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第73話

敏郎は、いつでも小料理屋の制服に着替えて、店の仕事をテキパキとこなしていた。


厨房にいる健が阿蘭に「千鶴ちゃんのおじいちゃんの敏郎さん、丁寧で、よく働いてくれてるね!いい人が来てくれてよかった!敏郎さんにしてよかった!人手不足なので、これで、一安心だよ!千鶴ちゃんも見る目があるね!これで、売り上げも伸びそうだよ!」と褒めた。


健は、またしても売り上げ向上主義だった。


阿蘭も「千鶴ちゃんに似て、無口で、寡黙な人で、あまり愛想はないけど、真面目で、仕事もテキパキやってるよね。千鶴ちゃんのおじいちゃん版かな。千鶴ちゃんも結構渋いからね!」と笑った。


その時だった。健のスマホが鳴った。


スマホを見ると“千鶴”と表示された。


健は電話に出ると「もしもし、千鶴ちゃん?」と尋ねた。


千鶴は「健さんですか?千鶴です。おじいちゃん、役に立ってますか?」と健に質問した。


健は「もちろん、助かってるよ!真面目で、仕事もすぐに覚えて、正確で、今どき珍しいぐらいだよ!本当にいい人が来てくれたよ!いい人を紹介してくれたね!ありがとう!」と千鶴を安心させた。


千鶴は「じゃあ、よかったです。ちょっと心配だったので、電話したんです。ところで、楓梨は元気ですか?さっきも今日5回目の電話をしたんですが、ちょっと元気がなかったので、心配で、確認のために聞いておきたいと思ったんです。ひょっとしたら、楓梨は、体調を崩しているかもしれない、もしくは、何か心配事があるかもしれない、私には遠慮して言わなかったのかもしれないと思ったんです。」と健に尋ねた。


健は千鶴に「安心して!楓梨ちゃん、元気だよ!」


千鶴は「ああ、よかったです!では、失礼します。」と健に言って、スマホを切った。


千鶴は自分が1週間も不在なので、楓梨が健たちに不満や不安を言っていると思っていた。しかし、愚痴を言うと、健たちが心配するといけないので、黙っていただけだ。それで、元気がないと勝手に推測して、解釈していた。楓梨にしたら、うるさい千鶴が何度も電話をかけてくるので、ウザいだけだった。


阿蘭は健から千鶴のことを聞いた。


阿蘭が健に「1日会わないだけで、そんなに心配なんだな。これだけ思われてる楓梨ちゃんは幸せだな。」


健は思った。“楓梨ちゃんは、これから先、大変だろうな。結婚できることが、あるのだろうか?あの百合(千鶴)の存在で・・・・・・。”


健は、他人事ながら心配だった。

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