氾濫 ②
ズガガガガガガガガ
悪魔の群れに向かってミニガンをぶっ放す。
周囲の悪魔が肉片となって飛び散り、砂のように崩れて消えた。
だが、悪魔の数が全然減らない。
どんだけいるんだよ。ここにいるだけでもざっと二百匹くらいか?あっちにいる分や、今まさに飛んできてる奴を含めば五百はくだらないだろう。
今もなおあの男から放出されているのだとしたら、いよいよキリがないな。
ところで、さっきから少し違和感がある。こいつらの死に方だ。
俺たち発症者は本来、死んだらそこに死体が残る。三人も殺したんだ、間違いない。
だがこの悪魔は、死ぬと砂のように消えてしまう。生身の発症者なら、こうはならない。
おそらくこいつらは、何かしらの能力によって作られた人形だ。分身、といってもいいかもしれない。あるいは、式神的なものか。
いずれにせよ、こいつにはどこかに本体がいるはずだ。
可能性があるとすれば、悪魔を放出したあの男か。
いや、だとするとなぜ最初から悪魔を出さなかった?殺すのが目的なら、最初から悪魔を使ったほうがいいはずだ。それにさっきの口ぶり。「俺だけじゃあ」、、、まるで別に悪魔を操る人間がいるかのような言い回しだ。だが悪魔を放出したのはあの男。だとすると、、、
カチッ
やべっ、弾切れだ!
急いで装弾しようとする。が、初めて変形する形だ、どうやって装弾するのか分からねえ!
周囲から悪魔が迫ってくる。
急いでショットガンの形態に戻す。
そういえば、俺ってミニガンにした時装弾したっけ?
そうだ、してないな。最初から弾は込められていた。
そう思い立ち、腕をミニガンに戻した。
弾が装填されている!
やった、これで装填は問題ない。弾が切れたら腕を変形すればいい。
悪魔はどれくらい残っている?
ざっと百五十くらいか。
まだまだ多いが、さっきのでだいぶ減らせた。逃げながら一方的に撃てば攻撃されることはないし、問題なく処理できそうだ。
早く爆弾君と合流しなければ。
おそらく本命はあっちだ。こっちに飛んできた悪魔は、あくまで爆弾君を殺すまでの時間稼ぎに過ぎないだろう。本体もきっとあっちにいる。
その時、残っていた悪魔が石巻の前に壁のように連なって立ち塞がった。
どうしても合流させたくないらしいな。
だが、もうどうということはない。とっとと駆逐して橋に急ごう。
即座に腕を変形させ、装填を済ませた。
その時だった。
石巻が銃弾を放つより早く、悪魔たちは黒い砂のようになって崩れ去った。
死んだ?なぜ?
タイムリミットか?いや、だとしたら同時に死ぬのはおかしい。こいつらは時間をかけてだんだんと増えてきていたはず。
本体から離れ過ぎた?いや、そういうわけでもなさそうだ。
もしこれが意図的なものなら、何か裏が、目的があるはず。
、、、そうか、個体数!
もし悪魔を出せる数に上限があるのだとすれば、自ら解除するのにも説明がつく。
そしてここでこちらに割いていた個体を戻したのならば、目的は一つ。
彼と完全に決着をつける気か!
急がなくては!橋の上に!
石巻はすぐに銃をおろすと、橋に向かって駆け出した。
その時だった。
ズズズッ
という不気味な音が、石巻の背後から聞こえた。
振り返るとそこには、悪魔が崩れた後の砂山はなかった。
どこに消えた?回収されたのか?
ともかく、急がなくては。間に合わなくなるかもしれない。
ボクッ
何かしらの強い力により、石巻の体は吹き飛ばされ、橋を支える柱の壁に激突した。
なんだ?何にやられた?
悪魔か?いや、あれにこんな力はないはず。
あの男か。彼をもう仕留め、今度はこちらを殺しに。
そう思い、自分が吹き飛ばされた方を見た。
そこにいたのは、先ほどの悪魔でも、筋骨隆々な男でもなかった。
痩せこけた人のような何か。そこにいたのは、そうとしか形容できない何かであった。全身は真っ黒であり、手足が異様なほど長い。顔には目や鼻がなく、白い葉の覗く口だけが空いていた。地面に手をつき、四足動物のような体勢でそこにいた。
新手か、、、いや、違う。そういうことか。
橋の上ではまだ爆発音がする。彼はまだ戦ってる。
悪魔が崩れたのは、あちらに加勢するとか、こちらから逃げるとか、そういう目的でやったのではない。
俺をここで仕留めるつもりだ。
俺を殺すには、数で押し切るよりも力でねじ伏せる方が早い。そう判断したまでだ。
一塊となった百の悪魔は、四足歩行のままこちらに向かってきた。
「じゅるるるるる」
という気味の悪い声を発している。
さきほどまでの悪魔とはまるで全く違うもののようだ。
だが、一体になったならこっちとしてもやりやすい。
右腕をショットガンの形に戻した。
ズガアアアン
脳天に一発。悪魔の頭部が抉り取られた。
だが、悪魔は止まらない。血のような黒い液体を撒き散らしながら迫ってくる。
ズガアアアアアン
もう一発。今度は頭部を完全に吹き飛ばした。
だが、悪魔は止まらない。
頭部を失ってなお、迷いなく突進を続ける。
悪魔はもう目前にまで迫っていた。
七月二十一日 爆散まであと三日




