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あなたが描く魔法の世界  作者: かきな
竜殺しの神話
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二ページ目 紅茶のお話

 大地が震える。これがドラゴンが山から下りてきた弊害なのか。


 いや、震えているのは地面ではない。足だ。長時間歩いてきたのでもう僕の足はガクブルである。体力のない僕では、この長距離の移動はとても堪える。


 振り返り、自分が歩いてきた道を眺める。もう村を囲っていた壁や、畑さえも視界に入ってこないようになっていた。


「ま、まさかここまで長距離だとは思わなかった…」


「どうしたのだ、洋樹? 疲れたのか?」


「だ、大丈夫だよ。ははは」


 僕がこの調子だと言うのに、秋奈は疲れている素振りすらみられない。今まで、運動とかサボっていたのが祟ったかな…。


「くそう…。こんな所でつけが回ってくるなんて…」


「…良く分からんが、足に補助魔法をすればいいんじゃないか?」


 そのアドバイスは魔術師としては適切なものだろう。しかし、僕にとってそれはジャンル違いのアドバイスだった。


「い、いやあ。僕は魔法できなくてね。補助魔法とかも分かんないんだよね」


「そうなのか? でも、そのローブ…魔術師のものだぞ?」


「うぇ!? そうなの? 知らなかったなぁ」


 ローブにも種類があるのか。と言うか、律って子も分かっててこれを置いて行ったんだろうか?


「…そう言えばさ、秋奈は調律者って聞いたことある?」


「なんだそれは?」


 律と言う女の子が言っていた。自分は調律者だと。それがなんなのかこの世界の人でも知らないらしい。


 でも、その調律者が何かを知っているんだろうと言う事には気付いた。だいたい、起きた所にちょうどいた時点で疑うべきだったよね。


「いや、ちょっと耳にしたから聞いてみただけ。別に深い意味はないよ」


「そうなのか? ならいいんだが…」


 頭の弱い僕に考え事は向いていないから、取りあえず動くしかないだろうと思う。


 あ、足が震えるわ。


「やっぱりちょっと休憩してもいい?」


 現代っ子の僕には無理だった。せめて馬車とかないのかな。


「ああ、構わんよ。時間はまだある。君が言ったようにドラゴンと戦う前に倒れてしまっては意味がないからな」


「ははは。立つ瀬がないね」


 男としての役割はやっぱり僕には大役すぎたんだろうね。


 しかし、こういう世界の道中ってモンスターが出てくるもんなんじゃないのかな? よく見るRPGではたくさん出ていた。システム的に必要だからなのかもしれないけど、僕のイメージはそれなんだよね。


「流石に魔物たちはドラゴンに怯えて出てこんな」


「あ、そうか。それがあったね」


 道を外れて少し行った所に生えている木の下の影で休む。この世界の風はすごく気持ちがいい。僕の世界では味わった事がないものだった。あれかな? 風の精霊的なものがいるんだろうか。それだったらいろいろロマンがあるな。


「ふむ。何か飲むか? 紅茶ならすぐ入れれるぞ」


「あ、いいね。お願いしてもいい?」


「分かったぞ」


 皮袋から水を鍋に移す。そしてその鍋を地面に置き、手をかざす。


「ふんっ」


 すると手から、温暖色が広がってきて鍋を包んだ。するとそのまま鍋の中の水が沸騰しだす。


「(おお、凄いなぁ。これが魔法か。便利だな!)」


「あっ」


「えっ?」


 秋奈が何かを失敗したような声を上げた後、黒い物体が目の前に現れた。


「…あれ? さっきまでここにあった鍋はどこに消えたの?」


「…あるではないかそこに」


 秋奈はその黒い物体を指差して言う。


「え、この丸焦げの物体?」


「そうだ」


 瞬間的に現れたそれはどうやら以前は鍋として活躍していたらしい。


「加減を間違えたの?」


「…わざとではない」


 これドジの二言で済ましていいものなのかな?


「でもまあ、誰にでも失敗はつきものだよね」


「えっ」


「んっ? どうしたの? 僕なんか変な事言ったかな?」


 なにやら秋奈は驚いた顔をしている。


「いや、魔術師が魔法でミスしたら洒落にならんからな。普通はどなり散らされても仕方がないと言われるレベルだぞ」


 そ、そんなに厳しいものなのか…。まあ、確かに魔法ってモンスターを倒せるくらいの威力があるわけだし、それを扱っている人間が暴発させたら、危ないじゃ済まないもんね。


「でも、人間だし失敗するのは当然の事だと僕は思うんだけど…。それは間違っているのかな?」


「いや、そう言う考えの人間が居てもおかしくはない。ただ…そう言ってもらったのは初めてだ」


 頬を赤らめて頭を掻く秋奈。風に揺れる髪と相まって、その…物凄く…


「(かわいいいいいいいいいいいい)」


 発狂寸前になってしまった。だめだ、女の子に免疫のない僕がこんなにも女の子らしいものを見せられたら死んでしまう。いや、むしろ死んでも本望だ! これで死ぬと言うのならそれはとても安らかな死に顔で僕は天に召されるだろうさ。いや、それぐらい僕は免疫がないんだよ。


 と、悶えていたのだが、ハッと我に返って目の前の鍋を見た。


「このお湯は使えないね」


「そ、そうだな」


 せっかく沸かしたお湯だけど、黒焦げになった鉄が浮かんでいて、流石に飲む気にはならなかった。


「いっそアイスティーでよくない?」


「アイスティー? しかし、それではお茶の葉が開かぬぞ?」


 目の前に出されたのは数枚の葉っぱ。そう。そのままの形の、加工されていないものだった。


「いや、それそのままの葉っぱじゃない?」


「?」


 僕が言いたい事が秋奈には伝わらないらしい。


「いや、つまりね。紅茶にするためにはそれをいろいろしてからじゃないとだめなんだよ?」


 正確に言うと、生産→萎凋→揉捻→玉解→篩分→揉捻→発酵→乾燥という過程がある。あ、wikipedia参照ね。


「こ、この葉ではだめなのか?」


「うん。駄目だと思う」


 唖然とする秋奈。その沈黙は何を表しているのだろうか。僕の予想では…


「昔から、この方法で飲んでいて何か違うと感じていた」


「なっ、なぜわかるのだ!」


 やっぱりこの方法を昔からやっていたんだ…。なんて言うか世間知らずの御嬢様っていう表現がしっくりくるような気がする。


「一つ賢くなったね」


「う、うるさい!」


 魔法が一流のこの娘も普通の女の子だね。改めてそう思った。


ご閲覧ありがとうございました。次回もどうかご贔屓におねがいします


ドラゴン前の休憩シーン

前のあとがきで長さの話をしましたが、短く切っていくことにします

戦闘とかは長くなるかもですが、こういう所は区切れるだけ区切って聞こうと思います



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