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COLORS  作者: ノワール
第一章 黒の街
2/3

リュティ


教会の裏口は小屋から目と鼻の先だった。足を踏み入れると、その神秘的な姿に心を打たれる。

全てが黒で統一された世界だというのに、窓から差し込む光が、眩いほど輝いていく。

…そして、一際目立つ女性の像が目の前にあるのに気付く。銅像…にしては黒すぎる。

錆びたのか。それとも元々黒いのか。

この教会の中で一段と黒に光るその女性の像は何故か色鮮やかに光っていた。

彼女の顔に、体に、足元に散らばる色 色 色。

「彼女は…」

「【リュティ】。君さ」

「え?」

ルーノの答えに目を見開く。

もう一度彼女を見るが、彼女は目を瞑っているため顔が似ているかなんて

判断のしようがないし、正直、似ていないと思う。

「君の話をする前に、彼らの話をしよう」

そう言って【リュティ】の頭上を指差す。

そこだけ天井が丸く出っ張っており、六つのステンドグラスがそこに光る。

…そうか。彼女が色鮮やかに光っていたのはこのステンドグラスの光…。

「彼らは【黒の神子(みこ)】である【リュティ】、君と共に

世界を救った戦士達(COLORS)さ」

「世界を救った戦士…」

目を奪われるような色鮮やかなステンドグラス。

…でも、何故かその場所は他からは見えにくく、まるで

見てほしくないとでもいうような…。いや、考えすぎているかもしれない。

「【赤の剣士】【緑の魔導師】【青の勇者】

【紫の踊り子】【黄の音楽家】【黒の神官】」

「全部色の名前が?」

「あぁ、この街は黒の街と言われているが

他にも青、赤、緑…戦士たちの名前は故郷の色から付けられている」

私はマジマジとその戦士たちの姿を見つめる。

全員が浮かべるその表情は優しいものの、何故か悲しく見える。

上手く表せない感情が、それを見ていると浮かんでくる。

「ルーノ」

「ん?」

「彼らは今…」

「ずいぶん昔の話だからね」

「…そっか」

【リュティ】がまるでこの教会の偶像のよう。

それは彼女がこの世界からいない証でもある。そしてその彼女と共に戦った戦士たちもまた…。

「あれ?でも、彼女が英雄なんでしょう?」

「そうだけど」

「【青の勇者】がいるのはおかしい」

「…あぁ…名ばかりの勇者さ」

「え?」

「彼は結局誰も救えない」

ルーノの表情が曇る。

「ルーノ?」

「結局この世界を救ったのは、君なんだよ。【リュティ】」

ルーノの言葉に息をすることすら忘れる。

…彼は一体何を見てきたのだろうか。そして【リュティ】って一体何者?


私は一通り教会を見て回ると、小屋へと戻った。

「これから君はここで暮らし、ここで過ごすんだ」

「ここで…」

何度か瞬きをする。目の感覚も、手の感覚も、足の感覚も

夢だってある現象で、これが夢なのだと言われたのなら夢だろう。

それでも、これを夢だという者はいない。これを夢だと思わない自分がいる。

「私、ここで生きていいの?」

思わず出た言葉が、本当はずっと出したい言葉だったのかもしれない。

「もちろん」

彼は微笑んで私を抱きしめる。

人の体温がこんなに暖かくて、優しくて、幸せなものだと私は気づいた。

私は知った。受け入れられることがどれだけ暖かいものか。

(あの頃の私は死んだ)

もう二度と戻ってくることはないだろう死んだ私。

私は、【リュティ】として生きて行く。

「さぁ、敬語はいらないからさっさとご飯を食べてしまおう」

「うん!」

彼の金色の瞳が、教会にあった優しい笑顔の【リュティ】が

この世界が全身で私を受け入れてくれる。

私は【リュティ】として生きて行く。


✞・✟


彼女は




朝が苦手だった。

朝食を食べるのが好きではなかった。

朝から動くのが嫌いだった。

ずっと寝ていたかった。

昼は光を拒むカーテンの下で寝ていた。

夜は眠ることができなかった。

勉強することが嫌いだった。

音を聞くことを拒んでいた。

全ての世界が灰色だった。

学校に行くことが嫌いだった。

友達が嫌いだった。

人を信じるのが嫌いだった。

誰からも理解されなかった。

誰も信じたくなかった。

いい子ちゃんでいた。

人に嫌われたくなかった。

誰も心から好きになれなかった。

自分が嫌いだった。




彼女は

死んだ。




そして

私が

生まれた。


先日、偏頭痛で寝込みました。

寒くなりましたね。朝寒くて布団からはみ出すことができません。

靴下履いて寝ることを決意しました。

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