ある訴え
ここは何処?
私は何者?
わからない。
唯一わかることは、お父様からのこの言葉。
「おめでとう、君は選ばれた」
選ばれた、、、何に?
そうか、、、そうよ。
遠くから何かが暴れる音が聞こえる。
行かなきゃ。
私がやらなきゃ。
ズガアン
どさっ
トカゲのような姿をした発症者が、急所を銃弾に貫かれ、力無くその場に倒れた。
「サッきからオオイな、発症者。」
「うん。しかも、どいつも正気を失ってるね。」
石巻は一瞬間をおいて、煙の収まった銃口を下ろした。
あの仮面の男と悪魔を倒してから、一時間も経っていない。にもかかわらず、あれからすでに五体、、、いや、五人?の発症者と遭遇している。
この辺りに何かあるのか?いや、むしろ今までが少なかったのか?
、、、まあ考えても仕方ないか。
そんなことより、さっきから気になることが。
「なあ、ナンデさっきかラずっとサングラス掛けてるんだ?こんなに暗いノに。」
「ああ、これかい?確かに前はろくに見えてないけどね、こうした方が戦いやすいんだよ。君も掛けてみるかい?」
「遠慮シトクヨ。」
そもそも掛けれないよ、こんな取っ掛かりもない丸い頭じゃ。
石巻はサングラスを外し、身につけたウェストポーチにしまった。
「それにしてもさぁ、ボマー君」
歩きながら、石巻が話す。
「なんか寒くない?」
「ソウカナ?」
そういえば、今の僕って全裸なんだったな。違和感がなさすぎて忘れていた。
石巻が訴える寒さは、僕には全く感じない。裸なのに寒さを感じないというのは、なんだか不思議なものだな。
寒さもないし、この姿なら全裸でも変質者にはならないだろうけど、、、いい加減服が欲しいな。寒くなくとも全裸は全裸、恥ずかしいもんは恥ずかしい。
するとちょうどいい所に、服屋の看板が目に入った。
ラッキーだ。
「チョット寄ってってイイか?」
僕は看板の方を指差して言った。
石巻は少し不思議そうな顔をした。
、、、?
、、、あっ、こいつ、僕が全裸だってこと忘れてるな。
「ん?、、、あっ、ああ、いいよ、別に。」
やっと気がついたようだ。
「オウ、サンキュー」
僕は急いで店内に駆け込んだ。
、、、無い。
無い!
僕は今まで、灰色のパーカーをずっと着用していた。
が、それが無い!
嘘だろ?灰色のパーカーなんてどこにでも売ってるだろ!
というか、全体的に長袖の服が少ない気がする。
こんなことを言うと「夏場なんだから当たり前」とツッコミが入りそうだが、それを加味しても明らかに少ない。
こんな夏場に冬服が売れてる?なんでだよ!
服にはそんなにこだわりがない方だったが、少し愛着が湧いていたため、これには落胆した。
仕方がないので、たまたま売れ残っていた、黒地で腕の部分に白いラインの入ったパーカーを貰う事にした。
ズボンは暗い緑のものがあったので、手榴弾みたいな色だな〜って事でそれを貰う事にした。なお、ズボンに関しては元々黒いのを履いていて、それと同じものはちゃんと売っていたのだが、全身真っ黒になるのでやめておいた。ごめんよ。
ちなみに店内は、当然のように無人であった。
人々がどこへ消えたのかも気になるが、一文無しの僕にはむしろ都合がいいか。
泥棒みたいで気が引けるが、まあ、、、いいか。貰っていこう。良い子は真似しないでね。
僕は肌着と服を手に取ると、(意味もなく)更衣室で着用した。
「オワッたぞ〜」
僕はそう言うと、店を出た。
石巻は路肩に置かれた箱の上に座っていた。ちょっと待たせすぎたかな。
「悪い悪イ、チョット長引いチマッタ。」
そう言いながら石巻に駆け寄る。石巻は反応しない。
こっ、こいつ!
死ん、、、いや、寝てる!
箱の上に座った石巻は、スヤスヤと寝息を立てていた。
疲れも溜まっている中で、長いこと待たせすぎたか、、、仕方ない、しばらくこのままにしておこう。
そう思い、近くの地面に腰掛けた時だった。
道の先に、巨大な影が見えた。
それは巨大な爬虫類のような姿だった。後脚で立っており、身長は二十メートルはあろうかと言う巨体。がっしりとした体型で、腕は短く、指らしい指が見られない。丸っこい頭は下顎が大きく突き出しており、巨大な牙が飛び出している。まさに怪獣、といった見た目だ。
あの巨体にもかかわらず、そこにいる事に全く気が付かなかった。あの背の高いやつ程ではないが、うまく気配を消してやがる。なぜかぴくりとも動かないそいつは、
暗闇の中に不気味に溶け込んでいた。
僕は急いで石巻を起こす。
しばらく声をかけてみたが反応がないので、思いっきり肩を揺すってみた。
「ハ、、、」
お、目を覚ました。
「ハアックショオン!!」
うわ、びっくりした!
「うあ、、、ああ、終わったか。ごめん、完全に寝てた。」
「今それドコロジャねえ!」
僕は怪獣の方を指差した。
石巻は飛び起きると、すぐに銃を構えた。
怪獣は先ほどの位置から動いていなかった。
しばらく睨み合いが続く。
怪獣は全く動かない。まるで、、、
僕はふと違和感を感じ、怪獣の方へ歩き出した。
「おい、ちょっと、、、」
そう言いつつ、石巻も違和感を抱いているようで、僕に続いた。
ついに怪獣に触れられるところまで近づいた。怪獣は全く反応しない。
そっと怪獣に触れてみる。
温度は感じ取れない。だが、これは、、、
「冷たい」
隣で同じく怪獣に触れた石巻がそう言った。
一瞬オブジェか何かかとも思ったが、こいつは間違いない。
凍っている。
こいつは間違いなく発症者だ。その証拠に、怪獣の背後には、ここまで続く足跡がある。こいつはここまで歩いてきて、突然凍ったんだ。
怪獣の体表には、うっすらと霜がついている。
今は七月下旬。生物が凍るほど、気温は下がらないはず。
何者かに凍らされたと考えるのが妥当か。
、、、。
「石巻」
「ああ、わかってる」
二人はは後ろを振り返った。
五十メートルほど離れた所に、女性と思わしき人影が立っていた。
その人影は、寒さを感じない僕が雰囲気で知覚できるほど、凄まじい冷気を放っていた。
人影は大声で言った。
「私が来たからには好きにはさせないわよ!悪魔!」
七月二十一日 爆散まであと三日
〜お知らせ〜
「ボマーヒーロー」を読んでくださり、誠にありがとうございます。
さて、物語の構成の見直し、書き溜め、そして新たな物語の計画進行のため、誠に勝手ながら、ボマーヒーローはしばらくお休みをもらいます。
2025年の二月には再開予定です。
*なお、番外編に関しては突然投稿される可能性が大いにあります。あらかじめご了承ください。




