4,一座との旅
短いです。
「石礫をな、こうして飛ばすと・・・」
クナイ投げの伴次はそう言って小さな小石を投げると、落ちてくる葉に当たった。
「「すげ~」」
縁と新平は次々と葉にあてる技に驚き、感動した。
「その技おいらたちにも教えてくれるんだろう?」
「縁にできるかなあ?」
「できるよ!」
「でも、これは人を傷つけるために教えるんじゃねえぞ?」
「「うん??」」
「相手の気をそらして、その間に逃げたり、相手に捕まっている時にその相手をひるませるためにやるんだ。だから、石礫は小さなものを使え。あてるのは相手の額や首筋だ。
俺がいいというまでは決して外で使っちゃいけねえぞ」
伴次がそういうと、二人はしっかりと頷いた。
伴次が舞台で見せるクナイ投げは、正確に紙風船に当たり、磔の状態でクナイを受ける者に決して当たることはない。
縁と新平は休み時間を利用して、伴次から教えられた練習を重ねた。
他にも、軽業を得意とするお軽さんからは、そのあたりの塀の上まで登る方法と、屋根の上を走るやり方を教わった。
「あんたたちはまだ体が軽いんだから、力じゃなく、反動を利用して飛ぶんだよ。
この軽業で女湯なんぞのぞいたら承知しないからね!」
「そんな事しねえよ」「おいらも、女湯のぞいたって仕方ねえじゃねえか」縁がそうつぶやくと。
「なんだって?まったく今どきの子は・・・」そう言ってお軽は笑った。
そして、燕からは何故か踊りを教えられた。
「踊りだからってバカにしちゃあいけない。体感を鍛えなきゃ、お軽の技もできやしない。
それにねえ、万が一の時、女のふりして逃げなきゃならないのに、がにまたじゃすぐにばれちまうだろ?指先まで女になりきるには踊りを覚えるのが一番さ。
無駄な事なんか一つもないんだよ。役に立つときが来たらそれがわかるさ」
都までの道中、縁と新平は練習を重ね、特に絡まれる前に逃げることで、無事に過ごすことができた。
その頃には縁と新平は石礫を軽く当てることも、塀を駆け上がることもできるようになった。
踊りについては、なんと化粧をされ、かつらをかぶらされて舞台の端で出演まで果たしたのだった。
「可愛い女子にしか見えないわねえ」
「本当に」
「なんて可愛らしいのかしら」
そう言って一座の皆がほめてくれるのだが、縁と新平はあまりうれしくなかった。
「「可愛いって言われても嬉しくないやい」」
そう言って頬を膨らませる二人に、一座の者はお腹を抱えて笑うのだった。
そんな風にして、一座と旅をつづけた縁と新平は、ようやく都にたどり着いた。