14・女神降臨!
お茶会(陛下サイド)
王族用の中庭で行われている母のお茶会を木の陰からじっと観察する。
まだキャロルは来ていない。
が。
あのうざったい兄弟6人が全員揃っている。
過保護か。
「ほんっとかの令嬢のことになると貴方は変態ですよね〜」
隣でブツブツとジャミールがぼやいているが、気にしない。
「そのくらい政務にも熱心に取り組んでくれると…」
「あっ!」
来た。
母付きの侍女長に連れられたキャロルだ。
以前、街で見かけたときの可愛さに、大人の色気が加わり、可愛いのに綺麗という恐ろしい姿になっている。しかも、紺色の地味なワンピースを着ているが、15歳とは思えない小悪魔ボディが隠し切れていない。
ひゅ〜っとジャミールが下品な口笛を吹く。
「これはこれは。とんでもない成長してますね〜」
「うむ」
「オーリンズ宰相が可愛がるのも仕方ないですね。こんな妹がいたら色々心配事が尽きないでしょうに」
「うむ」
「…私は貴方の股間の方が心配ですが」
「うむ」
もはや「うむ」以外の返事ができないくらい、私は彼女に見とれていた。
まさに女神降臨
ちなみに息子は自分すらビックリするような巨大なテントを張っており、かなりキツい。
「とりあえず一回落ち着きましょうか。その状況で行ったらオーリンズ兄弟にフルボッコにされるのは目に見えてますから」
「うむ」
といわれても、ここでひとりで致すわけにもいかないし、仕方なくキャロルから目をそらし違うことを考える。
あぁ、あれがいい。
下品な化粧に品のないカラダをした側女の一人を思い出すやいなやどんどん萎える息子。
息子は正直だ。
「いいですか、その状態ですよ。間違っても間違った状態にならないでくださいね」
「うむ」
「主に貴方の未来のために、ですよ」
「うむ」
息子の主張を抑えるのは大変だが、彼女を私のものにするためには必要不可欠な試練だ。
頑張るぞ、息子よ。
相棒というには正直すぎてちょっとばかり頼りなく信頼できない息子のエールを送り、「じゃ」とジャミールに片手を上げて静かにお茶会会場へ近づいて行く。
ある程度まで近づいたとき、母の声が耳に届く。
チャンスだ!
「息子で申し訳ありませんでしたね、母上」
私はいつも以上に優しい声で会話に割り込んだ。
その声にびっくりして振り返るキャロル。
ハーフアップにしている髪が揺れ、驚いたブルーの瞳は当社比1.5倍くらいに見開かれている。
スローモーションでリプレイよろ!
と叫びたくなったのは許してほしい。
近くで見るキャロルは本当に可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛い!!
と思ってたところに、オーリンズ家のむさ苦しい男どもが立ち上がり礼を取るが、奴らの狙いがキャロルの前に壁を作ることだというのは秒でわかる。
スッゲー連携だな。
とりあえず再従兄弟であることを盾に挨拶をする、が…。
声まで可愛い!
鈴の転がるような心地よいソプラノの声に息子がピクっと反応するが精神力で抑え込む。
ここはまだお前の出番ではない。
誰ぞの舌打ちが聞こえたが不問だ。
そんなのどうでもいいくらい私の目はキャロルしか見ていない。
もはや本能に導かれるままにキャロルの手を取り、キスをする。
はぁぁぁぁ。
白く細い手は柔らかくつやつやで…
あーーーーずっと口付けていたい。
というか、舐めたい指一本一本丁寧に。
しかし、これ以上は息子が耐えられないであろう。
仕方ない。
それにしても手でコレなんだから唇に口付けしたらどんなに…。
そう思い、キャロルの顔を見上げる、と…。
真っ赤! なにこれ! ウブなの? 可愛い! 可愛すぎて危険!!
瞬間息子の熱が一気に…
上がる前にオーリンズ騎士隊長が彼女をかっさらう。
ぐぬぬぬぬ。
彼女と引き離されたのは文句しかないが、愚息の事を考えると感謝するしかないのか。
私はその後オーリンズ宰相に執務に強制的に戻され、極めて短時間だった私のお茶会は幕を下ろした。
のだが。
その夜、諸般の事情により入浴にいつもの倍以上時間がかかり、侍女たちを心配させたのは仕方のない話だ。
陛下はレベルが上がった。
主に変態の。




