政治でも軍事でも重要な部分を握っているのはオーリンズ家である。そんなオーリンズ家に喧嘩を売る人はいない。
皇太后様が後宮から王宮に部屋を移した。表向きは新しく王妃となる私への教育とフォローのためだけど、「お母さんと娘ごっこがしたい」と強く主張した結果だ。
もちろんお母様やお姉様も足繁く通ってきている。
その結果、皇太后様が実の娘のように可愛がる前オーリンズ公爵の末娘、そして長姉さまの嫁ぎ先であるサンデルマン公爵家や次姉さまの嫁ぎ先である神官長さまが私の後ろ盾であると認識されてしまった。
私の意思などを無視して完全に外堀が埋まってしまった。
では、私の意思はといえば…。
散々セクハラをされ、他の側女さんとの情事を見せられているのである。一気に好きになる、というのは厳しいものがある。
しかし陛下が私を大事にしてくれているのもわかる。
毎日花が届けられる。時として陛下が自ら庭で選んだ花が贈られる。
ドレスや宝石の類も贈られる。税金の無駄遣いと言ったところ、陛下のポケットマネーから出しているのできにするなと言われた。これに関しては長兄さまやジャミール筆頭秘書官にも裏どりをしたので、間違いなくポケットマネーのようだ。
問題が発生しない限り朝食も夕食も一緒に取り、日中も執務の間によく私の部屋を訪れ、休憩と言いお茶をする。その時に街で流行のお菓子や珍しい海外のお茶なども持ってきてくれる。街で流行のお菓子は並んで買ってきて下さる方に申し訳ないのでやめてほしいとお願いしている。
貴族の娘である以上、政略結婚は仕方ないことであると思っていた。お父様が亡くなってからも、お兄様の優しさのもと、ワガママに生きてきたきがしている。
そしてこんなに大事にされる政略結婚であれば、まぁ悪くはないかなと。
ここから陛下と私の間に起こるラブストーリーを期待したい。
「キャロル、迎えにきたよ」
軽いノックの音とともに扉が開けられそこに立っているのは純白の正装に身を包み、穏やかな微笑みを浮かべる陛下。
今日私たちは結婚する。
fin
お読みいただきありがとうございます。
もっともっとキャロルと陛下の物語はあるのですが、
ちょっと更新の時間が取れなさそうなので一旦ここで完結とさせていただきます。
陛下は完全に鬼畜じゃなくって変態になってしまった…こんなはずでは…(遠い目)。
タイトルと内容に齟齬があることを海より深く反省しています(いや、浅瀬じゃないです、多分)。
更新期間が空いてしまいましたが、
お付き合いいただき、ありがとうございました。