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氾濫 ⑥

 一度頭だけの姿になった僕は、見事に完全復活を果たした。


 機関車の男を巻き込んだ自爆の直前、僕は自分の頭部をチューブで覆っていた。

 感覚からして今の僕の体の構造は、丸い爆弾の形の頭に何本もの管が触手のように生えている、という、まるでタコ型の火星人のようなものだ。人の形をしているのは、いくつかの関節部分でその管がまとめられ、束になっているからである。

 火星人やタコなんかと同じなら、どこが急所、本体かは、火を見るより明らかだ。

 なら、その急所を守るしかない。

 あとは、僕の体の再生力を信じるしかなかった。


 爆発と同時に、眩い光と共に空に弾き出される感覚があった。

 正直、完全に死んだと思っていた。

 上へ上へと首だけで吹っ飛べながら、あぁ、死ぬってこんな感じか、とか考えていた。

 まさか無事だとは。運が味方したか、それともこの体が特別丈夫なのか。

 それに、首だけの状態からこんなにあっさり再生できるとは。便利な体だ、全く。

 やっぱもう人間じゃねえな。僕。


「おまっお前おまっ」


 石巻が口をぱくぱくさせている。


「お前っっっちょっと、もうすぐ、化けて出るぞ(?)」


 だいぶ動揺してるらしい。

 心配かけちゃったかな?


「オチツケ、僕ハ大丈夫だカラ。」

「おまっお前、お前の血は何色だ(?)」


 黒色です。

 だめだ、しばらく戻りそうにない。


 、、、それはそれとして、今僕、全裸だ。

 さっきの自爆で、服が完全に消し飛んでしまった。この姿になってから、裸になるのは初めてだ。まだこの体が自分のものだと認識し切れていないのか、あまり恥ずかしいという感情は湧かなかった。

 思った通り、体全体が黒いチューブで構成されていた。その様は、まるで剥き出しの黒い筋肉のようだった。テカテカと輝く黒いそれは、不気味な雰囲気を醸し出していた。


 そしてその、、、あの、、、あれは、、、なかった。

 あれが無いのは、そのへんの感覚からなんとなく分かっていた。

 むしろ動きやすくていいな〜とか思っていた。

 だが、いざ無くなっているのを見ると、、、なんというか、、、すごいな、虚無感が。とても虚しい。



「ハッ」


 目を白黒させていた石巻が、不意に正気を取り戻した。


「あっ、お前、、、あぁ、良かった。死んじまったのかと思った。」


 虚しいな


「、、、おい、どうしたんだ?そんなに下ばっか向いて。」


 、、、そうだ、こんな小さい事気にしている場合じゃなかった。(、、、小さい?)

 さっきのでであいつが死んだとも限らない。死体を確認するまで油断は出来ない。

 僕は橋の方へ向かおうとした。

 

「ちょっと待って」


 石巻は僕を呼び止めた。


「さっきの悪魔の事で確認しときたい事があるんだ。」


 僕は彼の方を振り返る。


「あいつの本体の事なんだけどさ、、、」




 橋の上に、なにかが横たわっている。

 見るからにボロボロになったそれは、しばらくしてゆっくりと起き上がった。

 

「クッソ」


 起き上がった男は悪態をついた。

 男の顔は機関車から元に戻っており、白い仮面は下半分が割れ、口が露出していた。

 仮面の下だったところは皮膚が破れ、赤い筋肉が露出している。

 変わり果てた姿の男は、何かを吐き出しそうになったのか、苦しそうに口元を押さえていた。


 男はふと、橋を渡ってくる人影に気づいた。

 さっきの爆弾頭だ。なぜ生きてやがる。自爆したのではなかったのか。


 爆弾頭が口を開いた。


「オ互イ、無事でナニより。」

「クソがっ」


 もう一人の仲間は何処だ?デビルが倒したのか?

 

 いずれにせよ、消耗しすぎた。ここは一旦逃げて体制を、、、


 男は橋の反対側へ向かおうとした。

 そこには、もう一人の人影があった。

 銃の方のガキだ。囲まれた。

 、、、いや、まだだ。相手はたかがガキ二人。撒くなんて造作もない事だ。

 男は腕を黒く変色させる。先ほどのように、斧に変形することはない。

 でも逃げる前に、一人は再起不能にしないとなあ。

 爆弾の男は近接ができる。今接触するのは危ない。やるとすればーー

 男は石巻に向かって駆け出した。

 こっちの銃の方!


ギシッ


 男の動きが止まった。

 男の腕には、黒い何かが巻きついていた。

 これは、、、ホース、、、いや、爆弾男の触手か!

 男の体はそのまま引っ張られ、なすすべもなく宙を舞い、橋の柵に激突した。

 いつのまにかサングラスをかけた石巻が、すかさず銃撃を加える。

 男はそれをギリギリでかわした。

 しかたがない。こうなったら何がなんでも逃げてやる。

 男は背を向け、走り出した。

 だが、それを触手が絡めとる。

 男は後ろに向かって引き寄せられた。瞬間、男の背中に衝撃が走る。銃弾を撃ち込まれた。まずい。もう能力は使えない。防ぎ切れない。

 男は反射的に敵の方へ向き直る。

 その時、僕弾頭はすでに目の前にいた。

 しまった。

 男は腹部に強烈な蹴りを食らった。


「カッハッッゔおえっ」


 男は口から、黒い球体を吐き出した。




 男が吐き出した、野球ボールくらいの大きさの黒い球体。

 石巻が言っていた通りだ。

 悪魔の野郎、本体を仲間の胃袋の中に隠してやがった。

 男が球体を拾い上げようとした。

 僕はそれを防ぐと、球体を空へと蹴り上げた。

 球体は形を崩すと、見覚えのある悪魔の姿となった。

 石巻が狙撃すると、銃弾は翼を貫き、悪魔は地上に落ちた。


「きいいぃぃいヤアアァァアァ」


 悪魔は奇声を上げながら、その場で集合悪魔の姿に変化すると、石巻の方へ突進した。

 石巻はスライディングで悪魔の下に回り込む。


 さっきの人形とは違う。こいつには本体が入ってる。

 だからバッチリ聞こえるぜ。

 心臓の音がなあ!

 石巻は悪魔の喉元に向かって銃口を向けると、引き金を引いた。


ズハアアン


「ギャアアアアアアア」


 悪魔は甲高い悲鳴をあげると、そのまま体が崩れ落ち、小さな悪魔の姿になり、それっきり動かなくなった。


 あとはこの男だけだ。

 

「グオオオオアアア」


 男は黒く染まった腕を振り上げると、叫び声を上げながら僕に向かってきた。


バシュッ


 男の腕が切り落とされた。

 僕は男の腕を咥えると、喰らいたい、という衝動を抑え切れず、そのまま飲み込んでしまった。

 男の口が、恐怖で引き攣る。

 ああ、また食っちゃったな。だが、心は非常に高揚している。口角がにいっと上がるのを感じる。ムカデの時ほどではないが、非常にいい気分に支配されそうになる。

 抑えろ、抑えろ。

 ヒヒッ。

 ここで、男の残された方の腕が、斧のように変形する。

 クールタイム的なのが明けたのか。

 

「うわああああああ」


 絶叫しながら、男が迫ってきた。速度も少し戻っている。だが、先ほどの動きには遠く及ばない。

 僕は、ぽっかり空いた男の口に、右の拳を突っ込んだ。

 その手には、手榴弾が握られている。


「じゃあナ」


 僕はそう口にした。


 次の瞬間、男の頭部は、閃光と共に弾け飛んだ。




七月二十一日 爆散まであと三日

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