浮き上がる記憶
僕は縁側に座っていた。日の光が暖かくのんびりとした時間が流れている。でも、僕の家には縁側はない。縁側から見える庭はおじいちゃんの家のものだ。つまりこれは夢なのだろう。
最近は変な夢ばかり見てるなと自分でも思う。
「眠くなってきたかい?」
おじいちゃんが優しい笑顔で僕の顔を見ている。
「ううん、大丈夫。続きを聞かせて」
「オオナムヂの神は兄達が先に姫に求婚をしていたにも関わらず誰も上手く行かず最後に現れた荷物持ちのオオナムヂの神が逆に求婚されるという事になった。
ウサギは良縁を運んでくれた特別な存在だと考えたオオナムヂの神は自分が助けたウサギを祀る神社を作ったとも言われてる。
今でも各地に白兎を祀る神社が残っている。彦根にも稲枝の方に稲葉神社というところがあるよ。
その神社がどうかはわからないが、大願成就や良縁を願う事ができる所が多いね。
嘘をついたウサギは、オオナムヂの神と出会い正直になる事で人々から認められる存在になったんだ。」
「ウサギさんは結局いいウサギだったの?」
「嘘をつくのは良いことではないけど、それを後悔して改めた事は良いことだと思うよ。」
おじいちゃんは真面目な顔で言った。そして続けて
「ひであき、嘘をついてはいけないよ。誰かを傷つけるだけじゃなく自分も傷つく事があるからね。
でも、人は時に嘘をつかないと生きていけないこともある。
だから、白兎の神様のようになりなさい。
嘘を後悔して改められるような人になりなさい。
難しいことだけど、心がけ次第でできないことではないからね。」
おじいちゃんは優しい笑顔で言った。