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銀座じうべえ繁盛記

作者: 一飼 安美

 銀座「じうべえ」。歴史と伝統ある江戸前の老舗寿司店は大手グループと提携し回転寿司化、店の名前を残すという条件でチェーンの系列店になった。昔気質の職人のにぎりの技を身につけられる!と思って働いていた若い衆からすれば寝耳に水の話、それだったらマシンががちゃこんがちゃこん作るシャリを運んでいる方がいい!というヤツが相当数いたが、他の勤め先の当てがあるわけではなく回転寿司の店員になった。当の大将は回転寿司のレーンの内側で、へいまいど!何にしましょう、お客さん通だねえとコッテコテのチャッキチャキなのでこういうマスコット役の雇われ店長だと思われている。実際どこかの劇団の人だと言われたら疑う余地がなく、本物の職人だというのは知っているからわかる話、そういうものとして諦めている。たまに「静かにしてくれ」というクレームが来るのも仕方がないから諦めている。


 大将はそもそも系列グループに入るというのがどういうことかわかっていないらしく、よく業者と喧嘩をする。昔みたいに魚河岸で毎朝選ぶわけではなく予算が限られるので寿司のネタの質も限られるのだが、「この値段の中でいいものを見分けろ、金はなくても目ん玉があるだろう!」と強め強めに押し出すので最終的なクレームは店員に来る。オレは店員ではなく職人見習いのはずだが、予算と取引先と上司の中で板挟み。会社員というのはもしかしたらこんなんだろうか、高卒で始めたから経験ないけど。


 客層だって通とか常連ばかりではないのが当たり前、子どもが騒ぐし走り回る。握った寿司に顔を潜める子どももいるので、味もわかんねえくせに、と洗い場で愚痴を垂れると大将にどつかれた。


「お客がわかんねえもの出してどうする、バカ!」


 足運んだ客がうまくねえってんなら、そんなもんうまくねえんだ!……大将の言うことは何か言い返しづらい。銀座じうべえは、「おいしくないなら来ないのに」という客で今日もいっぱいだ。

意味深なものや狙ったものよりこんなんの方が結局楽しいよね。

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