オオナムヂの神との出会い
僕が眠りに落ちると、体が水に浸かっている。おじいちゃんと一緒に見たウサギになったようだ。
水から出て山を登り水を乾かして痛みをこらえていると【ボク】のもとに走ってくる人がいた。そして
「おい、どうしたんだそんなところで?」
【ボク】はその人に向かって
「とある理由から怪我をしてしまい、先ほど通りかかられた偉い方に海塩を浴び山の頂で強い風と日光に当たっていると傷の治りが早くなると聞きました。なのでこうして伏せておりました。」
「誰ですか、そんなウソを言ったのは?」
「えっ?嘘なのですか?八十神様という偉い方が教えて下さった事ですし周りの方も何も言われませんでしたよ?」
「あの方が見ず知らずのあなたを助けるような事はしないと思います。もしも助ける気があるならこんな方法は伝えずにもっと効果的な方法を教えていると思います。ところで何があってそんな事になったのですか?」
「私はオキの島からこの地に渡ろうと思いましたが渡る手段がありませんでした。そこでワニを欺いて『私とあなたたち一族とを比べてどちらの同族が多いかを数えよう。できるだけ同族を集めてこの島からあちらの岸まで並んでくれと言い、その上を踏んで渡りながら数えよう』と誘いました。欺かれたワニの背を渡りきろうとした時に私は騙してしまった罪悪感からだましていた事を伝えたらこうなりました。」
「・・・・・なるほどそうであったか。私は大穴牟遲神という。私の兄弟があなたに嘘を教えたために辛い目に合わせてしまい申し訳ない。今すぐに水門へ行き水で体を洗って、水門の蒲の穂を敷き散らしその花粉つければ皮膚も元のように戻り必ず癒えるだろう。本当にあの人はどうかしている。これから八上比賣に求婚しにくというのにこの地の者にこのような仕打ちをするとは何と愚かな事だろう。」
「なるほどヤガミヒメに求婚ですか・・・・。そうなるとヤソガミ様はヤガミヒメを絶対に得る事はできないでしょう。」
「とにかくあなたは早く治療に向かってください。あなたは自らの過ちに気づき、それを悔やんで真実を告げる事ができる方です。今回の事を心に刻み正しく生きてください。」
「はい、あなた様こそが人の上に立つべき人です。今回の事を心ぞに刻み生きてまいります。」
【ボク】が答えるとオオナムヂの神は笑顔で行ってしまった。