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逃亡悪役令嬢はスキル【鑑定】で強面剣士を支えたい ーただし見た目はリスザルだー  作者: 空飛ぶひよこ


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ついに解明、ギルドのレシピ!

「……よし。こんなものか」

(カットができる手先の器用なゼド様……ますます素敵)

 数時間後。ゼドに介抱されて目を覚ましたロクセラーナは、伸びすぎてモフモフの毛を、カットしてもらっていた。

「終わったのかい? それじゃあ、報酬をよこしな」

「……金の方が良いんではないのか?」

「いーや。こればっかりは譲らないよ。安心しな。悪用はしないさ」

 そう言って手を差し出すのは、素材屋で出会った不気味な老女、クスク。

 ゼドは若干怪訝そうな表情をしながらも、切り取ったロクセラーナの毛を袋に集めて、クスクに渡した。

「……まあ、水リスザルの毛は縁起物として、高値で売れるらしいからな」

 尊死したロクセラーナを、ゼドが慌てて運び込んだのは、まさかのクスクの店だった。

 「専門外ではあるけどね」とぶつくさ言いつつ、ロクセラーナが興奮で倒れただけだということと、毛が伸びたのは薬の効果によるものだから切った方がいいことをゼドに教えて、その報酬として切ったロクセラーナの毛を望んだらしい。

(ますます謎な方ですわ……ジェスチャーなしで状況を伝えられたのは、ありがたかったですけれども)

「思った以上に量があるねえ。これじゃあ、ちともらいすぎだ。オマケをあげないとね」

 そう言ってクスクが奥の部屋から出して来たのは、一枚の羊皮紙だった。炎の絵の脇には赤い丸が、水の模様の脇には青い丸がと、カラフルな絵と丸がセットで並べられている。

「……これは?」

「魔石の色の見分け方の絵だね。子どもでもわかるように、属性が絵で描いてある」

「そんなものを今さらもらわなくても、俺はどの魔石がどの属性かわかるぞ」

「誰がお前さんにやると言ったよ、【黒剣】。私は、そのお猿にやるって言ったんだ」

「うき?(私に?)」

「ついでに、魔物の生態が描かれた図鑑と、このリュックもあげようかね。【空間拡張】と【重力無視】が付与された、亜空間収納バッグだ。小さくとも、大人のカバンくらいのものは入る」

「……いや、さすがにそれはこちらがもらい過ぎだろう」

「いいんだよ。私にとって、この毛はそれくらいの価値があるんだから」

 幼児の手のひらくらいの大きさの小さなリュックは、誂えたようにロクセラーナの体の大きさにピッタリだった。小さなカバンが、倍以上の長さの丸めた羊皮紙をやすやすと飲み込む様子を驚きと共に見つめつつ、ほとんど重さの感じないそれを背負ってみる。

(うれしいですわ! これでまた毛生え薬みたいに重いアイテムを手に入れても、機動力を落とさず持ち運べますもの!)

 今までは事前情報なしに、【鑑定】で魔物の種類を学んでいたので、まとめられた図鑑がもらえるのも地味にありがたい。図鑑はこれまた小さなポケットサイズで、猿の小さな手でも簡単にめくれる重さだった。

尻尾をふりふりぴょんぴょんとご機嫌そうに跳ねるロクセラーナを、ゼドは複雑そうな目で見つめていた。

「……両方、そのうち俺が買ってやるつもりだったんだが」

「お猿に買ってやる前に、あんたは自分の亜空間収納バッグを買いな。今まではなくても何とかなってたんだろうが、これからはそうもいかなくなるよ。一人旅でなくなるんだから」

「それは予言か、クスク? それとも単なる年長者の忠告か?」

「これに関しては、干渉ってほどではないから言わせてもらうけどね。両方だよ。お前さんのこれからの旅は、今までと比べ物にならないくらい長く過酷になる。備えるに越したことはないのさ」

「……助言、感謝する」

「礼は、今日お前さんが手に入れた木竜の角でいいよ。相場より少し安く売りな」

「何故わかるんだ……ギルドに卸さないでおいた奴なのに」

「二本あるんだろ? 一本減っても困りゃしないさ」

「仕方ないな……だが金はいらない。図鑑と亜空間収納バッグ代だ」

「こだわるねぇ。よっぽど可愛いんだね。あのお猿が」

 と、ロクセラーナが聞いていたら感激のあまり再度失神しそうな会話をしていたのだが、残念ながらランドセルを買ってもらった小学生のごとく、リュックに夢中なロクセラーナの耳には入っていなかった


「それじゃあ、またおいで」

 クスクに見送られて、店を出る。ポルカと一緒の時は、フードの中で怯えていた貧民街の道中だが、ゼドの肩にいる今はすっかり無敵気分だ。

 以前ポルカに誘拐計画を持ち掛けたエンリケという男ともすれ違ったが、デーブルの話を聞いたのかゼドを見るなり、真っ青な顔で視線を反らしていた。いい気味なので、ゼドには見えない角度から、べろべろばぁ~と煽ることにする。(もっともエンリケはロクセラーナがポルカのフードに隠れていたことも知らないし、視線を反らしている時点で煽り顔も見えていないのだが……)

「ポルカの店に寄って行こう。あいつも心配していたし、お前を一匹だけにしたことを謝っていたぞ」

(それは申し訳ないことをしましたわ。もとはと言えば、私が毛生え薬の為に勝手にカウンターを出たのが原い……ん?)

「どうした? ロシィ。何かあったのか?」

 心配するゼドに目配せしてから、ぴょんと肩から飛び降りる。目指すのは、貧民街の隅っこにある、雑草が生い茂る路地裏で原っぱ。ポルカと一緒にクスクの店へ向かう道中で、【鑑定】した役に立たない植物が生えていた場所だ。

 そこで――見つけた。

(――ああああああ!!! これ、これ、デーブルの屋敷の庭に生えていた雑草ですわぁ!)


名称:ダレ草

概要: 貧民街の路地裏や排水溝の近くに生える常緑草。匂いがわずかに酸っぱい。

効果: 茹でるとえぐみが和らぐ。腹には溜まるが、後味が微妙に残る。飢え凌ぎには有用だが栄養価は低い。


『鍵は存外すぐそばにあるよ』

 脳内で、クスクが笑う声が聞こえた気がした。




(……鑑定した限りでは、何の効果もでませんでしたけど)

 ポルカとゼドが見守る中、ロクセラーナはヒル草とダレ草を、それぞれ細かく擦っていく。

 二つを混ぜ合わせた瞬間、きらりと一瞬光が現れ、脳内でぴこんと音がした。

(この光は、美容液ができた時と同じ……そしてこの音は鑑定スキルのレベルが上がった時に聞いた音ですわ)

 おそるそる鑑定して、すぐさまガッツポーズを決める。


名称:製薬ギルドレシピのCランク傷薬

概要:製薬ギルドにレシピ料をロクセラーナが再現した、ヒル草を主体に調薬した軟膏。

効果:ヒル草に含まれる消毒および止血・再生促進成分を安定した濃度で含有する。軽度の外傷に対し即効性を持ち、塗布直後から傷口の閉鎖が始まる。応急処置用途として冒険者の間で広く流通している。


「うっきいいいいい!!!(やったあ、成功ですわ!!!)」

「成功したのか、ロシィ!」

「まさかダレ草が決めてだったなんて……そんなんありっすか?」


 おそらくデーブルはヒル草を擦っただけの傷薬を、かさ増しするつもりで雑草を入れたら、たまたまギルドレシピ通りになったのだろう。

 そして不自然なくダレ草を量産するために、ダレ草栽培に最適なポルカの店を欲しがったのだ。

(でもだとしたら、最初から鑑定結果に記載してくださればいいのに)

 現在のロクセラーナが鑑定すると、ダレ草の項目には若干変化が現れていた。


名称:ダレ草

概要: 貧民街の路地裏や排水溝の近くに生える常緑草。匂いがわずかに酸っぱい。

効果: 茹でるとえぐみが和らぐ。腹には溜まるが、後味が微妙に残る。飢え凌ぎには有用だが栄養価は低い。

一部の薬草の効用を高める特性を持つが、単独では何の役にも立たない。


(鑑定結果が少し詳細になったのが、【鑑定】スキルのレベル3の効果なのかしら。そう考えると、レベルが上がったわりに大したことはない気が……ん?)

 今度はケアル草の方で試そうかと、材料を手に取ったロクセラーナは目を丸くした。

(……空中に、数字と文字が見えますわ)


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