2話 在庫無し
文章の書き方を少し変えてみました。
4月4日追記:本文の修正を行いました。
9月9日追記:見やすいように本文を修正しました。
「ふ~むつまり市街に迷い込んできた小型の魔物に噛まれ呪毒に冒されて意識不明とね」
店主は少女からことの経緯を訊き頷きながら話す。
「はい。すぐ近くにいた王国兵の方が気付いて治療院に運んでもらったのですが、治療院の先生は治すための魔法薬はここにはないと……」
「だろうね。呪毒をもっている魔物なんて普通はこのオルタフス王国の辺りには生息していないからね。呪毒を癒すための魔法薬が常備されていなくてもおかしな話ではないだろう」
「それで治療院の先生に訊いたらこのお店ならあるかも知れないと言っていたので」
「まぁ~確かに呪毒を癒すための魔法薬はこの店にあるよ。だが、治療院での治療代よりも魔法薬の方が高くつくのは君も知っている筈だ。それに呪毒なんて五日程寝れば自然に治るものだよ?」
店主は当たり前のことを少女に言う。
「それは治療院の先生も言っていました…だけど…」
「だけど何だね?」
「弟が苦しんでいるのが辛そうで、何とかしてあげたいんです!だから呪毒を治す魔法薬を譲ってもらえないでしょうか」
少女は店主を見つめ必死に訴えた。店主はう~むと暫く考えてから口を開く。
「魔法薬を君に売ってあげよう。値段は金貨40枚、それでも良いかね?」
「本当ですか!?あ…ありがとうございます!!」
「しかしね……」
店主の言葉に少女は喜ぶが、店主は話を続ける。
「しかし?何でしょうか?」
「残念ながら呪毒を癒す魔法薬は今は在庫がなくてね。最近は錬金の研究ばかりしていて商品用の魔法薬を作っていなかったんだよ。いやいや悪いね」
「えぇっ!!」
店主の言葉に少女は驚き、思わず店主の胸元を両手で掴んでぐらぐら揺らしながら問いただす。
「そそ…それってどういうことですか!せせせ…説明してください!!」
「うごぁ!!君…離さないか……」
「離しますから説明してください!!」
「じ…実はね…先程君に見せた『万物溶かしの緑水』の作製を素材の回収を含めてここ半月程やっていてね。他のものは何も作っていなく……」
「えぇっ!?それってお店としてどうなんですか?ねぇ!?」
店主のとんでもない発言に更に驚いてもっと強く、ぐらんぐらんと揺さぶる。
「わ…わ…私は殆どこの店はしゅ……趣味でやっているようなものだから、客が来ても来なくてもどうでもいいことな……ぐへぇ!!」
「どうでもいいわけないです!!じゃあ!弟を助けるための魔法薬はどうするんですか!?」
「だから…それ…は今から……説明す…するから…。はは…離したまえ……」
「はわっ!!すみませんっ!!い…今離します!」
今にも気絶しそうになっている店主の言葉で我に返り少女は掴んでいた店主の首を離す。
「ふ~…さて話の続きだが、先程言った通り魔法薬の在庫は無い」
「それは分かりましたから、どうするんですか?」
「今から素材を集めて錬金術で作るんだよ」
「本当にですか?」
店主の話を少し怪しいと思いながら少女は言う。
「本当だとも。君は私を疑っているのかね?」
「疑っているわけではありませんけど…その……」
少女は先程の店主とのやりとりから不安になっていた。それに冷静になって店主を見てみると本当に治療院の先生が言っていた錬金術師なのか?と疑問に思ってしまう。
治療院の医師が着る白衣のような服を着て眼鏡をかけ、長い髪を後ろで適当に束ねていて見た目はそれらしい。知的な感じもするが相手を常に小馬鹿にしているような人間の雰囲気がある。そして何より若すぎる気がする。錬金術を正確に使いこなせるようになるには長い時間が必要になるといわれている。だから高い技術を持つ錬金術師は殆どが中年から高齢の者のはずである。
(う~ん…もしかしてお店を間違えたのかな)
そんなことを少女は内心で思う。
「君、先程から黙ってどうかしたのかね?」
「あっ!すみません。少しぼーっとしちゃって…あはは……」
店主の言葉に少女は笑って誤魔化す。
「ふ~むならいいがね。まるでマンドラゴラみたいな間抜けな顔をしていたがねクッククク…」
「えぇ!そっそんな顔してませんよ!!」
「ククック……中々にそっくりな顔だったと私は思うがね」
「しーてーまーせーんー!!」
店主のからかいに少女は顔を真っ赤にして否定する。
(むむ~!ほんとに大丈夫なのかな?この人……)
最後までありがとうございました。
文章の書き方は試行錯誤中なのでまた変わると思います。
誤字や脱字、気になることがありましたらご指摘をお願いします。