20・不安しかないっ!
「ようするに、陛下とキャロはヤったってことだね」
脳筋天然娘による爆弾投下。
しばし灰になったけど、すぐに自分を取り戻す。
「だ、だから違うって!」
「いやいや、恥じることは無いよ、キャロ。騎士団の連中もみんなやってる事らしいから」
「恥じるとかそういう以前! 何の関係もないの! 誤解なの」
「うーん、でもなー。状況証拠っていうの? 二人ともそんなカッコじゃ何もなかったって方がありえなくない?」
「マリーさん! でも違うのー、いやなの!」
あぁぁぁ脳筋天然娘のくせに妙に鋭いツッコミ。
「とりあえずマリー、朝食の準備を。ジゼル、キャロルに服を。話はそれからだ」
いつのまにかしっかりと朝の支度を終えている陛下が指示をだす。
って、おやぁ。
朝の準備が終わってる?
…私が起こしに来るときはガウンすら自分ではおりませんよね?
それ以前に侍女が起こしに来る前に起きていた?
…私が起こしに来ると寝起きの悪さ全開でなかなか起きてきませんよね?
別人か!?
「さあさあキャロルちゃ…キャロル様、こちらをお召しください」
ツッコミどころ満載で途方にくれる私にジゼルさんは緩めのドレスを持ってくる。コルセット不要のワンピースに近いシンプルなもの。
見たことのないドレスだけど使っている生地は最高級品だ。
「陛下がキャロル様のためにご準備していた部屋着ですよ。この日のために準備しておいたのです。サイズもぴったりですね。お似合いです」
…why?
ジゼルさんの言葉が未知の言葉のようで、理解できなくなってくる。
ジゼルさんに促されるまま顔を洗い髪を梳かされ薄くお化粧を施される…が、この部屋の化粧品とか使っていいのか?
「大丈夫ですよ、全て新品です。キャロル様のために準備しておいたものです」
…ジゼルさんエスパーですか?
「陛下がお生まれになった時からお仕えさせていただいておりますが、寝室にお迎えになった女性はキャロル様だけですよ、ご安心ください」
「はぁ…」
ため息なのか返事なのか、自分でもわからなくなってくる。
一体何を安心しろと言うのだ。不安しかない。
「ごめんね、キャロルちゃん」ぽそっとジゼルさんが呟く。「見ればまだ清い関係なのはわかるのよ」
「ジゼルさん、じゃあ何故…」
「そーなったらいいな、って思ってるからよ」
「……は?」
「ま、きっとすでに外堀は埋まっているわ。安心して」
キラキラ笑顔でサムズアップしてくれるジゼルさん。
あぁぁやっぱり不安しかないんですけどー。
「さ、参りましょう。陛下もお待ちですよ」
促されとりあえず立ち上がる。
自ら深みにはまっていくが如く、私は陛下の私室へと向かった。
ど、どなどな?
お読みいただきありがとうございます。
ジゼルさん何気に腹黒w




