第155話
健は、ドミグラスソースのいい香りがするハヤシライスを運んできた。
頭領は「ありがとう!健君!今日は後で、クリームあんみつ2つね!」と健にオーダーした。
健は頭領に「はい!承知しました!ありがとうございます!ところで、今日は変わったお客さんが多いですね!なにかの催し物でしょうか?」と尋ねた。
頭領は、辺りを見まわした。女の人はアルプスの少女のような衣装を着ていたり、まるで、魔法使いのような衣装だった。
頭領は健に「いつの間にか、お客さん、日本人ぽくないね。服装も。」
健は「もしかしたら、異世界に来ていたりなんてね!冗談ですよ!」と笑いながらジョークをかました。
頭領も「いやぁ~、面白い冗談だね!健君!」と言って、2人で笑っていた。
ここまでは、余裕の健と頭領の2人だった。
厨房に戻った健に阿蘭は「健、なにか、おかしいと思わないか?客層がいつもと違うぞ!まるで、テレビで見たようなアニメの異世界人のようだぜ!どこか違う惑星にでも俺ら、来ているんじゃないか?」
健は「まさか!そんなことあるわけないだろ!まさかとは思うけど、試しにドアを開けてみるわ!」
その時だった。トカゲの風貌の亜人が店内に入ってきた。
健は啞然とした。しかし、すぐに気を取り直して、亜人を席に誘導した。
次に、健は店のドアを開けた。
健は一瞬、自分の目がおかしいのかと錯覚した。
しかし、目の前は異世界だった。知らない建物がいっぱいあった。レンガ造りや土壁の建物。
健は「ええええええええええ!!!!!なにがどうなってるんだー!?」と絶叫した。
その声を聞いて、阿蘭が駆け寄った。しかし、あまりにも驚いて、絶句した。そして、気を取り直して「マジかよ!?」
健は「いつでも小料理屋は借家だから、大家さんが移転したのかな???」と、わけのわからない見解をしていた。
明らかに動揺を隠せなかった。
楓梨も2人に走り寄った。楓梨は「なにこれ?ここ異世界じゃないの?どうなっているんですか?これじゃ、買い物にも行けないよ!化粧品が無くなったら、どこに買いに行けばいいんだろう?」と、わけのわからないことを口走っていた。
楓梨のコメントは的外れだった。生活感がない発言だった。
千鶴も楓梨に駆け寄った。「楓梨、安心しなさい!私はいつもそばにいるわ!日本であろうが、異世界だろうと、死ぬまで楓梨を離さないぞ!いいだろう!」と千鶴は楓梨を元気づけた。
しかし、千鶴のコメントは楓梨にとって、心強い反面、迷惑でもあった。
戦闘員は「頭領!なんか、あの4人、ここは異世界と言ってますよ!」
頭領は「異世界だと!?確かに、仮装行列のような客ばかりだな!」
戦闘員は「それにしても、このハヤシライスうまいですね~!玉ねぎがしっかりと煮こまれていて、牛肉とドミグラスソースが絶妙にうまい!ライスにぴったしカンカンですね!」
頭領は「確かに、ハヤシライスうまいなあ!」
頭領と戦闘員は異世界に来ているというのに、ハヤシライスを食べるのをやめなかった。
戦闘員は「それにしても、異世界・・・。あっ!頭領!まさかと思いますが、さっきの石が原因で、異世界に来ちゃったなんてことあるんでしょうか?」と尋ねた。
頭領は「さっきの石の変化を目の当たりにしてから、この現実だ!なんとも言えんなあ。でも、もし、この石だとしたら、捨てると、またどんなことになるのか、想像もつかないぞ!いいことになるのか、悪いことになるのか、判断のつけようがないな!」
戦闘員は「しかし、これでは、まさに、異世界転移ですね!この店ごと転移したみたいですね!僕たち、この先、一体どうなるんでしょうか?」
心配する頭領と戦闘員だった。その割には、残っているハヤシライスを完食した。