-終わり-
翌日、銀さんと蛇鬼により、ポールは警察へ連行された。
後で話を聞くと、ポールは蛇鬼の恐ろしさに比べれば、独房の方がまだまし、と言って自首したらしい。
テレビのニュースでは『数年前、不法入国で逮捕された脱獄囚が、殺人の容疑で再逮捕』と出ていた。
それを見ているとき、丁度銀さんが家にやって来た。
「凄いことになってますね」
「あぁ。でもいい修行になったな」
「死にかけましたよ!」
「悪い」
ちょうどそんな会話が終わったとき、ポールの紹介が始まった。
どうやらポールというのは偽名らしい。
「某がポールに名前を聞いたときに『本名ハ皆ガ知ッテイルカラポールニ変エタ』って言ってたな」
「確かに、全国指名手配されてたら自分の名前いらなくなりますよ」
「そうだな……。あとポールさぁ、某と生活してた時も人を二人殺していたらしい」
「殺されなくて良かったですね」
「あぁ」
何だかあのスリルの有り過ぎる生活から脱出した後なので、どんなことでも平和に感じられる。
ただ思う。生きて帰って来れて良かったと。
そして、実感したことがある。俺は本当にヴィーナスを好きなんだと。
あの死の恐怖に怯えていたときも、思い出すのはヴィーナスの事だった。
この気持ちを大切にしたいと思った。
あ、そういえば……忘れていた。
「銀さん。銀さんにあの場所を教えてくれたのはポールですか?」
「いいや。他の友人だよ」
「そうなんですか……」
俺は、あんな恐ろしい山でサバイバル生活をしたというその人に憧れを持っていた。
あの恐怖の中にいたせいで忘れていた存在を思い出した今、俺は、その人に会ってみたいと思っていた。
「そいつに会いに行こうか?」
「え? ……はい!」
銀さんには通じていた。俺は何だかんだでこの人とは馬が合うと思った。
ただこんなにもすぐにこの人とは馬が合わないと思うなんて、思いもよらなかった。
俺は銀さんに連れられて、その銀さんの友人に会いに来ていたのだが、俺は銀さんのいう友人を見て唖然とした。
「銀さん? 何かの間違いじゃ……」
「間違いじゃないよ! 某が言った名前と一緒だろ?」
確かに名前は合っている。間違ってない。でも間違っている。
「某が思うに、あの会話が最後の会話になったんだな。勇敢な男だったよ」
俺と銀さんの目の前にいるのは、光沢のある長方形の石で、属に言う墓石ってやつだ。
「その友人……お亡くなりに?」
「あぁ。今でも覚えている。あれは、ある日の夜中だったな。某が住んでいる部屋の窓を叩く奴がいて、外に出たらこいつだよ。傷だらけでな。どうしたのかと聞いて見ると『サバイバル生活していただけ』って言ってあの場所での生活を書いた日記をくれたんだ。腹の傷がまるで熊に引き裂かれたように酷かったのに、よく話をしに来てくれたよ。あのパンダがやったんかなぁ? 今度はもう少し調べておくから、また一緒に……」
「もう銀さんとはどこへも行きません!」




