種族の数を比べて
食べられそうになった【ボク】は必死にワニにとって役立つ存在にならなければいけなかった。
ワニが言うには仲間のワニの数がわからず魚を食べてしまい食べ物が不足しているらしい。それならワニの数を数える手伝いをすれば【ボク】はワニにとって役立つ存在になれる。
そう考えて
「それなら【ボク】がワニさんの種族の数を数えてあげますよ。
仲間がどれくらいいるのかを把握して魚の補食数を制限をする事ができるようになるんじゃないですか?
もしかしたらワニさんと同じように仲間の数がわからないからという理由でお腹をすかせてるワニもいるかもしれませんよ。」
「なるほど、仲間の数を調べるのは良いことだと思うが、それがお前でなければいけない理由はなんだ?」
「仲間同士で数えたらたくさん食べたいワニが嘘の報告をするかもしれません。でも、【ボク】なら命に関わる事なので嘘はいいません。」
「なるほど。だが、どうやって数える?
岸辺に並べてもズルをする奴が出てくるぞ?」
「う~んそうですね……」
【ボク】は基本的に適当に話しているからそれらしい事が言えない。こちらの岸辺と向こうの岸辺を見ていると閃いた。
「そうだ!ワニさんがこちらの岸辺から向こうの岸辺に一列に並んでください。その上を【ボク】が渡りながら数えていきます。
そうすれば泳げない【ボク】はワニさんの上から降りたら溺れて死んでしまうので嘘はつけなくなりますし、数を多く見せようと見栄を張るワニさんがズルをしても見晴らしが良いのですぐにバレます。」
「いや、待て!向こうの岸辺はかなり遠いぞ?」
「ああ、ワニさんは自分の種族の数では一列に並んでも向こう岸に届かないくらいしかいないと思われてるんですか?
それなら魚が足りないと思ってるのはワニさんの狩りが下手だからという事になりますね。」
「なっ、それは違う。そんなに言うならウサギが並んでも向こうの岸辺には届かないんじゃないのか?」
「いいえ、【ボク】の仲間はたくさんいますから絶対に届きます。まぁ、泳げない【ボク】らは水面に一列に並べないので実践はできませんけどね。」
「ふん、ウサギよりもたくさんいる事を証明してやる。
よしわかった、お前の言う通りにしてやろう。」
こうして【ボク】は食べられない事と向こう岸に渡る手段の両方を手に入れたのだった。