1話 錬金屋へ
過去に書きかけだった話をベースに自分の動かしてみたいキャラを中心にして書いていこうと思います。
4月4日追記:本文の修正を行いました。
9月9日追記:見やすいように本文を修正しました。
王国の西街、賑やかな通りから外れた場所の店の前に少女は立っていた。
「ここが治療院の先生が言っていた、錬金術師の人がいるお店ね…」
一人ぽつりと呟いて店の扉に掛けられた看板を見る。
『錬金屋 輪廻の蛇 ~どのようなものでもお作り致します。お気軽にどうぞ~ 』
「う~ん、本当にお店やっているのかな?」
扉の窓越しに店の中を見ても薄暗く、見えるのはせいぜい入口近くにある魔法薬がびっしりと並べられた棚程度で人が居そうな気配はしない。
(でも…弟を助けるには、このお店の錬金術師さんを頼るしかないから!)
少女は心の中で覚悟を決めて店内に入った。
「うっ…!何だろうこの臭い…」
扉を開け店内に入った途端にツンと鼻を衝く臭いがして、一瞬立ち止まってしまう。
(魔法薬の臭いかな?棚に沢山あるし…てっ…ええっ!?)
近くの棚に並んでいる魔法薬を見て少女は驚く。
『永遠の眠り薬 -ブルースネークの麻痺毒と、黄泉送りの大鷲の爪から抽出した強力な睡眠成分を合わせた死ぬまで眠れる薬です。- 金貨230枚 』
主に魔法薬の説明と値段に。効能がおかしく、しかも値段はギルドで支払われる凶暴な魔物の討伐報酬並である。
(ほかの商品も金貨60枚とか125枚とか高価なものばっかりだよ…。う~っ…どうしよう薬の値段が高かったら…そんなにお金持ってきてないのに…)
少女が悩んでいると奥の方からガチャリと扉が開く音がして足音がした。
(あっ!お店の人?)
音のした方向を振り向くと、奥のカウンターに店主らしき人間が立っていた。ここからでは暗くて顔まではよく見えない。
「ふ~む、君みたいなお客さんは珍しい」
そう呟いた店主に少女は声をかける。
「お店の人ですか!あっ…あのっ!頼みたいことがあって……」
「あぁ、大丈夫だ。君が言いたいことは分かっているよ」
店主はスッと手をあげて少女の話を遮り話す。
「君の様な若い娘がこの店を訪ねて来るということは余程一大事なことだろうね」
「そっ…そうです」
(えっ!もしかして魔法かなにかでわたしの考えを読み取ったの?)
店主が自分の事情を知っているようで少し驚きつつも答える。
「では当ててあげよう。君がこの店に来た目的は……」
「友人か誰かに彼氏を盗られたんだろう?」
「えぇ……?」
得意げに言う店主の言葉に少女は困惑してしまう。
「それで君は彼氏を盗った友人と自分を裏切った彼氏に復讐をしたいから、ここに強力な毒薬を買いに来たんだろう?」
「い…いえ、違うのですが…」
だが店主は勝手に喋り続けている。
「なら丁度面白い毒薬がある。これは『万物溶かしの緑水』といってね。君も知っているとは思うけれど、狭間の谷の先、魔族達の領域である濃霧の樹海に自生する大型植物の飛竜呑み。それが体内で生成する非常に強力な溶解液を錬金術でコウテツオオアリの酸液やその他毒素を溶かし合わせて生成した毒薬だ。効果は私が保証しよう、なぜなら高純度のアダマンタイトを欠片一つ残すことなく綺麗に跡形もなく溶かしたんだからね!クッククッ……素晴らしいだろう君?旧文明の遺産にも用いられているあの絶大な硬さを持つアダマンタイトをだ!つまりこれを使えばどんな物も跡形もなく溶かすことができる。だから証拠も残らず君が罪に問われることもない。しか~し、これを完成させるのにはかなり時間が掛かったよ。素材を集めるのに魔導都市アブカフィアに忍び込んだり、国の指定禁止地帯に入ったりして騎士団に追いかけ回されるはギルドの賞金首にされるはで大変だったよ…。だ~が、特に面倒だったのが飛竜呑みを見つけることだね。私が濃霧の樹海に行く少し前に魔族側からギルドへ飛竜呑みの駆除依頼が出ていてね、ギルドの冒険者共がほとんど駆除し尽した後だった。お陰で回収に手間取ってしまったよ…まったく、価値の解らない愚か者共の愚行には呆れるばかりだよ……。あぁそれとね入れるための容器も通常の物では駄目だから少し工夫が必要だったんだよ。そのまま入れしまうと容器を溶かしてしまうだけだからね、容器に使用する素材に多少特別なウンタラカンタラ…ナンヤラカンヤラ……」
「もぉー!全然違いますし!!話が長いっ!!」
店主の余りにも的外れで長すぎる話に我慢出来ず少女は声を荒げる。
「あっ?そうか悪かったね。じゃあ家族を殺された敵討ちかな?それならこの『不死鳥のかえん…』」
「で す か ら ち が い ま す か ら !!」
また的外れなことを喋り出したので大声で遮る。
「違うのかい?」
意外だなといった声で店主はきいてきた。
「もう私が話しますから少し黙っていていて下さい」
(はぁ~…本当にこの人頼れるのかな……)
そんなことを少女は内心で思いながら店主に事の経緯を説明し始める。
最後までありがとうございました。
自分の書いてみたいように書くのが一番楽なのだと思いました。
誤字、脱字等ありましたら指摘をお願いします。