第112話
頭領と戦闘員の周りには、健と阿蘭と楓梨と敏郎が取り囲んだ。頭領と戦闘員以外は、全員笑顔だった。
健は、自撮り棒にスマホを取り付けたものを自分の前に差し出した。
頭領は、否応なしに、押しに負けた。健たちに、されるがままだった。
スマホ撮影の寸前に、頭領は、戦闘員に、ささやいた。「下を向くんじゃ!手で、顔を隠せ!」
必死の指示だった。戦闘員もその指示に従った。
スマホに撮影されると、顔を特定されて、後々、面倒になると判断して、頭領が、急きょ、考えた。
頭領と戦闘員は、下を向いて手を顔に当てていた。
健は、自撮り棒の持ち手についているスイッチのボタンを押した。
健は、写されたスマホを見て、確認した。すると、写真には、頭領と戦闘員の顔は、下向きで、顔は、ちゃんと写っていなかった。
健は撮り直そうと頭領たちに提案した。
しかし、頭領は「今日は、急ぐので、もう帰るよ!天気が悪いので、雨が降りそうだしね!しかも、今晩は、工務店の寄り合いの参加があるのを忘れてて、ミスって、ビールも飲んでしまったよ!急いで帰らないといけないんだよ!申し訳ないね!ワシとしたことが、歳かな?ハハハ!」と言って、ごまかして、スマホの取り直しを遠まわしに断った。
こうして、健には、スマホの断りを詫びた。そして、敏郎には、今まで世話になったので、丁寧に感謝の言葉を言って、そそくさと、頭領と戦闘員は、いつでも小料理屋をあとにした。
うまく、スマホ撮影を逃れた頭領と戦闘員だった。2人は、娑婆に出た気分だった。