5話 イピュラの神殿
王たちを倒しに行って更新が遅れてしまいました……。
9月9日追記:見やすいように本文を修正しました。
「すごい…!神殿の中って、とても神秘的ですね」
イピュラの神殿の入口をくぐって目の前に広がる光景に圧倒されながらマリヤは言う。
神殿の内部は規則正しく石像や柱が並んでおり、崩落した天井から差し込む光で照らされどこか神聖な雰囲気に包まれている。
「確かにね。私もこの場所に初めて来たときはそう感じたよ」
「ですよね!こんなに綺麗な場所がオルタフス王国の近くにあるなんて」
パラケルススの言葉に少し興奮気味にマリヤは言う。
「あれ何だろう、石碑?」
マリヤは少し離れた場所に石碑を見つけて駆け寄る。
「…何て書いてあるか読めない」
石碑には彼女の知らない文字が刻まれており全く読めない。
「あぁ~これは旧文明の文字だよ。この神殿を建てたのは旧文明人だからね」
パラケルススが後から歩いてきながら言う。
旧文明とは今よりも遥か昔にあった高度な魔法文明のことで、ある日突然全てが滅んだといわれている。曰く神に挑み敗れ、その罰として跡形もなく滅ぼされたのだと。
「えっ!?この文字読めるんですか?」
「無論ね。ちなみにこの石碑は神殿に無断で入る者に対しての警告が書かれている」
「なんて書いてあるんですか?」
「あぁ、教えてあげよう。簡単に言えば、『資格の無い者は立ち入るな、入ったら体を粉々にするぞ。』みたいな感じだ」
「えぇ…そんなことが書いてあるんですか…聞かなきゃよかったかも」
興味本位でパラケルススにきいてしまった事をマリヤは少し後悔した。
「この神殿は旧文明人にとっては重要な場所だった。だから自分たちの身内以外の者に入らせるわけにはいかないだろう」
「そんなにこの場所は重要だったんですね」
「まぁ~、とは言っても重要なのはこの神殿の最深部にあるもので、他は飾りのようなものだよ」
「えっ?そうなんですか」
「あぁ、そうだとも。だが今はその話よりも魔法薬の素材探しが先だ」
「あっ…すみません。そうですね」
話が逸れつつあったのでパラケルススは話を切り上げる。
「それで探す素材って何でしょうか?」
マリヤはパラケルススに尋ねる。
「探す素材は『呪い祓いの白草』だ。その名称の通りに呪いの類を打ち消す効果がある。見た目はそのまま白い草だ。その辺りに生えている雑草とは簡単に見分けがつく」
「白い色の草ですね。わかりました!わたしはどの辺りを探せばいいですか?」
「私は神殿の下の階層を探しに行ってくから、君はこの一階部分を探してくれ。あぁ、そうだ。これを渡しておこう」
パラケルススは簡単な説明と探す場所の指示をマリヤにした後、思い出したように彼は懐から小さな赤色のガラス玉のような物を取り出して彼女に手渡す。
「これはなんですか?」
マリヤは手渡された赤色のガラス玉を光にかざして眺めながらパラケルススに言う。
「それは『深紅色の魔法玉』だ。魔物と遭遇した時に護身用に使うといい。一度限りではあるが、魔法の使えない者でも容易に強力な魔法が放てる魔法道具だよ」
「なんかすごい道具ですね」
「いや、性能は高いがほぼ失敗作だね」
「え?どうしてですか?」
マリヤはパラケルススの言った失敗作という言葉か気になり彼に訊く。
「それは衝撃に弱くてね。ちょっとした拍子に最上位の炎魔法が発動して辺り一面焼け野原になってしまうのがね」
「えぇ~!!そんな危ない物を私に手渡さないでくださいっ!!…て…あれ?いないっ!?」
マリヤはパラケルススに訴えるが彼の姿は消えてしまっていた。辺りを見渡しても何処にもいない。そうしていると何処からかパラケルススの声が神殿内に響き渡る。
『まぁ~、そう言うわけだから使用には十分に気を付けてたまえ。私は地下を探すから一階は任せたよ』
それっきりパラケルススの声は聞こえなくなってしまった。
「…はぁ~仕方ないけど探すしかないか……。これ…い…いきなり魔法が発動したりしないよね?」
マリヤは少し不安になりながらも呪い祓いの白草を探し始める。
最後までありがとうございました。近い日に1~5話の文章の修正を行います。それと自己満足になりますが、次は解説回にしようと思います。
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