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恋愛・青春なんてくだらない

 茶髪男と別れて学校を出ようとすると、


 「何でお前らまだいんの?」


 そこには南澤、寺垣、泉がいた。


 「どうしたも無いわよ。まさかあんな行動に出るとは思わなかったわよ」


 南澤がそう言うが、俺は何て言えば分からない。

 すると泉が俺の所に来て頭を下げた。


 「ありがとうございます」


 「別にお前の為じゃないからな。行くぞ」


 俺はカバンを学校に忘れたことを思い出し、歩き始めると、三人も学校に用事があるのかついてくる。

 帰り途中に隣にいる泉が俺に訪ねてきた。


 「どうしてあそこまでしてくれたんですか?」


 「さあ。何でだろうな。俺にも分からん」


 本当は分かってる。だけど言いたくない。


 「もしかしたらあの男に同情してしまったのかもしれんな」


 「似合わないセリフね」


 「やかましいわ」


 寺垣に突っ込まれながらも俺は学校の前に着いた。そこで俺は今回泉に言わないといけない事を言う。


 「泉。約束は果たせよ」


 「そういえば聞いてませんでしたね。何ですか?」


 今回解決したら俺のいう事を聞くと言う約束だ。だがこれは依頼を受けると決めていた時から決まっている。


 「これ以上その場のノリとか、好きでもない相手と付き合うなよ。今回みたいに巻き込まれても今度は絶対に助けないからな。だから今度は絶対に冷めないような人間と付き合え」


 「そんな事ですか。私も先輩が殴られている姿見て、流石に反省しましたよ」


 それで人が変われたら苦労しないんだがな。

 心ではそう思っても泉がこれからどうなるかなんて泉次第だ。そして、俺のやり方が正しい在り方ならば、それは泉のこれからで証明されるだろう。


 「そういえば先輩って名前何なんですか?」


 「お前知らない人に相談してたのかよ」


 こいつは本当に大丈夫だろうか。将来お金が貰えるとか言われたらホイホイ付いてきそうだ。


 「それは置いときましょう」


 「はあ。吉条宗広だ」


 「広先輩ですね!これからもよろしくお願いします」


 「これからはよろしくしたくないがな」


 「冷たいですよ!まあ、それじゃあ私達はこれで!」


 「気を付けて帰りなさいよ!」


 皆がそれぞれお別れの言葉を告げて帰って行った。


 「あれ?なんであいつら学校まで来たんだ?」


 俺は不思議に思いながらも部室にあるバックを取りに行く。

 部室には今日は読書をするからと来なかった清水がいた。


 「どうしたのその顔」


 清水は本から目を離さずに話しかけてきた。こいつの眼は何処にあるのだろうか。


 「ちょっと色々あったんだが俺の顔そんな傷ある?」


 とても痛かったがそこまで傷があるとは思っていなかったんだが。

 頬を撫でながら傷を確認していると、清水は本を閉じて立ち上がった。


 「付いてきなさい」


 立ち上がったと思えば俺の横を通り過ぎて歩き出した。

 これを無視して帰ったら面白そうだが後が怖いのでやめておき、素直について行った。


 辿り着いたのは、


 「保健室?」


 「入って」


 保健室には誰もいなかった。


 「今日は保健室の先生は休みよ」

 

 俺の疑問が分かったのか清水が答え、そして何か漁りだした。


 「そこに座ってなさい」


 「漁って大丈夫なのか?」

 

 「ばれなきゃ大丈夫よ」


 清水がしたいことに察しがついた俺は言われるがままに座ると、目の前には鏡があるのだがそこに写っている俺の顔は酷かった。

 所々に擦り傷もあればあざになりそうな傷もあるし、コンクリートだったのだが、少量の砂が顔についている。


 「これは思った以上に酷いな」


 俺は自分の顔を見ながら苦笑いが出てしまう。


 「どうやったらそうなるのよ」

 

 呆れ口調で呟きながらも清水は俺の真正面に座り顔に絆創膏を貼ってくれる。

 だが、顔は近いし誰も学校にはいないのか静かで何処か照れ臭くなり、


 「お前何なの?いつも澄まし顔でいるけど、もしかしてツンデレなの?」


 俺は何だか無言でいるのが恥ずかしいのでふざけて言ったのだが、


 「何か言ったかしら?」


 そこには笑顔ではない笑顔の清水がいた。


 「……何でもないです」


 何も言えなくなりされるがままに傷の手当をしてもらい、一緒に部室に戻る。


 「その傷は中学の頃を思い出すわね」


 帰る途中にそんな事を言われた。確かに今清水が言った事は覚えてる。


 「あの時、お前が襲われそうになった時か?」


 それに清水は頷いた。

 中学の頃清水は一度襲われそうになった事がある。それは同じ中学で清水の事が好きだった人がやったことだった。

 俺が偶々その時に通り掛かって何とか助かったがその襲った輩は元空手をやってて俺はズタボロにされたのだ。


 「そういえばそんな事もあったな」


 「今回もどうせ自分を犠牲にして助けたんでしょうけど」


 「俺だって傷つきたくて傷ついてるわけじゃないんだよ。今回だって仕方なくだ」


 「他に助ける方法があったでしょうに」


 「無かったから仕方なくこのやり方なんだ」


 「仕方なく。それをいつまで使うのかしらね」


 俺はその言葉が何故か心に浸透した。その言葉に反対出来ない自分もいる。


 「けど。あの時助けてもらった私が何かを言える義理じゃないんだけどね」


 清水はフォローなのかそんな事を言った。

 だが俺はそれに答えることが出来ないまま部室にあるバックを持ち、一人下校するのだった。


 俺が助ける理由か。それは何だろうな。

 一番の理由は中学校時代にあった出来事が起因しているのかもしれない。


 何故助けたのか。それには分からない。だけど後悔はしていない。

 ただ、清水の言いたいことは理解出来る。

 俺のやり方は自己犠牲だと言いたいのだろう。小説でも良く出る。主人公が誰かを助ける為に自分を犠牲にすることは。


 ――――だけど、清水に一つだけお前の言葉に俺は虚言を吐いた。


 自己犠牲が悪いと言うのかもしれない。だけど、俺にはそれしかやり方が無いから――――それは間違いだ。俺には、他にもっと効率的で楽して達成出来る方法がある。

 だが、それをしないのは簡単だ。自己犠牲()()()で助けられるのならば、それに越したことはないからだ。


 部活に入ったことはもう後悔はしていない。ボッチだった俺に少しだけ充実感を味わせることをしてくれたのだから。人助けをしたのだから。

 だけど、それでも、俺は願う。これからの依頼も、自己犠牲で済むような方法で助かる案件であるように――――俺が後々後悔しないように。


 だが、この一ヵ月後。早くも、俺の特技を使わなければならない案件が迷い込んでくることを、この時の俺はまだ知らないのだった。

評価、感想、ブクマ、指摘等ありましたらよろしくお願いします。


 要望が沢山くれば続きを書くかもしれませんが一応これで終わりです。

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