匂い
ビール乾く、そして漂う異臭
控室を飛び出した亜美は、ぐっしょり濡れた髪をタオルで押さえながらスタッフに叫ぶ。
「シャワー、どこか使えますよね!?このままじゃ帰れないんですけど!」
しかしスタッフは困ったような顔で首を振る。
「ここにはシャワー設備がなくて…、ごめん、後で事務所に戻ってからに…」
「はぁ!?ちょっと待ってください!これ、すでにもう…匂いが…!」
亜美はタオルを頭から外し、髪の匂いを嗅いだ。その瞬間、顔が一気にしかめられる。
「うっ…最悪…!なんですかこれ、完全に腐った麦の匂い…!」
髪はすでにビールが乾き始め、ベタついた感触が硬さに変わりつつあった。手ぐしを通そうとするたびに指が引っかかり、鼻にツンとする異臭が漂ってくる。
控室に戻った選手たちの近くを通ると、ひとりが笑いながら声を上げる。
「おいおい、なんか酸っぱい匂いしないか?」
「うわ、ほんとだ!誰だよ、これ!?」
亜美は顔を真っ赤にしながら振り返る。
「私です!!ビールを頭からかけたの、あなたたちでしょうが!」
周囲は一瞬静まり返るが、次の瞬間には笑い声が爆発した。
「いや、悪い悪い。でもまさかこんな匂いになるとはな!」
「シャンプーしないと、もうヤバいぞ、それ!」
「そんなのわかってます!!でも今は洗えないんです!!」
亜美は怒りと羞恥心でいっぱいになりながら、控室の片隅に座り込んだ。髪をどうにかしようと必死にタオルで拭くが、乾いて固まったビールの成分がそれを許さない。匂いもどんどん濃くなり、隣に座ったスタッフが思わず鼻をつまむ。
「ごめん亜美ちゃん、ちょっと距離置いていい?」
「ひどい…これ仕事ですよね!?どうしてこんなことに…」
その後、亜美は控室の誰からも距離を取られる状態で、乾いた髪から漂う強烈な匂いに悶絶しながら帰る方法を模索することになるのだった。
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乾燥して匂いが悪化する生々しさと、周囲の反応を強調してリアリティを持たせました。