第70話
いつもの戦闘員は頭領が、どんな秘策を考えたのか、楽しみだった。今度こそ、頭領は、やってくれるだろうと期待した。
戻ってきた頭領は「これじゃ!」と、いつもの戦闘員に、1本のほうきを見せた。
いつもの戦闘員は「は?ほうきですか?ここから火とか毒ガスでも出るんですか?」
頭領は「いいや!このシンプルなほうきが絶大な威力を発揮するんじゃ!安心しろ!まずは、細工は流々仕上げを御覧じろじゃ!」
いつもの戦闘員は「安心しました!頭領にお任せすると僕たちは安心です!」
頭領は、また別のバイト戦闘員に、コインランドリーの店前にこの1本のほうきを逆さまにして立てるように命じた。
嫌いな人間を帰らせるためのまじないだった。
頭領が「今度こそ、帰るだろう!これこそが秘密兵器だ!」と、いつもの戦闘員に自慢した。
いつもの戦闘員は「今度こそ、頭領のアイデアは成功するでしょう!」と感心した。
しかし、いつもの戦闘員は、内心、こんな古典的な技で、しかも、子供だましのようなことで、健たちが帰るかと疑問だった。
いつもの戦闘員は“いかん、いかん。頭領が失敗をするわけがない。”と思った。
続けて、いつもの戦闘員は、頭領を否定した自分が間違いだと自分自身を責めた。
やはり、ほうきは効力を発揮しなかった。結局、洗濯物の乾燥するまで、健と阿蘭は、コインランドリーで、スマホを見ながら、しつこく待った。そのうえに、コインランドリーの洗濯機が止まっても、執拗に、スマホを見て長々と遊んでいた。そして、ようやく立ち上がって、何度も忘れ物がないか、2人でチェックして、帰って行った。
頭領と、いつもの戦闘員は、健と阿蘭が帰って、ホッとため息をついた。
頭領は「どうにか、基地を守れたぞ!!!」
いつもの戦闘員は「おめでとうございます!頭領!あの逆さほうき、効力ありましたね!あの2人、やっと帰りましたよ!あんなに遅くまで遊んでいて、暇なやつらですね!呆れますね!」
いつもの戦闘員は、逆さほうきが効果が無かったが、いつでも小料理屋で同伴したいがために、ここでもお世辞は忘れなかった。
頭領は「あんなしぶといのは、珍しいな!人の悪口ばっかり言うおばさんたちでさえ、あんなに長居しないぞ!」
いつもの戦闘員は「正義のヒーローは、こんな時でも人に迷惑をかけないように、すぐに立ち去るもんですよね!戦士運営団体は、人選を誤ってますよ!やっぱり、僕たちの方が常識がありますよね!全く、モラルの無いエコーズは正義のヒーローという看板を外すべきです!」
頭領は「おぬしは、正しい!あいつら、まずは襟を正して、人に迷惑をかけないというところから改善すべきだ!手っ取り早くデビルグリードがエコーズを壊滅してやろう!」
いつもの戦闘員は「全く、頭領の仰せの通りです!僕たちで、エコーズの息の根を止めてやりましょう!」
頭領と、いつもの戦闘員の2人は、壊滅とか息の根を止めるとか意気込みがすごかった。
その割には、頭領と、いつもの戦闘員たちは、その後、健と阿蘭が、コインランドリーに来ないかと、毎日、戦々恐々(せんせんきょうきょう)と警戒していた。
頭領と、いつもの戦闘員は、大胆なことを口にする割には、警戒するほど、小心者だった。
しかし、健と阿蘭は、頭領のコインランドリーは遠いので、2度と行く気は起こらなかった。
ある意味、逆さほうきは、来させないために、効果的だったのかもしれない。




