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9話 楽園へと続く門

今回も少し長めです。

「これで良しと」


『銀斧振い』の灰を入れた小瓶を懐に入れパラケルススは言う。


「やっと終わりましたか。じゃあ早く薬草探しの続きをしましょう」

「そうだったね。だがこの階はもう駄目そうだ」

「ですよね…」


神殿の地下はマリヤが使った『深紅色の魔法玉』とパラケルススが発動させた魔法とで広い範囲が焼き払われてしまっている。もう探している薬草どころか雑草すら灰になっているだろう。


「そこでだ。神殿の更に下に行こうじゃないか」

「もっと下に行くんですか!?危ないですよ!わたしは行きませんよ絶対!!」


『銀斧振い』に襲われて危うく殺されかけたこともあってマリヤはパラケルススの提案に猛反対する。


「次に魔物が出てきたときは魔法で頭を吹き飛ばす。だから安心したまえ」

「確かにそれなら安心ですけど、頭を吹き飛ばすって……」


彼の物騒な魔物の撃退方法にマリヤは引いてしまう。


「嫌なら無理についてこなくてもいいさ。神殿の一階で待っていると良い」

「あっ!置いていかないでくださいよ~!!」


ふらりと歩き出したパラケルススに彼女は慌ててついて行く。




「パラケルススさん…さっきはその…あ、ありがとうございました。…助けてくれて」


神殿の更に地下へと続く階段を下りながらマリヤは自分の先を行くパラケルススに先程助けてもらった礼を言う。


「ああ、そんなに気にすることはない。一応君はお客様だ。少々私の足を引っ張ったりもするが」

「うぅ~…そのことは言わないでください…」


先程までの自分のことを思い出してマリヤは恥ずかしくなってしまう。


「それに君。こんな人間に助けられたなんてと思ってもいるだろう?クッククッ!」

「何でそこまで解っちゃうんですか!?というか人の傷口を抉るのはやめてくださいよ!もお~!」


マリヤの心を読んだかのように言い当ててくる彼の言葉で更に恥ずかしくなって、両手で顔を覆ってしまう。


「ククッ…昔から私は他人の心を読むことと、痛いところを突くのが得意でね。悪い癖だよ」

「絶対その癖を治すつもりありませんよね」


悪い癖と言いつつそれを笑顔で話しているので説得力の欠片も無い。


「いやいや。いつかは治すつもりさ」


(…そのいつかが来ると良いですね)


マリヤは内心でそう思い。はぁ~と溜息をする。


「ふむ…」


自分の背後にいるマリヤの溜息を聞いてパラケルススは小さく呟く。


「あっ!い、いや別に何か考えていたわけじゃありませんからね!本当ですよ!!」

「クックク…そうだね信じるとしよう」


心をまた読まれたと思って慌てるマリヤに彼は笑みを浮かべながら言う。


「絶対信じていないですよね!?」

「いやいや、君を信じているさクククッ…」




神殿の更に地下の階はこれまで二人がいた階よりも薄暗く視界が悪い。だがパラケルススはそんな場所をまるで地図でも持っているかの様に目的の場所を目指し迷いなく歩いていく。


(迷わないのはいいけど、少し早いよ~!)


つかつかと突き進むパラケルススからはぐれないようについて行くのでマリヤは少し疲れてしまう。


「この場所だ」


暫く進み続けてパラケルススは開かれている巨大な両開きの鉄扉の前で立ち止まる。


「この場所は一体何なんですか?」


鉄扉を見上げながらマリヤは彼に訊く。巨大な扉にはマリヤには解らない旧文明の文字や模様が刻み込まれている。だが彼女でもここ場所が神殿の中でも特別な場所なのだろうとはなんとなくは解る。


「それはこの部屋の中に入ってからのお楽しみだ」


そう言いパラケルススはマリヤに来るように手招きする。


(大丈夫だよね?)


少し不安になりながらも彼と共に巨大な鉄扉をくぐり部屋の中に入る。


「えっ!…これって……」


マリヤは部屋の中の光景に驚く。薄暗い部屋中はとても広く、奥まで広がっており床と壁にはくぐって来た鉄扉と同じように文字と模様が刻まれいた。だが彼女が最も驚いたのは部屋の中は何も無くガランとしていることだ。


「ええーーー!!ちょっとーーーー!!」


マリヤの叫び声が部屋の中に響き渡った。




「どういうことですかパラケルススさん!?何にも無いですよね!ねぇ!?」


何も無い部屋の中を指差しながらマリヤはパラケルススに詰め寄る。


「まぁ~落ち着きたまえよ君。この部屋に『呪い祓いの白草』があるなんて私は一言も言っていない」

「じゃあなんのために?」

「中央の床を見てみるといい」

「はあ…床ですか?」


パラケルススは二人が立っている先の部屋の中央部分の床を指差した。マリヤは彼が指した方向に視線を移す。するとそこの床の部分だけ文字や模様と共に大きな魔法陣が刻まれているのを彼女は見つけた。


「これって魔法陣?」

「正解だよ。では来たまえ」


そうマリヤに言いってパラケルススは魔法陣へと近づく。そして彼はその場でかがみ込んで床に刻まれた魔法陣の一部に手で触れる。


「あの~なにをしていているですか?」

「これは今、私の魔力を少しばかり魔法陣に流して起動させている所だ」


後から歩いてきたマリヤの質問に彼は答える。


「かつては常時機能ていたらしい。だが長い時の中で劣化してしまい、こうやって誰かが魔力を流さないと動かない。ふむ…これで動く」


そう話しながらパラケルススは立ち上がる。今まで彼が触れていた魔法陣の部分が青白く光り始め、魔法陣全体へと広がっていく。そして魔法陣全体が青白い光でくっきりと浮かび上がる。


「もしかしてこれは転移の魔法ですか?」

「その通り!この広い部屋にある物体を全て転移させることができる大規模なものだ。」


転移魔法陣の青白い光はより輝き、魔法陣だけではなく壁や床に刻まれた文字と模様も同じ様に光だし、部屋の中が青白い光で満たされる。


「きゃっ!…眩しい!」


マリヤは青白い光に目が眩んで咄嗟に片手で目を光から遮る。パラケルススが使った転移魔法の光とは比べものにならないほどの眩しさだ。


「さっ転移が始まるぞ」

「こんなに大きな転移魔法で、どこに転移するんですか!?」

「これはかつての旧文明人たちにとっての門だよ。そして行先は彼らにとっての楽園だった場所さ」


彼女の疑問にパラケルススが答えたと同時に、転移魔法が発動し青白い光と共に二人の姿は消え去った。そして転移魔法陣のある部屋は光が失せ再び暗闇に包まれる。

最後までありがとうございました。

最近本文の書き方はこれで良いのか?と迷走気味です。どういう書き方が一番良いんだろうか…。

次回は短めの番外編の予定です。


読んでいて誤字や脱字その他気になることがありましたらご指摘をお願いします。

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