第160話
次の日、健たち4人と頭領と戦闘員は一緒に仕入れに行くことになった。歩いて20分ぐらいの所に、いろんな店があった。個人商店がほとんどだった。
肉屋、魚屋、八百屋などがあった。
楓梨と千鶴も興奮して楽しそうに見て回っていた。
楓梨は「化粧品は無いなあ。残念だなあ。早く日本に帰らないと手持ちの化粧品のストックが無くなっちゃうよ。だけど、ちょっとした服は売っているなあ。昔のヨーロッパ調の服だなあ。」
千鶴は、というと、日本以上に見知らぬ異世界には警戒していた。楓梨を守るためだった。千鶴は異世界に来てまで、百合をやっていた。
頭領は「いろんな店があるのう。さすがに、この石のような石ころは落ちてないな。」と小声で戦闘員に耳打ちした。
頭領は上着のポケットに石を入れて、行動していた。
戦闘員は「頭領、石を捨てるつもりですか?でも、捨てたら帰れなくなってしまうこともあるんじゃないですか?」と忠告した。
頭領は「それも、恐ろしいことだな!捨てるに捨てられないもどかしさ。それでいて、この石が気になってのう。どうしたって、気になるのが止まらない!」
健たち4人が異世界のいつでも小料理屋に戻ろうとしたので、頭領たちもそれに従って、帰ろうとした。
いろんな店がある所から歩いて10分ぐらい経った時だった。
突然、盗賊のような連中が現れた。人数は、10人ぐらいいた。
10人の男たちは毛皮の服を着ていた。体格は10人とも恰幅がよく、身長は、高い、低い、それぞれだったが、髪の毛は割と長く、天然パーマが多かった。手には斧や槍やソードを持っていた。
1人のリーダーのような男が「カネを出せ!」と健たちに命令するように怒鳴った。
やはり盗賊のようなやつらは、やっぱり盗賊だった。
健は変身しようとしたが、異世界のせいか変身出来なかった。他の3人も同様に出来なかった。
頭領と戦闘員も変身しようとしたが、こちらもまた変身出来なかった。
戦闘員は小声で「つい、いつもの癖で、やってしまいましたが、変身出来なくてよかったですね!」
頭領は戦闘員に「危なかったのう!しかし、また別の意味で、今、危ないのう!逃げるしかないか?」
健が「社長さんとお連れの方を守るんだ!」とエコーズの3人に叫んだ。
その言葉を聞いて頭領は目がウルウルした。健に感激した。
1人の盗賊が「こいつから痛めつけてやるか!」と言って、楓梨に近づきそうになった。
それに気が付いた千鶴は、楓梨を守ろうと、その辺に落ちている棒切れを拾った。
すかさず、楓梨に近づいている盗賊の1人に「オンドリャー!!!楓梨に近づきやがって!!!ぶっ殺してやるー!!!」と言って、持っていた棒切れを振り回し、盗賊の1人の頭にヒットさせた。
あっという間だった。その盗賊は、“ドシーン”と地面に倒れた。
千鶴は残っている盗賊の9人に、その棒切れで、向かっていき、棒切れで相手を殴って、時にはミドルキックやローキックを連打した。
盗賊は斧や槍やソードで応戦するも、千鶴の恐ろしいパワーで、次々となぎ倒されていった。
盗賊10人は山積みになっていた。
盗賊のリーダーらしき男が命乞いをした。「どうか、これでお許しください。少ないですがカネを差し上げます。見逃してください。更生して真面目になります。」と千鶴に懇願した。
リーダーは、布包みのカネを持っていた。そして、それを地面に置くと他の手下に号令をかけた。「引き上げるぞー!」と言って、盗賊たちは逃げて行った。
健や頭領たちは千鶴に拍手喝采をした。
戦闘員は小声で「ああ恐ろしい!頭領!千鶴は、やはり恐ろしいですね!本領を発揮しましたよ!こっちも本気で千鶴と戦ったら、命ないですよ!それに、なんだか千鶴、盗賊から、カネを巻き上げたようですね!千鶴は盗賊から上前を撥ねて、逆に千鶴が犯罪者みたいですよ!僕らも一緒にいるから、共犯者ですよ!あ~怖い!」と頭領に言った。
頭領は「いずれにしても、日本に帰ったら、怪人に力を入れないとな!千鶴を徹底的にマークして、弱点を探すしかないな!」と戦闘員に提案した。
続けて頭領は「しかし、ワシら、日本に帰れることあるのかのう?」
頭領は気弱な発言をした。
しかし、頭領と戦闘員は昨日から、健に同居させてもらって、感激した割には、もう今は、最強の千鶴を倒して、エコーズを壊滅することを考えていた。日本に帰れることの希望を捨てては、いなかった。