人が変わるという病
以下は「人が変わった」事例の証言者の声である。
ケース1伯爵家子息
坊ちゃまががお変わりになられた。
お勉強では初めての問題でもスラスラと解かれて、弁論も噛まずに難なくこなし、教師も知らない知識を披露する。剣術は指南役を負かし、乗馬もこなす。
みんな坊ちゃまが優秀に成られたと言って居る。
旦那様も奥様も大喜びだ。
でも私は以前の坊ちゃまの方が良かった。物覚えが悪く、躓いてばかりだったが、周囲の方に優しく思いやりのある方だった。同じ様に仕事を覚えられない私を優しく慰めてくれた。
ダメ同士仲良くしようと言われた時は身に余る光栄だと思った。
それが怪我をして帰って来て目覚めた途端にお変わりになられた。
今までが嘘の様にテキパキと物事を進められる。
勉強も、剣の稽古も、マナー講習も何もかも
今までが無かった様に。
私とことも無かった様に。
奥様は「お願いして良かった」とか仰り、旦那様は「我が家に相応しくなった」と
私はお暇を貰おうと思う。代わってしまわれたあの方の側にいるのは辛い。
ケース2公爵家公爵当主
いまだに信じられないんですが、旦那様が別人になって居た。
朝起きて、旦那様にご挨拶申し上げたら旦那様が別人でした。
でも周りの皆、執事、メイド長たち仕事仲間はいつもと同じ様に接して居る
別人に見えて居るのは俺だけみたいだ。
気のせいじゃ無いかって?その証拠にいままでできて居たことが出来ないみたいだ。
人の名前を忘れて居る様に見える。執事さんやメイド長さん・・・名前呼んでいなかったけどワザワザ聞いて居た。
俺から見たら知らないんだからしょうがない。
マナーも知らないみたいだ。フォークやナイフ違うの使って居たみたいだし、音を立てて居た。
頑張って、丁寧にやろうとして居たみたいだけど。
仕事は細かいところがわからないみたいだ。
皆んなは戸惑って居る。何せ規律をまもり、自他共に厳しい人だったからな。高潔な方だと称賛する人も居るが、使用人には当たりがキツくて辞める人も多かった。
特に奥様への態度が全然違う。悪女だの毒婦だのの噂の有る女性だったから、旦那様は正式な場以外は接触しない様にして居た。なのに今朝は食堂まで行って挨拶した。
奥様は大変驚かれたようだ。旦那様(に見える奴)は奥様を驚かせたのを謝って居た!あの旦那様が謝るなんて!
旦那様を元に戻したいかって?まあ気づいて居るの俺だけみたいだし、仕事はできて居るから問題ないし、何より俺たち使用人にも優しくしてくれる!
奥様、毒婦っていうのは出鱈目だった。敵対する家が流した噂みたいで、侯爵家の非嫡出子だから守ってくれなかったみたいだ。お会いしたら使用人には無茶言わないし、花と小鳥が好きな清楚な方だ。
本当に毒婦だったら、公爵家に嫁入りなんてできないだろ。調査力バカにするな。
そんな奥様を旦那様はほったらかしにして居た。侯爵家から無理に持ってこられた婚姻だったからなのと、女性に興味がないというか恋愛とかを嫌悪して居たみたいだからな。
旦那様になった奴は奥様に一目惚れしたらしく、現在猛アタック中だ。奥様も満更では無いし、戻さない方が良いと思うな。
ケース3:伯爵令嬢
・・・お嬢様のことですね、どこから話したら良いのでしょうか?我儘で使用人達に無茶を言って居たお小さい頃からか、お母様が亡くなられて再婚なさって、義弟が出来た時か、婚約者が出来た時でしょうか?その婚約者から婚約を辞退する様にと迫られた時でしょうか?
お嬢様がああなった原因というより理由は十分にありますね。
・・・お小さい頃からと、そうですね。小さい頃は元気いっぱいで気さくで良く私どもとも遊んだりしましたね。お嬢様が高熱で生死の境を彷徨った時は我ら一同快復を願っておりました。元通りになったと思ったんですが、その頃から独り言が多くなっていったんですよ。私共に対してはあまり変わり無かったですね。家庭教師が就く様になってからは、私どもと会う機会は少なくなりましたが、目が合えば挨拶してくれました。勉強が楽しいらしく、どんどん教師に質問して、本も読む様になりました。それと剣術や狩の稽古をしたいと旦那様に頼み、先生を就けてもらって居ました。
そのおかげでお嬢様は学院一の才女だったですからね。
奥様が亡くなられてから、独り言が多くなりことあるごとに手鏡を見る様になりましたね。で、旦那様が再婚なされて程なくご子息が生まれて、お嬢様は後継から外されてしまったんですよ。
お嬢様は落ち込んでいましたが、手鏡を見て直ぐに元気になりました。この頃にお嬢様は「自由になる」「お金を稼ぐ」とか言って薬学や医学などの勉強もしておりました。
この頃からお嬢様に届く贈り物宛先不明のものが多くなって行ったんですよ。
年頃になって婚約者が出来たんですよ。美しい方でしたが、少しそれを鼻にかけて居る様でした。お嬢様は「私がどうにかすれば良いわ」とか仰っていましたけど、すぐに浮気しました。お嬢様は証拠を集めて婚約破棄しようとして居ましたが、婚約者の方が自分が浮気をしたのはお嬢様が優秀だから、という屁理屈をつけて婚約をこちらから辞退させようとして来たんですよ。旦那様はこのときご病気で、お屋敷は奥様お嬢様から見たら義母様ですね。が仕切っていたのでお嬢様は何も出来ない状態でした。
硬直状態に痺れを切らしたのか、婚約者が襲って来たんですよ。ゴロツキどもと共に暴力でどうにかしようとしたんでしょうけど、屋敷に火がついて大火事になり、婚約者とゴロツキどもと義母が火事に巻き込まれて亡くなりました。旦那様とご子息は避難が間に合って無事でした。
お嬢様は行方不明です。
お嬢様にお聞きしたことがあるんです。「寂しくないんですか?」ってそしたら、
「私にはあの人が居る」と
今頃お嬢様は推し対して居る方と一緒にいるんでしょうね。
ここまでの証言を元をまとめると
1、性格が変わる
2、知り得ない様な知識が有る
3、今までの記憶がない
などの特徴から、何者かが別人になり変わって生活して居ると考えるが、ケース2をみると、証言者以外は変わって居ることが認識できて居ない事から魂が入れ替わって居ると考える。
突飛だと思われるが、古今東西の歴史的文献を見れば、「彼ら」と入れ替わって居る。そうとしか考えられないケースがいくつも有る。「彼ら」はこの世界ではあり得ない知識と技術を持って居るその力は凶器にも祝福にもなる。いずれにしろ監視管理もしくは処分しなければならない。
ケース1は、人為的にやられた乗っ取りの可能性がある為、潜入し監視の後に処理せよ。似せた人物を連れて来た可能性もある。その場合は騎士団に「事件」として処理させる様に。
ケース2は、潜入監査に止めよ。交渉次第では異界の知識が得られる可能性が有る。
問題のケース3だが、極めて珍しい「共存型」の可能性が有る。大抵は「彼ら」に乗っ取られてしまうのに肉体の魂が存在して居る独り言は「彼ら」と話して居るからだろう。彼女が学生時代に出した論文などは彼女が知り得ない知識から作られたものだ。直ちに探し出し確保する事
教団異界調査部執行部隊
異世界転生って他人から見たらいきなり変わって怖いよなあと。