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だけれど僕は桃太郎じゃない  作者: pai-poi
第5幕 迎え称えんと欲すれば
123/205

隣のカキはよく客くうカキ

 僕はカキは少し硬めの、まだ初々しさが残るぐらいの方が好きだ。


 そう、カキはカキでも牡蠣ではなく柿の話だ。

もちろん牡蠣も好きだが、牡蠣フライ定食を二人前などペロリなのは勿論のこと、牡蠣天丼なんて御馳走以外の何物でもない! のは勿論のこと、生ガキに至っては至高の嗜好! あの殻の上に鎮座するテラテラと輝く美しくも赤裸々な姿を目で味わいつつ、一口にモグモグすれば「え? 海のミルク? ノンノン! 君はまさに食べる真珠の如き輝きだよ! ウマーッ!!」なのは勿論のこと、「牡蠣のガンガン焼き」って、猟奇的に漁師の料理で荒々しき阿頼耶識で「あらー、ここは極楽浄土?」ってなことは勿論なのだが、

その牡蠣ではなく果物の柿のことだ。


 僕は柿に限らずバナナにしても梨にしても、熟れたものより早熟な方が好きな気がする。

甘すぎず優しすぎず、歯ごたえ、言わば「若さゆえの抵抗感」のような確かな感触、そしてその若さからくる青々と初々しいフレッシュな香りが僕を魅了するのだ。むしろ熟し過ぎたものは、その豊潤な甘い香りにかえってキャパオーバーになってしまうぐらいだ。

一応、念のために言っておくが、「柿」と「姉」が偏が違うだけで「若しやお姉さまはフレッシュさを兼ね備えた若妻無双ってる、ってことを暗に示している?」なんていうのは邪推であり、僕が姉に恋心を描いている、などということは微塵も、これっぽっちも全くない!

確かに姉は年齢の割にはフレッシュ感に溢れているかもしれない。確かに僕はどちらかと言えば年上の方が好みであろう。だが……、いやこれ以上は言うまい。

んま確かに僕のフルーツ見解は、姉の影響があることにはあるのだが……。


 それはさて置き、諸兄諸姉よ。お察しの通り、果物などの「食材」の熟成具合は一先ず置き、好みの年齢、人生経験などによる「人の熟成具合」についてはどのようにお考えだろうか。どれぐらいの「成熟さ」が好みだろうか。

「純真無垢! 白いキャンパスを俺色に染めてやるゼ! ヒャッハァーッ!!」だとか「うふふ! この筆おろしする時の固い感触がたまらないのよねぇ!」だとかいう、もぎたてほやほやのみに絞る諸兄諸姉。

あるいは「これまで培ってきたであろう数々の技巧、豊富な経験。そう、今迄の全てをこの身に受け止めたい!」だとか「その燻した銀の金棒で、あたしをぐちゃぐちゃに掻き乱してー!」という、熟成を通り越して発酵食品にしか目がない諸兄諸姉もいらっしゃることだろう。

そんな対極でありながらも、完全無欠無双な、いや夢想のみに許された神々の頂にいる諸兄諸姉もいらっしゃることだろう。


 勿論、当人の年齢如何によって好みの変化もあろうし、そしてあくまで趣味趣向として「二次元に限る」方もいらっしゃることと思う。

そんな中、僕は何と言えばいいのだろうか。確かに先にも以前にも述べた通り、年上の方が好みの傾向にあると思う。それは実年齢云々というより、少し僕より先にある経験からくる落ち着き、「安定感」というものを求めているだけなのかもしれない。例えるならばユイ先輩その人のように。

その反面、僕はまだ未成熟な「可愛さ」にたまらなく心奪われることがある。姉の職業や趣味の影響もあるのかもしれないが、ちびキャラ的なマスコットが好きだったりだし、子猫や子犬は勿論のこと概ねの小動物が好きだったりだし、幼女を見ると愛でたくなったりする。しないが。

誤解の無いように言っておくが、そこに性的興奮を覚えるということではない。純粋に「可愛い!」と思うだけなのだ。「無茶苦茶にしたい!」って思うだけなのだ。重ね重ね、しないが。


 ただそんな自分に混乱するときがある。いま正にその時を迎えている。


「私が千条だ。君の話を聞こう、幌谷ビャクヤ。」


 なんだこの威風堂々とした幼女は。

凛としてるのにあどけなさ満載で可愛いとか! 凛萌えか!!




 ……、話は十数分前に遡る。

僕とニコナは二体の中鬼、蛙水と兵跡討ち損じていた。いや、力量からしたら辛くも退けた、という方が正確なのかもしれない。当然、被害がなかったわけではない。幸いにして僕らも一般人にも死傷者は無かったが、場の混乱を避けられたわけではなかった。

それもこれも鬼側、蛙水らのゆとり、気まぐれ、「視察」だかなんだかによる手抜きの結果に他ならなかった。まして大鬼らしき男を見止めたにもかかわらず、それをあらためることすらできずにただその逃走を見送っただけに過ぎない。

闘いの終盤にニコナの様子が豹変しかけたが、あれが以前ミスミが言っていた「暴走」というやつなのだろうか。正直な話、あれが切っ掛けで事が見送られたとは思いたくなかった。


 人は確かに覚悟や決意、「腹をくくる」ことによって飛躍的に成長するものだと思う。だが否応なしに、自身の決断に関わらず進む先に心が付いていけるものだろうか。僕はそんな決断をする世界にニコナを引きづりたくはなかった。


 そんなことを考えながら人だかり、騒然とするコーヒーカップのアトラクションから逃げるように、ニコナの手を引いて足早に歩いていた。どこに向かうだとか行くだとかではなく、ただ離れていった。



「遅くなりすみません。……、ご無事で何よりです。」


 後方から追いついたミスミが背中越しに声をかけてくる。


「うん、大丈夫。

 ただ無事とは言い難いかもしれない。結構、派手に暴れた、暴れられたし。

 ミスミちゃんの方は?」


 遅くなったってことは何かしらのトラブルがあったのだろうか。


「中鬼、荒渡ともう一人、山羊の面を付けた者と遭遇しました。

 佐藤さんの助力により被害は14%ほど。最小限に留まり抑えられましたが、討つことは叶いませんでした。それとて時間稼ぎをされただけに過ぎないのかもしれません。

 ニコナさんのご友人は最優先で保護しましたからご無事です。」


「ありがと、ミスミさん。こっちは全然だめだった。」


 ニコナの短い回答に、ミスミがニコナの様子を横目で見る。

つられるように僕もニコナを見たが、友達が無事であったことに安堵しつつも、その表情は色々な感情が入り混じり複雑な心境が顔に現れていた。


「でも負けたわけじゃない。」


 僕は先程までの状況を打ち消すように呟いた。



 つか、なんだ! ウズウズは! サンバ・カーニボォーかっ!!

少し離れたところを歩くウズウズへと視線を流した僕につられるように、今度はミスミがウズウズへと視線を移した。


「……まさかあれほどのポテンシャルとは、ボクも想像していませんでした、86%」


「……いや、何というか、色々と規格外だ、ウズウズは。」


 ウズウズが今まで以上に派手な出で立ちでとぼとぼと歩いていた。

だが、あぁ、何と常夏で陽気な雰囲気と真逆なオーラか。そもそもウズウズがサンバとか踊れるようには思えないのだが。



 ミスミに促され、雑踏を避けて裏道のようなところへと入る。


「幌谷くん。鬼の出現を懸念してはいましたが、想定していませんでした。そこはボクの過失です。

 ですが、作戦コード・フェリスは再開され継続中です。」


「そっか。

 いやま神出鬼没って言うぐらいだしなぁ。想定外なのはしょうがないよ。

 ん? 鬼は没するのか?

 つかここ、スタッフ専用とかじゃないの? 怖い人たちに怒られない?」


 と言うや、角を曲がったところで二人の大柄なスーツ姿の男に道を阻まれた。

そのレスラー並み、ラガー並の体格に一瞬「鬼か?」と身構えたが、鬼の気配はしない。むしろ外国人選手だ。いや要人警護のSPだ。

スタッフ通路はVIPルートであったりもするわけだが、言った矢先にフラグ回収って!

嫌な予想をしたり、口に出したりするべきではない……



「あー、アー、

 ワッ(ツ)? ショウ・ベーン!

 イッ(ツ) ティ(ク) クール・デェーイ!」


 厳つい。無言が厳つい。

何時ぞやの金剛の兄貴たちを思い出す。いや、兄貴たちより一回りも二回りもでかい。

拉致られる予感が脳内に浮かび上がるのを押しとどめ、僕は片言の言い訳を残し、踵を返そうとした。


 二人の厳つさに目を奪われていて気が付かなかったが、その二人の間から小さな影が歩み出る。



「私が千条だ。君の話を聞こう、幌谷ビャクヤ。」


 僕の前に現れたのは千条。W&CのCEO、千条と名乗る幼女だった。

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