嘘という重り
何が本当で何が嘘かはわからない。聞いた話をそのまま誰かに伝えたとしても元となる情報が間違っていた場合はその話をした人が嘘つきになってしまう。あのふわふわとした夢はなぜか鮮明に覚えているが夢の話ほど信じてもらえない話も興味を持ってもらえない話もない。
僕が学校に行くために歩いていると毎日のように絡んでくるうざい同級生の集団に会った。その中でもがき大将的な立場にいるカズが僕に向かって
「おい、嘘つき!今日はどんな嘘をつくんだよ?」
僕が嘘をつく事が前提で話してくる。周りも僕を馬鹿にしたように笑ってる。僕は呆れながらも
「給食費は持ってきたのか?今日出さないとカズは給食が食べられないんじゃないだろ。」
「はぁ?給食費を集めるなんて聞いてないぞ。なぁお前ら。」
「そうだそうだ。」
取り巻き連中がうるさいなと思ったが無視をして
「じゃあ、給食費を持ってきてないのか?」
「あたりまえだろ。つくにしてももう少しマシな嘘をつけよ。」
「まあ、僕はカズが給食を食べられなくても関係ないからどうでもいいよ。」
周りに同級生も何人かいたが誰もカズに何も言わなかった。
教室に入りカズの集団が相変わらず僕を嘘つきと言って笑っていたが気にする事はない。
ホームルームの時間になり担任の先生が一通り今日の予定を話し終えて、
「ああ、そうだ。カズ、ご両親から給食費を預かってきてないか?君の所だけもう3か月も払われていなくてな。PTAの方でも何か月も給食費を払わない家庭の生徒には給食を食べさすなという意見が出ていてな。
お金を払わなくても食べられるなら誰も払わなくなるという事もあるし教育にも悪いから厳しくはなるけど、もしも今日持ってきてないなら給食は食べられないぞ?」
「えっ?持ってきてないです。それにそんな話聞いてないです。」
カズは真っ青な顔で言った。先生は焦った顔になり
「この間、全員にプリントを渡しただろ。大事なお手紙だから絶対に親に渡してくれとも言ったぞ。」
「そのプリントは渡したけどお金は貰ってないです。」
カズはどんどんと声が小さくなっていった。先生は
「じゃあ何かお昼に食べるものを持たされたりとかはしてないか?
うーん給食費を払ってないから友達に分けてもらう訳にもいかないし、先生の分を分けてあげるわけにもいかないからな。お家に電話するから一緒に職員室に来なさい。」
カズはそのまま先生と一緒に職員室に行ってしまった。僕はあえてカズの取り巻き集団に向かって
「あの教えてあげた時に取りに帰ればこんな事にならなかったのに。人を嘘つき呼ばわれりして遊んでるからこう言う事になるんだよ。」
「お前がもっとしっかりと教えてあげてたら良かったんだろ。お前が嘘つきなのがいけないんだ!」
取り巻きの中でも馬鹿なやつが大声で言った。僕もイラっとして
「僕がいつ君たちに嘘をついたんだよ。カズが保育園の頃からずっと僕の事を嘘つき呼ばわりして来るのにのっかって勝手にお前らが言ってるだけだろ。悪いのは全部カズだし、お前らが誰もあのプリントを見ていなかったのも悪いだろ。他にもみんないたけど誰も言ってあげなかったなら僕だけが本当の事を教えてあげてたんだから僕は感謝されるべきだ。」
僕は家族に対しては嘘をつく事もある。でも学校や同級生の前で嘘をつく事はない。今までの色々が溜まっていたので全部言ってやったら取り巻き連中も何も言えなくなっていた。
何が本当で何が嘘か、もしこの情報を学級委員長をやっている人がカズに話していたならカズは慌てて家に帰ったのだろうか?僕の言う事だから、昔カズに嘘をついたところから嘘つきと呼ばれるようになってそれが今になっても僕に【嘘つき】というラベルを張っているなら嘘という重りの重さを感じる出来事だった。