嘘の告白と代償
僕は白いもやを抜けて目を開けると目の前にワニがいた。
【ボク】の夢の続きかと思っているとワニが
「それで?どうする?向こう岸に戻るのか?」
「すみません、【ボク】はこっちに残ります。」
「何?仲間達がいる所に戻らないのか?」
「はい。それに【ボク】はワニさんに謝らなければいけない事があります。」
「えっ?なんだ急に?」
「今回、【ボク】は食べられたくないから適当な事を言い、食べられるのを回避しました。【ボク】はもともとこっちの岸に来たいと思ってましたが泳げないために諦めかけていた時にワニさんと出会いました。【ボク】がこっちの岸に来るためにワニさん達を利用してしまいました。」
「なら、さっき言った数も嘘と言うことか?」
「いえ、数えるのは真面目にやりましたから正しい数をお伝えできたと思います。」
「なるほど、それなら別に俺を騙していた事を伝える必要はなかったんじゃないか?」
「ワニさんには最初食べられそうになって怖い思いもしましたが、その後は【ボク】の話もしっかり聞いてくれましたし【ボク】を向こう岸まで送る提案をして貰うなど親切にして貰いました。このまま騙したままでいるのが心苦しく自分が耐えられなかったんです。」
「罪悪感ってやつか。それを伝えて俺が怒ってお前を食べるというのは予想できなかったのか?」
「そうなったら仕方ないと思います。ワニさんが望まれるならそうしてください。」
「うーん、難しいな。さすがにここまで話して世話にもなったわけだからここで俺がお前を食えば今度は俺が罪悪感に苛まれる事になるんじゃないか?
俺としては今回の結果に十分に満足しているから、もう何もしなくてもいいんだが、それではお前が納得できないということだろう?」
「はい、お願いします。【ボク】を罰してください。」
ワニは「うーん」と唸って考え込んだ。
「【ボク】はどんな仕打ちでも受け入れます。」
「そ、そうか?ならこうしよう。俺は今までウサギは食べるものとしか見ていなかったがお前は違った。俺の悩みを聞き解決するための方法も教えてくれた。ここで別れれば今生の別れとなるだろうからお前の姿を覚えておくためにもお前の毛皮をくれ。
できれば俺もこんな事はしたくないがお前は俺からひどい罰を受けないと自分を許せないのだろう?」
「はい。」
「では、それで言いか?」
「怖いですが大丈夫です。」
ワニは申し訳なさそうに
「お前のような小心者は嘘をつかない方が良い。小さな嘘が代償として何倍にもなって還ってくるんだから。
今回は俺がこんな感じだったから死なずにすんだが次はどうなるかわからないぞ?
とにかく、今後は嘘をつかないようにしろよ。」
ワニはそう言って【ボク】の皮を剥ぎ始めた。
【ボク】は痛みにより気絶しそうになった。夢ではあるがその痛みに耐えられなくなった僕は目を覚ました。