しろウサギの話
僕が七歳の時にお父さんとお母さんが慌てて家に帰ってきた。
僕の手を握ると慌てて車に乗せられ、おじいちゃんの入院している病院へと向かった。おじいちゃんは色んな管をたくさんつけた状態で辛そうにしていた。お医者さんが
「ご家族は揃われましたか?」
お父さんが
「今、来れるのはこれで全員です。」
僕がおじいちゃんを見ているとお父さんが
「ひであき、おじいちゃんの側に行ってあげてくれ。」
僕は言われるままにおじいちゃんに近づくと、おじいちゃんは僕の手を握り辛そうに笑いながら、
「ひであき、しろウサギになりなさい。
あ……あの話を……思い出してね。嘘を…ついては……」
おじいちゃんが言いかけた所で『ピー』と大きな機械の音がなり、お父さんとお母さんが駆け寄ってきた。
お医者さんがおじいちゃんに近づき色んな所を触ったりしてから
「ご臨終です。」と短く言った。
僕にはその時何が起こっているのかわからなかったが、お父さんとお母さんが泣いていたので、僕も涙が溢れた。
その後どうなったのかは良く覚えていない。お父さん達が慌ただしくしているのを最後に僕は病院の椅子で寝てしまった。
『ひであき、ひとつ昔話をしようか。』
おじいちゃんが優しく語りかける。これは遠い昔の思い出。
『これは古事記という日本ができた時を伝えるために書かれた本に書かれていた物語で因幡の白兎というお話だよ。
この国を作ったオオナムジの神という神様が兄弟のヤソガミと共に気多という場所にいった。元々はヤソガミが美しい女性の神様に求婚するためでオオナムジの神は荷物持ちとして連れてこられていた。ヤソガミよりも後を歩いていたオオナムジは浜辺に倒れているウサギを見つけた。ウサギは皮を剥がれた状態で塩水に当たっていたのでとても痛くて動けなくなっていたのだ。
兄弟のヤソガミが塩水に当たっていれば治ると嘘を教えたからだった事を聞き、そもそもなぜ皮を剥がれたのかと聞いた。
白兎はオキの島からイナバに向かいたいと思ったが海をわたる手段がなかった。そのためワニに「お互いの一族の数の多さを競おう」と嘘をついた。ワニはその挑発に乗りオキの島からイナバにかけて一列にならびその上をウサギがその上をかぞえながら歩いた。そして最後のワニのところに来て「みんな騙されてるのに気付かなかった。」と嘘をついた事を教えた。その話を聞いたワニは怒りウサギの皮を剥いだそうだ。嘘をついたウサギはだましたワニにひどい目にあわされたんだよ。でも、それもしょうがない話だよね。嘘をついてはいけないという教訓を伝えるためによく使われる昔話だよ。でもこの話には続きがあるんだ。……‥‥・……だよ。だから、ひであきもしろウサギになりなさい。
ああ、そうだ!このお話の舞台は実は彦根なんじゃないかという学者さんもいてね。伝承というか正式には鳥取県の隠岐の島から本土に向かうお話となっているけどその学者さんは沖の島は琵琶湖にある沖の島で、イナバというのも鳥取県の因幡ではなく彦根市の稲枝町のあたりにある稲葉だと主張したそうだ。
実際に稲葉にある神社にウサギの絵が彫られた灯篭があったりもするんだよ。
まあ、鳥取県には砂丘の近くに白兎海岸だったり白兎神社という場所があるからそちらなのではないかと私も思っているけどね。大昔の事だから本当はどうだったかとかはわからないけど誰かが何かを伝えようとしたから現代まで伝わっているわけだからこのお話の内容について考える事は大事だね。』
おじいちゃんはそう言って笑った。おじいちゃんの死に際に言った『しろウサギになりなさい』についての重要な部分を思い出すことはできなかったが、このお話に関連する何かなのかなと7歳の時の僕は思った。




