10・かわいい かわいい かわいい
陛下視点の回想です。
キャロルを部屋に残し目の前の女を抱く。
この女に対して特別な感情は全くない。
ただの側女。
そして抱く事も私の仕事だ。
しなくていい、といわれれば、今すぐにでもやめて部屋に帰る。性欲処理なんて自分ですれば良い。どっちにしろ考える女性は一人だ。
どうでもよい女に何をされても立ち上がる私の息子ではない。
私はずっと一人の女を求め、全ての女に彼女を重ねる。
キャロル・オーリンズ。
我が国の筆頭貴族、貴族中の貴族である前オーリンズ公爵の末の姫君。
私は彼女だけが欲しい。
***
キャロルと始めて出会ったのは私が7歳の時。産まれたばかりのキャロルを公爵夫妻が見せに来たのだ。
生まれて初めて見る赤ちゃんであった。
真っ白ですべすべ、やわらかでずっとふにふにと触っていたい。
赤ちゃんかわいい。
ぎゅっと握っている小さな手を開き、人差し指を握らせる。
わ、笑った!
なんだこの生物は!
かわいい、かわいい、かわいい!
私は公爵夫妻が帰るまでボクはずっと彼女の側にいた。
***
時は流れ。
私が9歳の頃。
母親同士が異常に仲が良いため、オーリンズ公爵夫人はよく遊びにきていた。
夫人と小さなキャロルだけの日は良い。
薄い金色のフワフワな髪を揺らし、薄いブルーの瞳をキラキラ輝かせた小さなキャロルが、トテトテとボクの後をついて歩く姿、躓いて転んで泣き出す姿、どれをとってもかわいい。
マジ天使。
神さまキャロルをありがとう!
しかし、夫人の娘たちがいると話は変わる。
彼女たちはボクにイジワルするのだ。
ボクが嫌がっているのに、その様子を見てコロコロと笑い声をたてる。
なぜそんなにイジワルするの、と聞いた事がある。
お姉様はにっこり笑うと「かわいいからよ」と言った。
ボクはキャロルがかわいいけど、イジワルなんか絶対しない。
うんと優しくするから、ボクだけを見て。
***
更に1年が過ぎ。
ボクは10歳になった。
王太子としてのお勉強も本格的になっている。
ボクは将来お嫁さんをいっぱいもらわなきゃいけないらしい。
その中の一番が王妃さまになるんだって。
それならキャロルがいい。
ボクのお嫁さんになるのはキャロルしかいない。
ボクのことを「くーしゃま」と呼んでくれる姿はかわいい。
ボクが剣の練習で痣を作ると「痛いの痛いのとんでいけー」と可愛いらしくおまじないしてくれる。その後「治った?」と首を傾げる姿。
マジ天使!
すぐ治る。秒で治る。ボクも飛んでいく!
そんなある日のお茶会で、ボクは先日、剣の練習中にとある騎士から聞いた話を実行しようと心に決めていた。
その日のお茶会は珍しく父上やオーリンズ公爵、オーリンズ公爵子息(キャロルの一番上の兄だ)も一緒だったのでちょうどいい。
宴もたけなわ、となった時、ボクは実行に移した。
「キャロ」
庭師に頼んで作っておいてもらった薔薇の花束を手に、彼女の前に跪く。
「キャロル・オーリンズ嬢。ボクのお嫁さんになって下さい」
そう、プロポーズだ。
騎士殿はそれで結婚の約束をしたと言っていた。
ボクもキャロルと結婚の約束がしたい。キャロルはまだ3歳だけどびっくりするくらい可愛い。約束だけでもしておかないと不安だ。
ボクの一世一代のプロポーズ。
周りの大人は固まった。
キャロルはきょとんとして
「くーしゃま、お花くれるの?」
といって首をかしげる。
その姿が尊い、萌え死ぬ、キュン死だ!
ボクは平常心を保って頷く。
「うん、キャロの為に準備したんだ。受け取ってくれるかな?」
受け取ってもらえればこっちのものた。
「うん、ありが…「これは私が預かる」」
「あ…」
ひょいと花束は横取りされた。
オーリンズ公爵子息だ。
「殿下、お心は嬉しいのですが妹はあまりにも幼いのです。殿下のお心は私の方でお預かり致します」
「え、でもボクは…」
「殿下、貴方の世界はまだあまりにも狭いのです」
そう言ってキャロルを抱き上げたのはオーリンズ公爵だ。
「貴方の世界がもっと広がり、色んな事を知り、色んな人と出会い、それでも娘をと望んでくださるのであればその時改めてお話を致しましょう。その時まで娘を立派なお妃になれるよう、私も責任をもって教育いたしましょう」
顔は笑っているが目が笑っていない公爵と、苦虫を噛み潰したような顔の公爵子息。苦笑いしている父上と微笑んでいる母上たち。
「…わかりました」ボクはなぜか自分が負けたことを感じていた。「でも、ボクは…」
「殿下」
子息に窘められる。
ボクは言いたい事をぐっと飲み込む。
でも、ボクはキャロルが好きなんだ。
読み返してキャロルの容姿の描写が全くないことに気がつきました。
反省。




