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第三話:ドーナツと迫る影

 翌日。

 アレックスは、旧市街の寂れたビルの一室を訪れていた。


「……よく来たな、アレックス」


 そこにいたのは、黒いコート姿の男、レイヴン。

 スペシャルディテクティブ、通称 SD(エスディー)

 国家にも企業にも属さず、どんな仕事でも請け負う特別な探偵。


「悪いな。

お前に頼るのは気が引けたが……」

「構わん。

どうせ暇だったしな」


 レイヴンは小さく笑い、アレックスの向かいに座る。


「とりあえず、あの件だな?

もう調べはある程度ついている」

「ああ、あの白い狼だ。

……少女の友達らしいが、どうにもただの動物じゃない」


 アレックスは簡潔に事情を話した。

 レイヴンは黙って聞き、ふむ、と頷く。


「俺の情報では、たぶん......ガーディアンだ」

「ガーディアン?」

「式神だの、召喚獣だの、呼ばれ方は様々だが、多くはそう呼ばれている。

響命者(きょうめいしゃ)と呼ばれる存在の力を借り、この世界に縛りつけられた存在……。

素質のある奴なら、知らずに縁を結んじまうこともある」


 アレックスは唸った。


「つまり……その子、素人のくせに、とんでもない存在を飼ってるってわけか」

「ああ。

問題は、ガーディアンは響命者(きょうめいしゃ)の感情に強く影響されるってことだ。

……意識して制御できるならいいが、無意識のままだと、万が一が怖い」

「……最悪、暴走するか?」

「最悪の場合はな。

しかも、そういうヤツを狙う連中もいる」


 正一は懐から資料の束を取り出した。


「……イクリシア・モノポリアって名に聞き覚えは?」

「この前の依頼の時にちょうど耳にした。

魔術の独占を掲げる連中だろ」

「ああ。

最近、ガーディアン絡みの動きが目立ってる。

その白い狼も十分ヤツらのターゲットになる」


 レイヴンはふっと息を吐くと、もう一枚別のファイルを机に置いた。


「……それと、こっちはお前ならもう知ってるかもしれんが、ヴァラクシアについての情報だ」


 アレックスの表情がわずかに険しくなる。


「……ああ。

異星から来た連中だろ。

私も既に何度か相手をした」

「そうだ。

こっちの動きも、最近少し活発になってきてる。

念のため、気をつけておけ」

「わかっている。

……アイツらも十分危険な存在だ」


 ハウが小さく唸るように呟いた。


(あいつらがこの街に動き出してるのか……)


 アレックスは深くため息をついた。


「……厄介ごとに巻き込まれたってことか」

「だが、お前なら対処できる。

腕っぷしにも自信があるだろ?」

「私はネゴシエーターだ。

できれば穏便に話し合いで解決したい」


 レイヴンはわずかに笑う。

 アレックスも苦笑し、立ち上がった。


「助かったよ、レイヴン」

「ふっ、また何かあれば依頼してくれ」


 アレックスはそのまま背を向け、歩き出した。

 重い空の下、彼の背中に正一の声が響く。


「気をつけろよ。

……相手は相当危険な連中だ」

「ああ、心得てる」


 アレックスは小さく呟き、公園へと向かう。


(二つの組織が同時に動き出す……面倒なことになりそうだ)


 キャサリンとポチ、そして、新たな戦いの始まりが、すぐそこに迫っていた。


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