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朽ちた聖剣

最近文が単調な気がする

 現在ランスロットとヴィヴィアンは、森の最深部に来ていた。ランスロットはあることを思い出す。この森は奥に行けば行くほど、神聖さが増すのだ。現に森の最深部は、とても幻想的で心が奪われるくらい美しかった。

 光彩陸離こうさいりくりな光景が目の前に広がっている。ランスロットが、枝葉の隙間から差し込む光の柱に触れると僅かに暖かい。

 ここにいるだけで、心が安らぎそうだとランスロットは思った。更に二人は奥へと歩く。

 最深部の中でも最も奥の場所へと向かう。

 ここまで無言だったヴィヴィアンが、急に口を開いた。


「今から行く所は、私にとっても貴方にとっても重大な場所よ。四年くらい前に話したでしょ? 」


 ランスロットはそういや、俺の前世って有名な騎士様だったんだっけと呟く。


「でもそれと俺に何の関係が」


「有り有りなのよ。今から行くのはアーサー、要は前に話したシャルロットの墓。貴方の前世の人が、最も信頼してた人よ。そして、貴方はエクスカリバーの担い手になるの」


 ランスロットはそれを聞いて目を見開いた。エクスカリバーは、史上最高の聖剣の一つである。剣身は淡い金色の光を帯びていて、一振りで三百もの敵をなぎ倒すことが出来たとされている。

 そして、二人は最奥部へと辿り着いた。

 急に視界が良くなったと思ったら、そこには一本の剣が台座に刺さっていた。

 それこそがエクスカリバーであり、最強の剣。

 しかし、ランスロットが想像していた物とは真逆だった。

 錆びついていたのだ。シャルロット・ペンドラゴンが、戦場を馳せていた時の輝きなどない。

 朽ち果てた剣は、決して長い時を経て錆びついたわけではなかった。


「エクスカリバーは、担い手を選ぶの。担い手を失うとその身は朽ち果て、私の元へと戻る。私は戻ってきた剣を台座に戻す」


 ランスロットは錆びついたエクスカリバーを見ても、なぜか残念な気持ちにはならなかった。


「ヴィヴィアン。こいつは俺を待ってる」


 不意に呟いた。


「え? 」


 ヴィヴィアンは理解が出来ずにいた。ランスロットは、フラフラおぼつかない足どりで台座まで行く。


「なあ、聞いてくれよエクスカリバー。俺は、この世界から争いごとをなくしたいんだ。それはとてつもなく遠い夢だってことくらいは分かってる。だけどよ……俺はその夢を持っちまったんだ。俺は魔法が使えない。この四年間ひたすら剣術の練習をしてきた。力を貸してくれないか? 今、混沌としたこの乱世を鎮める力を」


 ランスロットが語りかける度にエクスカリバーは輝きを増す。錆にはヒビが出来る。

 ヴィヴィアンは、両手で口を抑え涙を流す。この何千年の間、見ることがなかった光。暖かく懐かしい輝き。


「きっと、シャルロットさんも俺と同じ夢を抱えてたんだろ? でも夢半ばで生き絶えた……」


 その先の言葉を言う前にランスロットは、数秒開けた。……エクスカリバーに言い聞かせるようにそして、ヴィヴィアンに宣言するためにはっきりと告げる。


「だったら俺がその遠い理想を、夢を……継いでやる」


 その瞬間エクスカリバーにまとわりついていた錆が吹き飛んだ。放たれた煌き。流れ出す魔力の奔流に木々が風で揺れる。誰もが一度は夢をみる理想。

 だが、大抵の人はそれを諦める。

 しかし彼は、高らかにかつ自然に継いでやると言った。エクスカリバーはそれだけで十分だった。ヴィヴィアンにとっても同じだ。

 ヴィヴィアンは泣き崩れている。完全なる復活を見れたのだ。


「だからさ……俺を助けてくれ……」


 ランスロットがエクスカリバーの柄を握る。すると更に輝きが増し、抜いた瞬間。


 光の柱が天を穿いた。何百年と溜め込んだ魔力が溢れ出たのだ。壮美なる輝きを見て、ランスロットの目から一筋の涙が流れた。

 純粋な涙が地面に落ちる。

 それと同時に柱から腕が伸び、ランスロットの腕を掴んだと思ったら少女が現れた。


 金髪碧眼。歳は十六歳ほどで、美少女というに相応しい容姿をしていた。

 愛らしい顔つきに、さほど起伏もないボディーライン。真っ白なドレスを身にまとい、まさにお姫様のような雰囲気を醸し出していた。


「貴方が私の次の使い手なのね」


 それが少女の第一声。ランスロットは、唖然としていた。それに対してヴィヴィアンは、また驚きを隠せずに口をパクパクさせている。


「何で……あ、なたが……生きてるの? ……シャルロット」


 ヴィヴィアンが疑問を投げかける。その声は涙を流しすぎたせいか、かなり震えていた。


「久しぶり。……ヴィヴィアン先生。実は私、エクスカリバーと一体化したみたいなんだよね」


 そうシャルロットと呼ばれた少女は陽気に答えた。

 眩いばかりの光も今は消えている。ヴィヴィアンは、立ち上がるとシャルロットの所まで駆け寄り抱擁して出迎えた。

 それを優しく暖かい目で見守るランスロット。

 こうして、ランスロット・アルトリウスとシャルロット・ペンドラゴンの邂逅は果たされた。


 時は少しばかり経ち、あれから三十分後。三人はヴィヴィアン邸の中。各々椅子に座って談笑している。

 いつ見ても、この家は幻想的だなと思うシャルとランスロット。

 楽しく雑談をしているのだが、急にヴィヴィアンが二人に真剣な話があると切り出した。

 そして、言った言葉は。


「というわけで、ランスロットとシャルロットには、学校に行ってもらいます」


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