ラビリンス 開戦前夜
ネオンが濡れたアスファルトを照らす街の片隅。僕たちは小さな喫茶店のカウンターで、静かに並んで座っていた。明日にはそれぞれ、この複雑な都市の迷宮へと別々に潜り込まなければならない。
ネオンが濡れたアスファルトを乱反射する街の片隅で、僕たちは小さな喫茶店のカウンターに並んで座っていた。明日になれば、僕たちはそれぞれの理由で、この複雑すぎる都市の雑踏という迷宮へ別々に潜り込まなければならない。
グラスの氷が静かに音を立てて溶ける。差し出された彼女の指先が僕の袖口を軽く引っ張り、そのまま解けた糸のように離れていった。
「ここを出たら、もう迷路の中だね」
彼女が小さく呟く。恋という名前の出口を探して二人で歩き回った日々も、今夜で終わりを迎える。繋いだ手はいずれ解け、いくつもの分岐点が僕たちの間に距離を作っていくのだろう。決戦の前夜にしては、静かすぎる夜だった。
「出口で待ってる」
そう言おうとして、言葉を飲み込んだ。ラビリンスに引き返せる道などないことを、僕たちは最初から知っていたからだ。グラスの底に残った琥珀色の液体を飲み干し、僕たちは同時に立ち上がった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
静かな決戦前夜の空気感や、離れ離れになる直前の二人の切ない距離感を描いてみました。迷宮のような都市で彼らがどんな道を選ぶのか、見守っていただけたら嬉しいです。
次回からは物語が大きく動き出します。引き続きお付き合いいただければ幸いです!




